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看板が裏返る音。

老いた扉の音。

小さな可愛らしい鐘の音。

その音が、すべて素敵であった。


_


お客さんが来た。

私は口から声を出す。

「いらっしゃいませ」と。

そのお客さんが扉の近くの窓側に座り、メニューを見る。

私はおしぼりとお冷を出し、「ごゆっくりどうぞ」と声をかけそこから移動し、グラスや皿を丁寧に拭く。

「すいません、ここってなんて書いてあるんですか?」

「ここは、~~~」

とお客さんに教えていると_

だからここはこうだっつってんだろ!!!何回言えばわかるんだよ!!」

と先輩の怒鳴り声が聞こえてきた。

正直うるさい。

多分、里沙だろう。

空元里沙。少しふざけっぽい性格で、めんどくさがりな後輩。

この人と話していると、どっと疲れる気がする。

「好きな食べ物ある?あ、このニュースすごいよね!あの人結婚してたんだよ、知ってた?でさ?」

と、話がころころころころビー玉みたいに変わる。

なので少し苦手。

「~~ですよ」

と説明が終わった。

「すいません、私目が悪くて。」

「そうですか…」

と返しながらお客さんの目の方にちらっと目を向ける。

たしかに、メガネをかけている。

それに黒髪に白色のメッシュ。

体は細く、痩せている。

「じゃあ、このほっこりコーヒーと、オムライスを頂こうかな。」

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」

と、私は注文をうけキッチンに向かった。



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