ちゅんちゅん__

「ん”ぁ…」

襖の隙間から太陽の光が漏れる。

がらがら___

「あれ、帰ってきてないんや…」

昨日と変わらない景色を見つめる。

荒れ果てた部屋をみて、

掃除もしなきゃやなー、とか思う。

今日じゃなくてもいっか。

「ん”〜…！！」

ぐ〜っと体を伸ばす。

時間を確認するため部屋を出る。

目の前ががらっと綺麗になる。

さっきの部屋は俺専用の部屋！！

家のゴミは俺の部屋に投げるし、

俺が悪いことしたらここでお仕置してくんねん。

俺が悪い子やから。

ストレス発散されてるってことも、

分かってるけど。

現実なんて見たくない。

でも俺部屋以外は綺麗にしてあんねん。

色んな人が来るから！

リビングに向かう。

デジタル時計には8時と映し出されている。

そして机にちょこんと手紙が置いてあった。

昨日からあったんかな、

昨日ここ来てないし。

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染夢へ。

１ヶ月に10万置いていきます。

私たちが帰ってくることはほぼありません。

おうちはもう貴方のものです。

10万でやりくりしてください。

光熱費、水道代諸々全て。

今月は残りわずかなので来月の分と一緒に置いておきます。

１ヶ月に１回お金を置きに来ます。

そしてルールがあります。

1つ、部屋を綺麗な状態で保つこと。

2つ、光熱費等は自分で払うこと。

3つ、引越しはしないこと。

4つ、家庭のこと、このことは誰にも話さないこと。

5つ、学校には近寄らないこと。

6つ、私たちの言うことは”絶対”。

7つ、外出時は、学校があっている時間帯、

夕方。警察にはお世話にならないよう。

8つ、学校の先生、警察が来た時はドアを開けず、隠れてその場をやりこしなさい。

以上です。

染夢は”いい子”だから大丈夫よね。

お母さん、お父さんより。

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「？！！！！！」

やった、！！！

殴られたりしなくて済む…！！

でもせんせーには逢えへんのか…。

でもまた会えるしな…！！

そして手紙の下に1万五千円が置いてあった。

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冷蔵庫は機能しとる、レンジも、コンロも。

炊飯器、

いける！！

キッチンいけるな、

洗濯機は使い方がわからん、…

あ、干すやつ外にあるわ！

槽とかあるか、？

お、！！

あった！！

手洗いで問題ないわ！！

トイレは、…大丈夫。

お風呂は…

いける…！！水周りは結構大丈夫ぽいな。

冷蔵庫なんも入ってなかったし、

買いに行こうかな、

いやまずいるものリストを作って、

いるもんだけ買お！！

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いるものリスト！！

飲み物　おっきいの3本

お米

ハヤシライスの材料

調味料

洋服。

雑巾、バケツ。

歯磨き粉

歯ブラシ

エコバッグ！！

足場

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しゃっ！！

いくか、できるだけ安いやつ買お。

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心地よい風がふく。

少し冷たい風で秋の訪れを感じさせる。

すたすた__

すたすた__

早く歩いてみたり、

スキップしてみたり。

今ならなんでも出来そうな気がした。

心が軽いと体も弾む。

ずっと回り続けてるこの地球も、

ずっと進み続ける時間も、

全部、本物で、

この時間は俺だけのもの。

爽やかな風も、

地に足をつけている感覚も、

鳥のさえずりも

俺が生きてる証拠。

ぜーんぶぜーんぶ。

止まらない。

止まれない。

何故か清々しいこの気持ち。

やっと、

普通に

近づけた、そんな気がした。