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咲良の居る病室へと案内される。
翔「大丈夫なのかな」
蒼生「見て見なきゃ分からないだろ」
翔「おう…」
受付「こちらになります。」
蒼生「ありがとうございます」
翔「あざす」
2人は扉をゆっくり開けた。
咲良「…」
そこは広い個室で大きなベットに色々な機械に繋がれ窓の外を眺めていた咲良が居た。
蒼生「ごめんな。」
翔「ど、どうも…」
咲良「え?なんでここに…」
2人はベットの横にある椅子に腰をかけ、咲良に話しかけた。
蒼生「大丈夫か?」
咲良「…うん」
蒼生「こいつは翔、Bクラスの奴だ。お前が倒れているところを先輩が見つけて、俺らが救急車と先生を呼んだんだ。」
翔「急に知らない奴がごめんな…」
咲良は天井を見上げ少し笑った
咲良「ははっ、そっかそっかー。ありがとね」
クスッと少し切なさが残る笑顔で彼女はそう言った。
蒼生「色々聞いた。と言うか、聞いてしまった」
咲良「ふふっ、そうだよね」
咲良は上体を起こし喋り出す。
咲良「はあ。身体を起こすのにこんなに疲れるなんて、初めてだよ」
蒼生「大丈夫か?」
翔「無理すんなよ」
咲良「大丈夫、大丈夫。実はね心臓が良くないんだよね。」
翔「し、心臓…」
蒼生「…」
咲良「小さい頃からだったの。7歳の時に分かって…。両親は心臓病だと知って居なくなっちゃったんだよ。ははっ、笑えるよね」
蒼生「笑わない。」
翔「笑わねえ。」
蒼生と翔が目を合わせる。
咲良「ふふっ、同時に同じこと言うじゃん。私は両親に心臓病だと知って捨てられたんだ。今はおばあちゃんと2人で暮らしてるの」
蒼生「そうか。」
咲良「ごめんね。こんな暗い話しちゃって、聞きたくなかったよね」
蒼生「構わない。話したいこと全部話せばいい。」
翔「最低だな。俺だったら恨んでるかも」
咲良「ははっ、なんだかな〜。なんで居なくなっちゃったんだろうってその時は思ってた。いつか帰ってきてくれるって。でもいつまで経ってもお母さんとお父さんは帰ってこなかった。まだ小さかったから気付けなくて、おばあちゃんに当たっちゃって。沢山喧嘩したんだ。」
蒼生「無理もないだろう。泣き叫んで当然だ。」
咲良「優しく「大丈夫、大丈夫だから。おばあちゃんが居るよ。」って何回も言ってくれるの。ひどいこと言っちゃったのに。」
翔「…」
蒼生「そっか。」
咲良「うん…。」
とても悲しそうに咲良は話し続けた。
蒼生「心臓は…大丈夫なのか?」
翔「てか、学校はどうするん?」
咲良はきょとんとした顔で2人の顔を見た。
咲良「もー質問が多いな〜。大丈夫だって、学校は直ぐに復帰する。卒業してやりたいこと沢山あるからね」
蒼生は咲良が無理をしているように感じ取り、真剣な顔をして話した。
蒼生「大丈夫ではないだろ、嘘をつくな…。別に笑ったりバカにしたりなんてしない。そんなことするやつが居たら俺が怒る。だから今は、俺たちの前では強くなくていい。」
真剣に話をする蒼生を見て少し驚き、咲良は安心したような顔をした。
咲良「ふふ…そうだね。ありがとう。」
翔「蒼生、咲良って面白いやつだな!俺気に入った!復帰したら一緒に昼飯食おうぜ、大誠のチキンバーガーうめーんだよ!な!」
咲良「チキンバーガー?」
蒼生「大誠高校で人気のチキンバーガーがあるんだ、購買があるの知ってるだろ?」
咲良「ああ、うん、いいね食べよう」
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そこから1時間ほど3人は仲良く話し、2人は病院を後にした。
咲良「それでさ〜・・・あっはっはっ」
翔「お前それは無いわバカ!」
蒼生「なんだと?あるだろうが」
咲良「ふふっ、え〜?」
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翔「やっぱり少し不安げな顔してたな、あんだけ笑ってたけど」
蒼生「当たり前だろ。でも気は楽になっただろう。心臓病だと知って両親に捨てられたら、「自分が心臓病だから捨てられちゃったんだ。」って誰にも話せなくなるのも無理はない。誰かに話したらまた捨てられてしまうって考えになる。きっと咲良はそんな気持ちを持ちながら俺らに話してくれたんだろう。」
翔「余命宣告…」
蒼生「…あいつには漏らすなよ。」
翔「ったりめえだ。咲良は大誠を卒業したら医者になる夢を持ってんだ。んなやつに漏らすかよ。」
蒼生「そして、好きな人と結婚して子供を産んでその子をうんと大切に育てて可愛がってあげたい…か。」
翔「余命宣告はあと1年…。叶えてやることできねえのかな。あんなに生き生きと輝いた顔して将来の話をするなんて。心が苦しいわ。」
蒼生「入学式にとんだ出会いをしたな」
蒼生はなにか考え事をしながら言った。