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さとるくん、という都市伝説を聞いたことがあるだろうか?
さとるくんは電話で呼び出すことができ、さとるくんに質問すればどんなことでも答えてくれる…という。
まず、公衆電話に10円玉を入れて自分の携帯電話にかける。
つながったら公衆電話の受話器から携帯電話に向けて「さとるくん、さとるくん、おいでください。」と唱える。
それから24時間以内にさとるくんから携帯電話に電話がかかってくるそうだ。
電話に出ると、さとるくんから今いる位置を知らせてくれる。そんな電話が何度か続き、さとるくんがだんだん自分に近づき最後には自分の後ろに来る。
このときにさとるくんはどんな質問にも答えてくれる。
……ただし、後ろを振り返ったりすると、さとるくんにどこかに連れ去られるという噂があり、今の所、異世界に連れて行かれるというのが、有名なものだ。
他にも既に答えがわかっている質問をしてしまうと、さとるくんが怒ってしまい、その場合殺されてしまう………
「…っていう都市伝説があるんだけど、
“聡(さとし)”、やってみない?」
幼馴染の”天上 みこ”は隣の席にいる僕にそんなことを言ってきた。
「…え、みこって僕のことそんなに嫌いだったの?」
「ちょ…違うから!別にあんたのこと嫌いなわけじゃ…って好きでもないんだから!!」
そう焦るみこをみてちょっとすっきりした。
「わ、分かってるってば…それで、そのさとるくんってのは…?」
みこを宥めてからもう一度そのことについて聞く。
昔からこういう話が好きだから今日もその類なのだろう。
「結構、昔に出た都市伝説なんだけど…実は最近、試した時に本当に出たって噂があるのよ。
これは”オカルト研究部”としてやっぱり調べるべきじゃない!」
胸を張ってみこはそう言うが、正直僕はあまり乗り気ではなかった。
僕は大の怖がりなのだ。もう、幽霊とかみた暁には多分死ぬ。
「そ、そうなんだ、じゃあ頑張ってね、みこ。」
そう言って僕は荷物を持って席を立とうとする。
しかし僕の体が動くことはなかった。
それもそのはず、みこが僕の肩を上から押さえつけていたからだ。
「何言ってるのよ、聡も行くに決まってるじゃん。」
「い、嫌だ嫌だ、もう怖いのは嫌だー!!」
「ちょ、暴れるな…このっ!」
暴れても容易にみこに押さえつけられてしまい、逃げることは叶わなかった。
僕とみこはオカルト研究部に所属しており、主に幽霊などの事について調べている。
これまでも何度も心霊スポットに連れられており、もう僕の精神状態はぼろぼろだ。
「うう…許してよ、みこ。」
泣きそうな顔で見つめると、みこはニコッと笑ってこちらを見る。
「…だめよ。」
あ、終わった。
「決行は明日の放課後、逃げたら承知しないからね?」
「…はい。」
ブー ブー
「あ、電話だ。」
そう言って、自身のカバンからガラケーを取り出す。
画面には 母 と書いてあり、電話をかけてきた相手がわかる。
「…聡、そろそろスマホに乗り換えなさいよ。
色々、不便よ?」
「う、うん…でも思い出の物だから…。」
そう言うと、みこははぁとため息をついて、その長い桃色の髪を靡かせて帰っていった。
うう…明日が憂鬱だ、休もうかな…
「よーし、行くわよ!」
「……おー。」
げっそりとした顔でみこに僕はついていく。
朝、やっぱり休もうと学校に電話をかけていた時のこと…
「…やっぱり、心霊なんて嫌だ!
今日は休もーー
ガシッ
「聡、その電話一回置こっか?」
「へ、みこ、何でここに…?」
おかげで学校を休むこともできず、放課後にこうしてみこについていく羽目になってしまった。
くっ…次はもっと上手くやらないと…
そうこう考えているうちに目的の場所に着く。
今は誰も使っていないだろう、町から少し離れた場所にある、廃墟近くの公衆電話だ。
「…やっぱり帰ろう!うん!」
「ダメに決まってるでしょ。」
最後の抵抗をしたが、それも虚しく散ってしまった。
そもそもなんで町中じゃなくて、こんな離れたところの公衆電話なんだよ…
「じゃあ、聡、じゃんけんよ。」
“じゃんけん”、これは僕らの中で定められたルールのようなものだ。
負けた方が実際に降霊術等を試すといったものである。ちなみに今まで、僕は一回もみこに勝ったことがない。
それでも、負けられない戦いがここにあるんだ…!
「準備はいい?聡。」
「よしやろう。ーー
「「じゃんけん…ぽい!!」」
「ぐう…えっと…まずは公衆電話で自分の携帯に…」
「何かあったらすぐに知らせてよー!」
結論、負けました。
何か言っているみこを横目に、僕はポケットからガラケーを取り出して、公衆電話に10円を入れる。
そして自身の番号をうち、公衆電話をかけた。
案の定、自分の携帯にかかってきたため、ボタンを押して応答…と。
ここまでは順調かな…。
「よし、えっと…
『さとるくん、さとるくん、おいでください。』」
シーン
これであとは24時間以内にさとるくんから電話がかかってくるから…よし、携帯、みこに渡そう。
「みこー、終わったよ、早く帰ろー…。」
力なくそう言って振り返るが、みこはどこにも居ない。
辺りを見回すが、既に暗くなっており、見つけ出すのは容易ではなかった。
…いや、おかしい。
さっきまではあんなに明るかったのに…?
それにみこはふざけて僕を置いていくような子ではない。
「みこ…?みこっ!!どこにいるの、ねえってば!!!」
何度もそう叫ぶが、返答はなかった。
仕方ないと思い、公衆電話を開けようとする……が…
「あ、あれ…開かない?なんで…」
いくら僕が非力といっても流石に公衆電話の扉は開けられる。なのに全く開かないのだ。
何度も体を打ちつけて扉を開けようとするが、それも無駄に終わる。
「…く、このっーー
そう言ってふと、暗闇の奥を見た時、僕は思わず息を止めてしまった。
暗闇の奥から、”何か”が近づいてきている。
人間…?それにしては大きすぎる。体を黒いモヤに包んでおり、その姿があまり見えない。
だが、着実にこちらに歩み寄っているのだ。
「ひっ……だ、誰か助けて…み、みこ!!
助けて、誰か!!」
化け物が近づく間、僕は何度も何度も叫んだ。
だが、その声が届くことはなく、ただ化け物との距離が縮まる一方だ。
そして遂に…
公衆電話の扉にやつの”大きな手”がつく。
そいつは人間ではない。そいつは人間というには長すぎる手足、全身が黒い肌、目が無く大きな口を笑うように見せつけている。
その化け物が顔を近づけて、扉越しに何かを僕に囁いた。
『……”3”……。』
「は…は…は………。」
チョットサトシ‼︎ドウカシタノ?
気づけば、辺りは元の光景に戻っており、みこが扉を開けて僕を心配そうに見つめていた。
「は……は………。」
「…聡?大丈夫ーーってちょ///!!」
僕は無我夢中にみこの手をとってその場所を離れようとする。
一刻も早く、僕はその場所から遠ざかりたかった。
その後、どうやって帰ったかはあまり覚えていない。
ただ…あの化け物が言っていた数字だけが頭の中で反響していた。
『……”3”………。』