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「私、実はあんな事しちゃったけど結梨ちゃんとお友達になりたくて」
私を空き教室に誘い入れた清華はこんな事を言い始めた。
私は田中結梨。学級魔女裁判にかけられた被告人の1人だ。
何が友達だ。私をいじめておいて?私の友達を自殺させて?
心底呆れる。
もう、コイツが嫌で嫌でたまらなかった。
憎いの次元を超えた、どす黒い感情が巣食っていた。
ただ、私がこの誘いを断れば自分がいじめられることは確定だろう。
即座に思いついた答えは、「仲良くなっておいて蹴落とす」これだった。
目には目を歯には歯を、ってことだ。
たとえ私は身を捨ててでも友人の仇をとらなければ。
その思いが廻って、私は清華に「うん」と伝えた。
「ホント〜?嬉しい!仲良くしようね!」
見ているだけで虫唾の走る笑顔を、これから何度も見るだろう。
絶対、絶対敵を取って見せる。待ってて、麻衣。
私はそう決心して、空き教室を出た。
それから、授業中はずっと復讐計画を考えていた。
ニコニコしながら話を聞いて、適当に相槌を打っている。
その相手に、自分はこれから復讐する。
…なんだか非現実的だ。
「結梨ちゃん、清華が次の裁判の話するってさ」と瑠衣が話しかける。
「次はさ、あの子ターゲットにしよ!最近ちょっと目立ち過ぎだし、ちょっと一回裁いたほうが良さそうじゃん?」
その言葉をそっくりそのままお返ししたい。
それに、ターゲットにする理由は子どものように単純だ。
それにその子は軽くメイクをして、制服に校則違反にならない程度のアレンジを加えているだけだった。
きっと原因は、クラスメイトの誰かが「清華ちゃんより優しい」と言っていたからだろう。
「ね、いいよね?結梨ちゃん!」
「え…?あ、うん…」
私は曖昧に頷いてしまった。
この計画を実行する以上、誰かが犠牲になってしまう。
私こそ…私こそ…正義を象った只の偽善者じゃないか?
そんな思いが、胸をよぎった。
ねぇ、何が正解なんだろう。
私はどう動けば良いんだろう。
大人に相談しろなんて言われたって、ここにまともな大人は居ない。
答えのない問いを宙に投げては、わからないという答えが返ってくる。
教室に呼ばれた私が見せられたのは、見るに耐えない被告人の姿だった。
「こ、これどうしたの?」
引きつりながら私は聞く。
「え〜?中々自分でやったって言わないからちょーっと厳しくお仕置きしただけ!」
目の前で意識を失い倒れている女子生徒。その横でも、傷ついて泣いている生徒が居た。
「だって、私が悪いって言ったしクラスメイトが悪いって言ったのに、従わないほうが悪いもんね?」
あまりに自己中心的すぎる答えに、言葉も見当たらない。
それに、自分も一歩間違えたらこうなっていたのかと考えると、鳥肌が立つ。
何より、麻衣がこんないじめを毎日受けていたんだと考えたら、そりゃあ死にたくなるのも頷ける。
私は、「ごめん清華ちゃん、私用事思い出したから」と言ってその場を離れてしまった。
ああ、今私はあの子達を見殺しにした。アイツらの一員になってしまったのだ。
私は、どうすることが正解なんだろう。
意味もなく走って3階の一番奥の廊下へ行く。
夕焼けが綺麗だ。
とても、とても。
そうして私は、下校時間に鳴るまでそこで時間を潰すことにしたのだった。