私には親友が居る。
ドジで馬鹿ででも優しくて、太陽みたいにあったかい子。
私はそんな彼女が大好きだ。
ある日のことだ彼女が腕に包帯を巻いて家から出てきた。毎日とは少し変わった親友に驚き慌てながらも「大丈夫?」「何かあったの?」何十回返事も頭に入らずそう心配した。親友は私の手を握って
「全然大丈夫だよほら遅刻するから行こう」
私は彼女が見せる笑顔で絆されて腕の事なんかその一瞬で何も無かったようになる。そしてまた朝の日課である登下校中の雑談に浸った。
学校に着いて彼女は多くの人に囲まれる。
「腕どーしたのー?」「なんかあった?」
「犬に噛まれたとかっ!」
大人数に囲まれて問い糾されながらも彼女は皆を宥めるように大丈夫だよと答えた。
彼女の笑顔は不思議で周りの人間を温もりに変えてしまう。私はそんな彼女の笑顔に惚れて押して押して親友まで登り詰めた。
私はまた思い出したように「ほんとに大丈夫?」と何百回と聞いていった。彼女の腕に巻かれたその包帯は心なしか日に日に増えていった。流石に私も皆も心配して毎日が尋問状態。彼女の太陽みたいな笑顔も曇りに変わっていった。
今日の天気予報は雨。傘を差して彼女の家の前でいつものように待っている。リズムを刻む雨の音は待ち時間を忘れさせて頭を真っ白にさせた。
すると聞き慣れた扉の音が鳴っては心も晴れ俯いた顔が真っ直ぐに向く。
「ごめんなさいね、あの子朝から大急ぎで学校に行ったの今日は先に行っちゃったみたい」
彼女の母親がそう言って申し訳なさそうに謝った。私は驚いた。今まで連絡もせず遅れたり先に行ったりする事などなかった。気まぐれだろうか連絡を忘れてしまったのだろうか。私はそんな事も考えず頭の中の真っ暗な何かに従うように傘を捨てて学校まで走った。
彼女が居たのは立ち入り禁止の屋上だった。何やら手紙を箱の中に入れて柵の前で立っている。
「ごめんね」
その一言が彼女から聞ける最後の言葉だった。
今迄感じたことない感情が暴走した。彼女の笑顔は太陽でも月でもそんなものではなかった。まるで何もないぽっかり穴が空いたような、そんな悲しい笑顔。
今にも崩れそうな揺れる足で箱までゆっくりと歩く。手紙を取り出して無心でその内容を読んでいく。
私は親友だったの?
そう書かれていた。
彼女は私のことを親友とは思っていたかったのだ。
きっと私のことを面倒くさいと思っていたいに違いない。彼女の腕が今ではどんな事になっているのか想像がついた。
彼女視点
「親友だからね 」「親友だもん」「親友なら」
こんな言葉が彼女から出たのは知り合って数ヶ月経った頃の話だった。親友だから頼って、私達親友だもんね。親友なんて単語で括り付ける関係ならならなきゃよかった。彼女の承認欲求を満たすだけの道具のように思えた。彼女と喧嘩したとき「親友なら謝って欲しかった」。
親友だから仲が良いの?
親友だから喧嘩しないの?
親友だから何かしなきゃならないの?
彼女が私にくれた言葉も、プレゼントも全部、親友だからだったのだろうか。
いうしか誰とも関わることが自虐行為になっていた。
雨の日目の前には絶望する女の子。体を重力に任せたときその感情は芽生えた。
罪悪感
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