……目覚めると私は、深い暗闇に倒れていた。果てなき暗闇に。
立ち上がって、当たりを見回す。
……ここはどこ?私は……。……そうだ、私の名前はリリアーナ・テイル・フィアディル。
と、目の前に映像が浮かび上がった。
そこに映っていたのは、前世の私だった。
……思い出した。そう、そうだ。私の前世の名前は、野山霞。
前世では、母は私を産んですぐ亡くなり、父が男手一つで私を育ててくれた。
けれど……、そのストレスだからか、父は私を虐待していた。
学校でも虐められていた。恐らく私が地味だったからだろう。
流れる映像には、私を殴る父と、父に泣き縋る私の姿があった。
なんて醜くてみっともない私。
情けない自分の姿に、涙があふれる。
続いて場面が変わり、場所は学校になった。
同級生に机にチョークで悪口を書かれたり、物を隠されたり、ゴミ箱を被せられたりする私。
何で愛を欲しがったりしたんだろう。何で愛されたがったの?
そんなのある訳ないのに。生きてる価値もない私が愛されるなんてある訳ないのに。
前世で私は絶望した。もう愛など望まないと決めた。
なのに、生まれ変わると両親や兄や周りの人が私を愛してくれた。
温かく、笑顔があふれる家族。それは、私が憧れていたものだった。
思わずその幸福に浸った。
だから、罰が下ったんだろう。両親が亡くなり、伯爵家に引き取られ、暴力をされるという罰が。
ごめんなさい。ごめんなさい。私なんかが愛されたがってごめんなさい。
涙が止め処なくあふれる。
『お前はそんなのじゃない』
突如、私の耳に彼の声が響いた。
これは……、彼が伯爵邸に来てくれ、私は虫けらだと話したときのことだ。
『え?』
『だから、お前は虫けらではないと言ってるんだ。俺には、お前はそうは見えない』
『え、私が……、本当に?』
『ああ。誰かに必要とされずに生まれてくる人間なんていない。そうだろ?』
彼の、温かみを孕んだ優しい声。
その声に、涙が止んだ。
ありがとう。ありがとう。そう言ってくれて。私を救ってくれて。
私は目元をゴシゴシとふき、にっこりと笑った。
すると、深い暗闇に一筋の光が差し込む。
まるで、私に手を差し伸べてくれているみたいに。
大丈夫。私なら大丈夫。
行こう、光の先へ。
そうして私は、その柔らかな光に、手を伸ばしたのだった。
コメント
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書いたの自分だけど、立ち直るの早いな笑