コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「幸いな事に、娘は、体が丈夫だ。きっと、子宝にも恵まれる。何しろ、跡を継ぐ者がなければ、家は、潰れてしまう。もしも、その様な事があり、貴殿の有能な血が引き継がれなくなるとなれば、残念至極。つまりだね、嫁選びとは、非常に重要な事なのだよ」
残念至極と、誉められましてもと、孔明が恐縮している側から、黄承彦は、何故か、声を潜めた。
「でだ、これは、ここだけの話だよ。夜になれば、顔など伺えまい。いや、まあ、あの時の顔が、良いという者もいるがね、盛り上がってしまえば、そんなもの。結局の、所は、アソコの相性だろう?しかも、うちの娘は、赤毛だよ。分かるかい?孔明殿。髪が赤毛ということは……、アソコ、の毛も、赤いということ……」
「はっ?!」
くくくく、っと、実に下衆な笑い声を挙げると、黄承彦は、どうだろう?と、孔明へ返事を迫ったのだった。
──アソコ、とは。全く。
そんな事に釣られて、ホイホイ、話を受けられるかと、孔明は、怒り半分、飽きれ半分で、話を留保していた。
そして、気が付けば、一ヶ月《ひとつき》が、経過していたのだ。
「どうせ、父が、娘は、醜女だが、と申したのでしょう」
「いや、醜女、とまでは……」
うっかり口を滑らせた孔明に、女は、はあぁと、ため息をついた。
いつも、こうなんです──。
と、顔を歪めて、愚痴をこぼす女の姿は、実に妖艶だった。
容姿と、実家の財力に釣られる男は、ろくなもんじゃないと、黄承彦は考え、娘の容姿をあえて、醜女と言っているのだとか。
「父の言いたいことも、分かります。ですが、それを、あちこちで、吹聴して……」
これでは、表も歩けないと、女は、更に、息をつく。
はあぁと、流れる吐息に、孔明の胸は、妙に高鳴った。