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二章 神噺
15話「神噺・参」
一ヶ月周期で開かれる会合、口火を切ったのは『導』だった。
「それで…?そっちは例の件、何か進展あった?」
「それが全く。なんとかしないと最悪下界にも被害が及ぶと言うのに…」
今『導』としょこら話している「例の件」とは、現在上界で多発している体編変症のことだ。
いずれ下界の人間も発症してしまうのではないかと危惧しているのだ。
「あう…ううあー」
「よしよし…悪化して喋れないんだから別に声出さなくてもいいよ…」
「あい」
「くーっ!尊いのが腹立つぜ!」
そうかな…僕はいつも通りな気がするけど…
あ、でも幼児化してんのか…ん…?
「ふぇ…」
「え?」
「ええええええん」
「はぁ?」
なんか…泣きたくなっちゃった…
なんだろう…体は何かをしてもらいたがってるけど…
僕自身には理解できない…
「うええええええええええ」
「…あっ」
その時、しょこらは気づいた。
僕が泣きながらも、無意識に服の胸の辺りを引っ張っていることに。
「あー…『導』、でる?」
「でるわけねぇだろ!?俺は男だわ!」
いやー、まさか無意識とはいえ、食欲までもが幼児退行してしまったとは。
「しょうがない…粉ミルク買ってくる」
「よろしく」
「ほーら、ミルクだぞー」
「あう…」
しょこらが差し出したミルクを見て、なぜか飲みたいと言う本能が生まれる。
その飲みたいと言う本能には逆らえず、飲み始める。
なんだろう、めちゃくちゃ恥ずかしい。
そんな光景を見ていた『導』が、からかい始める。
「ママ…?」
「誰がママだ!!」
そーだそーだ!こいつが母親とか吐くわ!
「でも…母親にも見えなくはないでしょ?」
「ないない。制服着た母親とかない。」
「差別だな…」
でも、普段大人しい方の『導』がこんなに楽しそうにしているのを見ると、嬉しくも思える。
「えへへ」
「あ、笑った…」
「へへへへへ」
「なんか笑い方きもいな」
しょ、しょうがないだろ!
僕笑うの苦手なんだよ!
「悪魔の笑いだ…」
「さて、本題に戻るぞ。例の件…体編変症だが、現在、これによる死者は1000名を超え、症状に犯されたままの者は100名ほど。ここまでくると…どうにかしないと、最悪下界でも発症し始めるかもしれない。」
「そうだな…なにか治す方法はないのか?」
そう。ここまで被害が拡大すると、抑えるより治す方法を考えるのが最善策。
なのでうp主などの有力な魔法使いや医者を呼んで、症状の解明を急いでいる。
『導』の方では何か進展はあったのか?
「残念ながら、こっちは全く研究が進んでいない。…今は丁度二級爺さんに頼んでるとこなんだけどな」
「まあ、あいつなら何かわかりそうだしな。
…ところでさ、うp主はいつ来るんだ?」
「さあ…もうすぐ来ると思うんだけど…あっ」
噂をすれば、会議室の扉が勢いよく開いた。
入り口に立っているのは…うp主だ。
「はぁ…着いた…」
「遅かったじゃないか…何してたんだ?」
「中国の神と麻雀してた」
はぁ…どうしてこいつはいつもこうなんだ。
毎日のように麻雀して、金溶かしたと思えばまた稼いで。
うp主と言う名の銀行は、永遠に破綻しないのだ。
「ってか、今会合始まる時間だろ?俺は遅れてねえよ」
「…まあ、そうだな」
「そして…なんだこの赤ん坊は。」
「うあ?」
「なんか碧と似てるけど…はっ、まさか子供!?ついにやったのかしょこら!!…うぐ」
「んなわけないだろ」
僕としょこらの子供だと勘違いしたのか、それにキレたしょこらがうp主を絞め上げる。
「がはっ…」
「今度変な事抜かしたら、分かってるよな?」
「はい…」
「さてうp主、研究結果を提出してもらおうか?」
「わ…わかった…」
しょこらから解放されたうp主は、力のない足取りでレポートを渡す。
「こ…これだよ…一ヶ月間の研究の成果…」
「うん、十分だ。そしたらあとは二級爺さんに任すとして、次の話。
俺らの部下を作るぞ。」
「まじ?私は碧で足りてるんだけど」
うん。僕も同じだ。
しょこらさえいれば研究、特訓、買い出し。なんでもできる。
「まあそうなんだけど、うp主のとこは雇うらしいからね。
俺らも一応雇っておこうと思って。」
「そっか…じゃあ考えておくよ」
「そうしてくれ。」
こうして、無事(?)に会合を終えることができたのだった。