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新しいキャラ来た~!なんか、鶴吉さん意外とカッコいい??(*˘︶˘*).。*♡ 次も楽しみにしてます!!
ヒメちゃん強!また新キャラも出てきて面白くなってきた~!!
千春は、走っていた。 とにかく急いで他のメンバーを探さなくて は。そうしないと、椎名が長くもつかわからない。 椎名の実力は身をもって知っているが、 千春にも、片腕だけで相手できるようなレベルの相手ではないことは、 最初の容赦ない電撃で、わかった。 腕を振り、足をとにかく前へ前へと運ぶ。 急げ。椎名がやられてしまう前に。 そう思いながら息を切らす千春だったが、 走っている目の前に、ヒメがいた。
「 やっほー! ちーちゃん! 」
思わず走っている足を止め、
ヒメに相対する。
「 ヒメ…! なんでここに……!? 悪いけど、 今お前に、 構ってる暇はない! どけ! 」
「 ちーちゃん、こわーい… でも、 行かせる訳にはいかないんだ、 そういう命令なの 」
「 命令…? 」
「 うん、この先に行こうとする特葬課がいたら、 止めろ、 って… でもほんとはね、 この間ちーちゃんと会った時に、ちーちゃんのこと殺しても良かったんだ 」
「 なっ…… 」
「 でも、 金坂さんが、 彼を仲間に引き入れるなら、 殺さなくてもいいって言ってくれて… だけど、 ちーちゃんは断った。 だから、 無理やり連れていこうとしたけど… もう、ちーちゃんのこと、 殺さないとなんだ」
「 ヒメ! なんでそんな命令を聞くんだ? お前は死呪人どうしの殺し合いなんて望んでないはずだ! いったいそいつは誰だ! 」
「 言っても、意味ないでしょ? それにわたし、 金坂さんが助けてくれたから、 今 生きてるのよ? わたしはその恩返しがしたいの! 命令を出した人に従ってるわけじゃない! 」
「裏があるに決まってる! 本当に助けるつもりなら、 こんなことさせるわけないだろ! 」
「それでもかまわない! 目的がどうであれ、私は私の意思で動いてる! わたしが、 そうしたいと思ったの! だから、ちーちゃん、 おとなしく、 わたしについてきてよ! 」
ヒメが声を荒げる。 一瞬千春はたじろいだが、すぐに答えた。
「悪いが、 断る! もう俺は、 お前をヒメとは思わない! 俺は、 特葬課の浦島千春だ! 音鳴姫百合! お前を確保する! 」
“抹殺”ではなく、“確保”と言うところに、 千春の迷いは顕著に現れていた。
「 …そっか、残念。 じゃあ、もう容赦しないね、ちーちゃん 」
ぱんっ。と小さな音を鳴らしながら、 ヒメは合掌する。そして、ゆっくりと腕を 外側へ広げると、ヒメの足元から、 巨大な壁のような水が発生し、みるみる何 も無い地面からせりあがってくる。 ヒメは、その水の頂点に立って、 今度は勢いよく手を叩いて合掌する。
「 “竜宮の大波”! 」
すると、巨大な壁のような水の中から、 まるで荒れ狂う龍のように、 水が次々と流れ出してくる。 圧倒的な質量に、逃げる暇さえなく、 千春は飲み込まれた。だが、千春は、 流されながら近くの建物を掴み、 持っていた銛で水を払う。だが、 払うとすぐに次の水でその空間は満たされ、結局身動きが取れない。 千春は水に今にも流されそうになりながら も、なんとかその範囲外に出て、 建物をよじ登り、屋根の上からヒメに近づ くため走り寄る。 ヒメに手が届きそうになったその時、 ヒメは水の壁から飛び降りて、 空中で指を絡めて合掌し、グッと握る。 その手をそのまま木を抱くように前に出 し、手を勢いよく離した。 その手が肩から一直線になるように、 腕を伸ばす。 すると、 水の壁はたちまち姿形を変え、 千春を無力化せんと飲み込んだ。
「“竜宮の竜巻”!」
巨大な竜巻のように、 水の壁は流れが変わり、上に巻き上げるように千春を襲う。 千春は、今度こそ為す術なく、流されるだ けだった。 このままではもたない、そう思った。 息もそうだが、体も、全身が全方向に同時 に引きちぎられるように感じるほどの水の 引力に、 だんだん体で抵抗するための力が吸い取ら れていく。 渦が消え去った時、千春は、 空中からもろに地面に叩きつけられるよう に、勢いよく落ちた。
「 がっ……! あぁ! ぐっ………、 はぁッ… はぁッ! 」
落ちた衝撃で、息ができない。 動けない。体力も、水の中で完全に奪われ てしまっていた。 息を整えることすら困難な千春に、 ヒメは近づいて言う。
「 ほら、 やっぱりこーなるんじゃん!ヒメを捕まえるんじゃ、なかったの!?………がっかりだな。 私の知ってるちーちゃんは、 なんだってできて、 わたしに言ったことは、 なんだってちゃんと守ってた。 ちーちゃん、 ヒメ、 ちーちゃんのこと、 ずっと、 忘れないから、 だから… だから… ヒメを恨まないで…? 」
そう言って、ヒメは右手を千春の顔にかざ し、氷嚢程の大きさの水の塊を、 千春の顔にポトっと落とす。 するとその水は、千春の顔にまとわりつ き、千春の呼吸を奪う。千春は慌てて剥が そうとするが、離れない。 息も絶え絶えになりながら、千春は、 輝夜の時よりも鮮明に感じる死の恐怖を味 わっていた。
怖い。死にたくない。 誰か、助けて!
我ながら情けない、なんて思っている余裕 さえ、千春にはなかった。 意識が途切れそうになるその直前、 ズシン、という音が聞こえる。 ズシン、ズシンと断続的に鳴り響くその音 が足音だと最初に気づいたのは、 ヒメだった。 前から、巨漢がのしのしと歩いてくる。 息を切らして歩くその姿には、貫禄と言う よりは、醜い印象を得た。 坊主なのも相まって、よりその思いは強く なる。
「 ふぅ。 疲れたぁ… ここらへんだよな……… ……………あ、いた 」
「 ……あなた、 だれ? 早くここからいなくなって! 殺すわよ? 」
ヒメは巨漢に物怖じせず、 荒く言いつけるが、
「 うーん、 美味しそう… 」
と、巨漢はなにも聞いていない。 謎の巨漢は、先程の千春とヒメのやりとり でできた水溜まりを見て、 うっとりとしている。
「 なんて質の良さそうな水なんだ… 泥に染みてもなお、 輝いて見える… ぜひ飲んでみたいね 」
「 あなた、 なんなの!? 聞こえなかった の!? 早くここから去りなさい! 」
「 ボクは… ただの食いしん坊だよ、 ここに来れば美味しいものが食べられるって聞いてさ、 そしたら早速、 美味しそうな水を見つけたんだ、 そりゃあ興奮もするよ 」
聞いてもいないことをべらべらと喋り始め る謎の巨漢。 苛立ちを抑えられなくなったヒメは、 先程千春を攻撃した時より激しい水流を含 む水で、巨漢を攻撃する。
「 ご馳走だ、いただきます! 」
辺りの建物ごとなぎ倒して流れてくる大量 の水が迫る中、 大きく息を吸い込んだ巨漢は、文字通り、 一滴残らず水を吸い込んだ。
「 ふうー… 美味しいお水ありがとう、 さて、 そこの少年の水もいただこうかな 」
そう言って、千春の鼻の辺りに口をつけ、 ズゾゾゾ、という音をたてながら、 千春の顔にまとわりついていた水をとって しまった。
「 ゲェッホゲッホ! …ゴホッ!! あ、 ありがとうございます… あ、あなたは? 」
「 ふふ、 ボクは、 “御貝 鶴吉”。 よろしくね、少年、 広めてくれよ? ハンサムな鶴吉さんが助けてくれたってね! 」
謎の巨漢は、脂ぎった顔をニヤリと歪め、 白い歯を見せながら千春に笑いかけた。
「 さあて、 おじさん頑張っちゃうぞ! 少年、 君は休んでな、 食事の邪魔は、 されたくないんだ 」
巨漢は、ヒメに相対する。 ヒメは、顔を真っ赤にして、今までで1番 巨大な水の壁のような津波を出現させ、 今にも攻撃してきそうだった。 だが、それを前にしても、巨漢の顔は、 自信に満ち溢れていた。