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テラーノベル(Teller Novel)
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院瀬見の挑発に乗るとこれまで以上の塩対応をされる恐れがある。


――ということで話を戻すことにした。そうしないと、数日後に迫っているサプライズ進行が上手くいかない可能性があるからだ。


「コ、コホン……。話を最初に戻すけど、俺が推し女の誰かを好きになるとまずいことでも?」

「そういうわけじゃないです。けど、推し女の中には注意すべき子がいるので気を付けた方がいいですよって言おうと思いました。でも興味無いんでしたよね?」


注意すべき女子がいるとかただ事じゃないが、推し女はそもそも院瀬見を推している女子のはずなのに、中にはそうじゃないのも含まれているって意味に聞こえるのは何故なんだ。


「俺はまともに推し女たちと話をしてないからな。九賀はこっちのメンバーの北門《きたかど》としょっちゅう話はしてたらしいが……」


北門というキーワードを言ったのに、院瀬見は首を傾げて『誰?』といった顔を見せている。


「九賀さんは誰とでも隔てなく話をする子なので、そう見えるだけですね」

「そ、そうか……」

「他に何か聞きたいこと、あります?」


純が院瀬見のことを想っているってことをどう言えば伝わるんだ。


いや、待てよ?


別の人物の話で誤魔化せば通じるんじゃ?


「あー……その、ボクは院瀬見さんに言いたいことがあってそれを思い出したんだ。ちなみにこれは生徒会長のことじゃなくて、たまたま教室で誰かが言ってたことなんですー」

「キモいので、いつも通りにどうぞ」

「……分かった」


あえて純に似せた口調で話しかけたのに駄目か。


そいつはどうやら院瀬見のことが気になって気になって仕方が無いらしくて、俺に相談してきたんだが……」


純のことを覚えてないなら不特定の奴ってことにして聞くしかない。


「……どういうところが気になってるんですか?」


よし、食いついてきたな。ソファに深々と腰掛けていたのにまた体を前に傾けてきたってことは、この話に関心を示している証拠だ。


「笑顔が可愛いとか見惚れる美しさとか、話しやすい……とからしいぞ。夏休み以降にもし同じクラスになったら、そいつは常にそばにいたいって言ってたな」


そこまでは言って無かったけど。


「常にそばに……ですか? それって犯罪に近い行動をするってことですよね?」


そうかと思えば可愛いとかの部分はスルーか。言われ慣れしてるからいちいち反応しないってことなんだろうな。


「ど、どうだろうな……そこまではしないと思うが、それとそいつは俺と同じ生徒会で活動をしたいらしい。どうする? 同じ生徒会メンバーだったら」


同じ生徒会メンバーという俺の言葉を聞いて、院瀬見は眉をひそめながら深刻そうに考え込み始めた。


いくら何でも純がストーカーまがいの行動をするとは考えられないが、院瀬見への想いが強すぎて俺に対する態度や行動が変わりそうな予感さえある。


「…………少し、時間をください」

「ああ、俺のことは気にせずに策を練ってくれ」


院瀬見は腕組みをしつつ、普段は俺に見せることのない足を組む仕草を俺に見せつけている。しかも無意識なのか足を広げながらだ。


ふと院瀬見の顔を見ると、考えているように見えないくらいのリラックスした穏やかな表情をしている。こっちは視界に飛び込んでくるスカートの中を見るわけにはいかないと必死なのにだ。


そうなると回避手段として、脚の線に集中するしかなくなる。


しかし黙って見ていると確かに美脚だ。隠す気も無いんだろうけど、俺も一応意識はするんだから少しは気にして欲しいところだな。院瀬見になるべく気づかれないように美脚を見ていると、院瀬見はすくっと立ち上がり、俺に向かって人差し指で指してきた。


もしや邪《よこしま》な視線がバレたか?


「翔輝さん!」

「お、おぉ? な、何だ?」

「決めました!! 翔輝さんに頼むことにします!」

「……何を?」


どうやら俺の視線はバレていないようだ。


「わたしを守って欲しいです! そういうおかしな話をしてきた翔輝さんには、わたしを守ってもらう義務が生じます!」

「守る? 院瀬見をか? 俺が……?」


考え込んでいたかと思えば、まさかの護衛とか。それもいわば俺の側近でもある純から守るなんて、随分と難易度が高いことを言ってきたな。


「推し女がいるから問題無いんじゃ?」


純が相手なら九賀もいるし、院瀬見を守ろうとしてる二見がいる。そういう意味でも、俺が院瀬見を守るなんて必要無いんじゃないのか。


「いいえ、サプライズが終わって共学化に移行したら、わたしの推し女たちはいつも一緒にいられなくなるんです」

「え? そうなのか?」


いつも一緒にいるといえば九賀か二見くらいだな。あと一人はそうでもないが。


「これはまだシークレットなことなので翔輝さんにだけ言いますけど、クラス分けがされたら、間違いなく推し女の彼女たちとは別々にされます。推し女は強制的な活動じゃないからってのも理由だからです」


推し女はあくまで自主的な活動ってわけか。どうりで七石先輩が時々いなくなっていたわけだ。


あの新葉《わかば》に付き合いきれないってのもあっただろうけど。


「なるほど……」

「ですので、翔輝さん。わたしを狙う誰かから、わたしを守ってもらいます!」

「い、いつから?」

「今からに決まってるじゃないですか! だって、教室でそういう話を直接聞いたんですよね?」

「う……うん」


これはさすがに頷くしかない。さり気なく純の恋愛を手伝おうとしただけなのに、何故こうなったんだ。


「頷《うなず》きましたね?」

「い、今のは――」

「――もう遅いですよ? わたしに危険が及びそうな話を伝えてきたんですから、わたしのことは翔輝さんが守ってくださいね! 生徒会長の実力を見せてもらうことにします」


本当になんてこった。


院瀬見より力の弱い俺が守るとか、何だかいいように使われそうだな。

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