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「ルカスさ~ん!」


俺とミディヌはリザードを撃破、廃村に蔓延る魔物を一掃した。あらかた片付いた丁度いいタイミングで、ゆったりとしたウルシュラの声が響く。


「ルカスはあんなの《ウルシュラ》が好みか?」

「え? いきなり何を?」

「い~や、別に」


好意的な感情のことを問われると答えに困る。照れや恥ずかしさはともかく、そういうのを考えることが無い日々だった。


それでも兄リュクルゴスをどうにかすれば。その時には少しは気持ちに余裕が出来るか?


「ふわ~!! なんっにも残ってないし焼け焦げた臭いしか残ってないんですね! ルカスさん、魔物はどこですか?」

「……最近まで残ってたけどね」


なるべく跡形も残さないようにしたとはいえ、のんきだな。ウルシュラが辺りをうろうろする中、ナビナが俺に近づいてくる。ナビナはここで何が起きたか知っている感じの顔だ。


「ここのありさまは冴眼の力で?」

「いや、この程度のことだし使って無いよ」


冴眼を使うまでも無いと思って魔法だけを使った。


だが俺の答えにナビナの表情が曇り、


「駄目。むしろ使うべき。魔術師の魔力は敵に対してしばらく使わないで!!」


何故か怒られてしまった。


「ええ? 魔力を一切使ったら駄目ってこと?」

「そうじゃない」


使わないと冴眼の力が弱くなるのだろうか?


しかしナビナの方が知っていそうな口ぶりだし、そうする方がいいのかも。


「覚醒を果たしたのに、また眠らせるのは駄目!」


そう言うとナビナが俺の目を覗き込みながら詰め寄ってくる。身長差があるのにこの迫力とは参るな。


ナビナの迫力に押されそうなところで、


「なぁ、ルカス。転移門ってのはあれか?」


ミディヌが何かを見つけ、声をかけてきた。彼女が指した場所には魔法陣らしき印が見えている。


あれは魔物の呪印か?


が、今は気にすることじゃないな。


「いや、違うよ。転移門は見えない所にあるんだ」

「ちっ、何だそうかい。じゃあ早く行こうぜ!」


男勝りの女性というべきか、行動力があるのは頼もしいな。


行動力といえば、


「あれっ? そういえばウルシュラは?」

「あん? あの姉ちゃんならどっか行ったぜ。危険はねえだろうし、放っておいたけどな」


自分の魔道具があるから動けるにしても自由すぎる。


「ええぇ?」


ナビナを見ても首を振るだけだし、何をしでかすか予想出来ないな。


「ルカス。ウルシュラなら、すでにそこにいて調べてる。戦闘以外のことならウルシュラは鋭いから」

「調べてる? どこで?」

「……」


もしかしてこういう細かいことも冴眼で?


すでにそこにいる……ああ、そうか。


「ミディヌ! 転移門はこっちだ。ついて来てくれ」


旧ラザンジ村は中央に池があるだけで、かつての住居は自然に出来た洞穴を利用していた。人がいなくなり、魔物が棲み処としたのもそのせいだろう。


そんな岩屋にも使わない箇所があった。少なくとも村人が持つ道具では砕けそうに無い岩だが。


「なんだぁ? ただの岩にしか見えねえな。おい、ルカス! この岩が一体……な、何!?」


村人では開くことが無かった入口。それは魔力を使わないと開かない門のことだ。


「ここから入れば、最深部に転移門がある。行こうか」

「お、おぅ。そ、そうか、ルカスは魔術師なんだよな。でも、そうするとあの姉ちゃんは何で入れたんだ?」


それは俺も不明なところだな。いくら園芸師スキルが優れていても、転移門へはそう簡単に入ることが出来ない。


それも魔力を持たない彼女が。


「あっ! ルカスさ~ん、ナビナ~! ミディヌも~! 待ってましたよ~!!」


最深部の転移門に近づくと、待ちくたびれて座り込むウルシュラの姿があった。彼女はぶんぶんと手を振りながら嬉しそうにしている。


「ウルシュラ! ここへはどうやって?」

「それがですね、魔道具を岩に当てたら開いちゃいまして! ここがそうなんだろうと思っていたので、ルカスさんたちが来るのを待ってました!」


ウルシュラが持つ魔道具か。俺の魔力を注いだ鉱石だったな。運がいいと言うべきなんだろうか。


「……それで、調べて何か分かった?」

「ずっと使われなくなって長いわりには、地面に生えている草が枯れてないなぁって感じましたね!」

「それだけ?」

「私、魔力が無いんですよ。魔力を持つ者じゃないと何も反応しないみたいです」


転移門以外の部分は土の地面がむき出しだ。そこから生える雑草はおそらく、魔力を養分として枯れることが無い。


「ウルシュラ。そこに生えている雑草を抜いて、保管しといてくれないかな?」

「あ、やっぱりよかったんですね!」


俺に言われる前にすでに何本か抜いていたみたいだ。怖いもの知らずというべきか。


「――で、ルカス。これ、動くのか?」


動くという表現は適切じゃなく、機械的なものとは異なる。しかし魔力を使ってという意味ならあながち間違いでも無い。ここに来る前に見えた魔物の呪印。呪印は羊皮紙が必要だが、転移門は円形の舞台に乗って自分の魔力を使うだけで移れる。


その時の使用条件は宮廷魔術師であることだった。使われなくなった今、どういう条件になっているのか。


「ミディヌ、ウルシュラ、ナビナ。円形の舞台の上に」

「ふ~ん? それだけでいいわけか」

「私はいつでも大丈夫です!」


北の転移門がどうなっているかは不明だ。だが行くしかない。


試しに円形舞台に手を触れると、円形全体から魔力反応が出ている。これなら宮廷魔術師の”資格”が無くてもたぶん行けそうだ。


「ルカス。ここは仕方が無いからあなた自身の魔力を使っていい。だけど……」

「うん?」

「着いたら、その目を輝かせて」

「んん? え、どういう――」


確定的じゃないにしろ、北の転移門で何か起きそうだな。

賢者の兄にありふれた魔術師と呼ばれ宮廷を追放されたけど、禁忌の冴眼を手に入れたので最強になります

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