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寒い冬が通りすぎ、暖かい春が来た。今日は満開の桜の木の上に座っていた。するとあまり見かけぬ人間がやって来て本を読み始めた。私は不思議に思い声を掛けた。「折角桜が満開で綺麗なのに見なくていいのか?」すると男はこう答えた「もちろん桜も見てるさ、綺麗な落ち着いた場所で本を読むのはとてもいい気分だよ」と。私はびっくりした。この男には妖である私の声が聞こえていたのだ。私は久々に人間としゃべった。とてもいい気分になった私はまた声をかけた。「やはり人間というものはよく分からん」男は「君も人間だろう?よく考えればいずれ分かるさ」と言った。(この男は阿呆なのか?)と疑問に思った。私が妖だと気付いて無かったからだ。自分は妖だと伝えようとした。でも、ほんの一瞬だけ私の正体が妖だとバレたらもう私とは話したりしてくれないんじゃないかと思ってしまった。だから私は男に対して「同じ人間でも分からんことはあるだろう」と言った。男は「少なくとも俺は人の気持ちを分かると思うな」と言っていたが私はまた疑問に思ってしまった。此奴は超能力者でもないのになぜ自分以外の人間の気持ちが分かるのだろうかと。人間でも妖でもこの男の発言は疑問に思うだろう。このように疑問に思うことも多々あったが私は人間と喋り続けた。話を聞くと此奴は病を患っていてもう先は長くなくて自由も無いらしい。やはり人間とは不思議なものだ。もうすぐ死ぬとわかっているのなら最期くらい自由に過ごさせてあげればいいものを。でも男は自由になれない事を悔しがったりはしなかった。此奴の自由を奪う奴もこの男も不思議だ。人間とは存在から何から全てが不思議だ。
続く