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でも、1度くらい、彼を裏切ってもいいじゃないか。

だって紅、君は俺を裏切って、独りで死んでしまったんだから。

仕返しだ。


「凛さん、ありがとう。嬉しいよ」

凛さんは目を見開き、息を大きく吸い込み、どんどんと笑顔になる。

「え、あ!それじゃあ……、えっと、付き合ってください」

「うん、いいよ。付き合おう」

ぶわぁっと凛さんの顔中の筋肉が上がるのがわかる。若干涙目になっていた。

俺は彼女の手を掴み無言で歩き出す。

「あ、西宮さん?」

手を引いて飲み屋街を歩く。もしかしたら会社の人に会うかもしれないと思ったが、どうでもよかった。後ろからもたつく足取りで凛さんがついてくる。何度が俺の名前を呼んでいたが無視をした。

彼女の細い腕を掴んで歩く。


歩く。歩く。歩く。歩く。

彼の手を引いてただひたすら道を歩いた。

歩き疲れた紅は何度も

『疲れた』

と呟いていた。

堂々としていれば、例え服に泥が着いて酷く汚れていても、他人は案外気にしないものだ。なおかつ田舎で人がほとんど居ない。日中に歩いているのはおじさんおばあさんくらいだ。

時々話しかけてくるけど、それは怪しんでるからじゃない。かまって欲しいからだ。

のらりくらりと適当に理由をつけて交わせば、案外俺たちが犯罪者ということはバレない。

しかももう夜だ。

紅と俺は、地下横断歩道の入口によりかかって座る。

大丈夫、さすがにこんな夜になると人っ子一人通らない。それに、遠くを見る限りこの先数十メートルは店らしきものは見当たらない。

明かりもない長い道路を、こんな真夜中に歩いてるのなんて、それ事俺らみたいな複雑な事情があるやつだろう。

都合よく地下横断歩道の入口の脇は草が生えていて、虫が沢山居そうだけれど悪くない寝床になりそうだ。

隣り合って、座る。

『お腹減ったね』

彼がか細く言う。

俺は汚れたリュックサックの中からペットボトルの水を取り出す。途中によった公園の水を汲んできたものだ。

紅に差し出すと彼は

『ありがとう』

と笑った。

1口飲み、蓋を閉めずに俺に返す。俺もそのペットボトルの水を飲んで、蓋を閉めてリュックサックにしまった。

『今日はここで寝よう』

『そうだね。懐中電灯消すよ? 』

『わかった』

紅が懐中電灯のボタンを押すと暗闇に包まれる。目が慣れてくると月明かりで周囲な見渡せた。見上げると夜空は星で溢れ、その真ん中に浮かぶ巨大な月が俺らを見守っている。

今日は菓子パンだけだったけれど、そろそろどうにかしてまともな食料を手に入れなければ。

1度カエルを食べようかという話になったが、毒のある危険性があるため迂闊には手を出せない。またどこかで万引きをするか、気が進まないけれど適当な家に泥棒しに入るしかないか。

しかしそれほど不安は大きくなかった。

食べようが食べまいが、俺たちは結局死に場所を探す旅をしていたわけで。

餓死したらその時はその時だ。

ふぅと紅がため息をついて俺の肩に頭をのせる。

『どうしたの?』

『シャワー浴びたい』

乾いた声で紅は言う。ちゃんと体を洗えたのなんて、2人で衝動的に川にダイブして水遊びした時くらいだ。いや、洗うとは言わないか。ただの水遊びだ。

お互い髪もベトベトだひ、身体中汗で湿って気持ち悪い。

『どこかの家で勝手にシャワー浴びない?』

『どうかな。安全とは言えないよ』

『そうだけど、もう耐えれないよ。冷たい水に飛び込みたい』

月明かりで微かに見える紅は、気だるそうに眉根を寄せて目をつぶる。

旅を始めてから、彼は実に色んな表情を見せるようになった。笑ったり、怒ったり、前よりよっぽど表情豊かだ。

突然彼は立ち上がり、草をかき分け、少し離れた場所で服を脱ぎ始めた。

履いてたサンダルまで脱いで、全部まとめていき良いよく地面に叩きつける。

真っ裸になって戻ってきた。

『じゃーん』

『風邪ひくよ』

平静を装って彼にそう言うと、紅はなんとなくつまらなそうな顔をした。

『桃くんも脱ごうよ。涼しいし、気持ちいいよ』

紅は座っている俺の服を強引に引っ張った。痛い。

抵抗して手を払い除け、しばし見つめ合い、しょうがなく自分も服を脱ぐ。

ああ、たしかに涼しいや。そう思ってしまった。誰もいないし楽しい。開放感半端ない。普通じゃ体験できないことをしてる。

紅はまた座り込み、俺も隣に座る。

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コメント

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ユーザー

自分、静岡にいるんですけど、雨やばくて警戒情報5が近くのところに発令されたんですよね? 今のところ4なんですけど、雷もやばくて、犬が寝れなくて可哀想なんですよ…… 雨よ!やめ! ずっと警戒のとぅるとぅててーんみたいな警戒音あるじゃないですか、ずっと耳の近くでなってる気がしてめっちゃ手が震えてるんですよ。助けてくれーー!!

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