コメント
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ほんとに毎回毎回神すぎるんですってば…
❕attention❕
・ nmmn 、BL
・ sxxn桃(攻受なし) × sxxn紫(攻受なし)
・流血表現 あり
上記に理解がある方のみの閲覧を推奨します
L side -
生まれつき、俺の身体はおかしかった。
3歳の頃、ベッドから落ちた俺は母親によって病院に連れて行かれた。その時俺は全く泣いたり痛がったりする様子もなかったので “ 念の為 “ だったそうだ。
「骨折ですね。折れてはいませんがヒビが」
「え……?」
母親は困惑した。俺は泣きもせず母親の腕の中でころころと笑っていた。
「でも…、泣かなかったんです。それに……」
「……無痛無汗症の恐れがあります」
無痛無汗症。名前の通り痛みを感じることが出来ない、汗をかかない病気だ。一見大した病気には見えないが痛みが分からないので制御不能になったり、汗をかかないため、体温調節ができなくなったりするかなり危ない病気だ。
俺が暗い部屋で1人、自傷行為に及んでいるのも全てはこれが理由だった。
I side -
作業を終え、パソコンを閉じる。凝り固まった身体を解かすように伸びをして、リビングに出た。
「お疲れ」
先に作業を終えていたらんはソファで俺を待っていた。
「おう」
軽く手を振って隣に座る。らんはスマホを見ていた。
「暑くねえの?」
こんな暑い日にも関わらずらんは長袖を着ていた。
「大丈夫。クーラー効いてるし」
らんはなんでもないように笑った。
「ふ ~ ん 、そう … ってなにそれ」
一瞬見えた服の隙間を俺は見逃さなかった。らんの細い手首を掴む。袖口は下の方に落ち、絆創膏が露になった。
「……なにこれ」
「切った……怪我だよ」
「こんなとこ切ったら痛いだろ」
手首。丁度血管すれすれ。絆創膏にも赤く血が滲んでいるのにものだから関わらずらんの顔は冷静だった。
「大丈夫だって。そんなに痛くないから」
「……気をつけろよ」
らんの「もうやめてくれ」という視線の訴えを配慮して俺は手首を離した。
L side -
自傷行為をしている理由は色々あった。
始めたのは大分昔だけど最近は頻度が増えたような気もする。それの理由の大半はストレスだった。
活動者であることからもちろんアンチはつきものだ。見たくなくてもそういうコメントやツイートは自然と目につく。
「……はあ、もうなんか嫌だな」
それでも元気を装って何を言われても「大丈夫」と返事する。痛みも感じない、汗もかかない、暑いのか寒いのかもイマイチよく分からない。そのせいで俺は生きているフリをしている幽霊みたいな惨めな生活を送っている。
生きている心地がした。流れる血を見てちゃんと生きている人間だと思えた。
「痛いってどんなんだろうな」
好奇心も混じっていた。みんなの言う” 痛い “がどういう感じのものかを知りたかった。
けど、まだ未だに感じれない。苦しかった。何度腕を切っても血を見ても普通の人間のような感覚になれない。
痛みが感じられないから制御ができない。だからもう止めないといけないことは分かってた。
「……気をつけろよ」
いるまの心配そうな顔が忘れられない。普段ぶっきらぼうないるまは俺のことを心配することなんてめったにない。
「はは、w 中毒かもね …… w」
増えていく切り傷。
もう絆創膏を貼るのも面倒くさいくらいかな。
「らん」
優しい声で目が覚めた。真っ白な天井と清潔なシート。病院だろうか。
「いるま……?俺、何して……」
「貧血。急に倒れたんだよ」
いるまは怯えた顔をした。一瞬何故か分からなかった。しかしそれはすぐに分かった。
「腕の傷。医者はリストカットかもだって」
ハッとして見れば腕には包帯が巻いてあった。
「この前の傷も、そうだろ?」
「……」
「ストレス?最近様子は変だったけど」
「……」
何も言えなかった。
「まあさ、何もかも黙ってる必要ねえよ」
いるまは黙っている俺に気を使ったのかそう言った。いるまなりの慰めだった。
「ありがとう」
言うつもりはない。
大きく抱え込んできたことでもない。周りからすればそんな小さな障害、大したことでもないのだ。
「また来るから」
「うん」
「……なんかあったら言えよ」
「分かったよ」
いつもとなんにもかわらない微笑みを浮かべる。どうせ言ったって何も変わらないんだから。
ああ、でもな、少しだけ後悔してるかも。
「痛かったんだ、ずっと」
“ 心の痛み “だけ伝えておけばよかったかなって。