TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
シェアするシェアする
報告する

花が飾られなくなった日

それは中学の卒業式

やっと出ていける、

ここを出たら何をしようか

みたいなことを言っている声が聞こえた

私は高校に行く、偏差値も普通で、校則も普通

…って、行けたら良かったのに

母から学費の無駄と言われてしまった

そのままバイト漬け

金は全部親に行く

初任給とやらは基本親に渡し、親孝行をするのが当たり前らしい

親孝行なんて、やり方が分からなかったので、封筒に入れて母の机に置いた

次の日は上機嫌だった

初任給がまぁまぁな値段だったからだろうか

上機嫌な母を見てるとイライラした、

その金は私が必死に稼いだものなのに

でも反抗はしなかった

なんども家出の言葉が脳裏に過ぎった、

でも金が溜まるはずもないので、成人したら適当に定食に着いたなんて嘘でも着いて、酒の飲みすぎで死のうかとも思った

そんな生活にも、多少の光はあった

中学の頃の転校生、

お嬢様家庭で育った、礼儀の正しい子

どこかふわふわした雰囲気で、いつも他人に向けて全てを見透かしたような目をしていた

彼女は優しく、私にも話しかけてくれた

「あなた、お名前は?」

ニコニコしているのに、掴めない、どこか不思議で、今にも消えてしまいそうな儚さがあった

「鬼子」

「きこちゃん、感じはどんな字を書くの?」

「鬼に、子供の子で鬼子」

「へぇ、いいお名前だね」

「あなたは?」

「春花、春に花って書いてはるかだよ、よろしくね」

変な子だった、髪も目も綺麗な桃色で、ショートカット、背丈は私より低かった

後々聞いた話、春花は四季家と呼ばれるお嬢様家庭出身だそう、

四季家では、生まれた子に春夏秋冬の1文字を使った名前をつけるそうな

春花は春、兄や姉もいるそう、生まれた順で決まるわけではなく、顔つきや成長後の容姿で決めていたそう

春花は末っ子で、残っているのが春だからと割と雑に付けられたらしい

ただ、当人は気に入っているようだった

そんな春花は、高校に上がっても変わらず私と仲良くしてくれた

どちらも両親が厳しかったりしたことからも、親に対しての愚痴をよく言い合っていた

春花は、私のことをいちばん大切に思っているような、そんな優しさがあった

……思い違いかもしれないけれど

春花は、たまに私の方をじっと見つめてくることがあった

理由を聞いても、教えてはくれなかった

今思うと、ここが人生でのピークだったように感じる、

春花がいるなら生きてもいい、

春花と一緒に色々やりたい、

春花に幸せになって欲しい、





ある日急に、春花が私を呼んでこう言った

「これからも、友達でいてくれる?」

泣きそうな目でこちらを見つめて言った

戸惑った、心の中で答えは出ているのに、口に出せない

口に出そうとすればするほど、嗚咽が出てくる

春花の目が滲んでいる、

泣かないで欲しい、

笑っていて欲しい、

お願いだからそんな顔をしないで欲しい、










「当たり前だよ、大丈夫」

そう言った瞬間、春花が救われたような顔をした

と同時に、春花の顔が、疑っているような顔になった

「それは、本心?」

…うんって、言えなかった

1番の後悔のような、そうでないような

春花の笑顔が見たかった

春花はきっと、なにか思い詰めてた

死にたくなるような、そんな辛いことがあったんだと思う

顔がぐしゃぐしゃになっていて、それを必死に隠そうと俯いていた

その日は丸一日、静かな泣き声と、嗚咽が春花から出てきたのを、よく覚えている

この作品はいかがでしたか?

25

コメント

1

ユーザー

四季家、4人の子供に春夏秋冬から1文字を使った名前をつける風習のある家庭 男尊女卑が激しく、男は跡継ぎ、女は要らない、そんな古典的な家庭である 四季家では皆刀が使えるようになることが必須であり、手に豆ができるのが当たり前、 四季家の子供はみな「神に愛されている」と思われており、四季家では代々、産まれたばかりの赤子の血を神に捧げていたそう 8代目で途切れており、そのうち四季の名を持つ者はいなくなった

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
;