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とある日の朝、学校は騒がしかった。
運動場を大勢で囲むようにして、人が集っていた。
俺は気になり、人の間をすり抜けた。
どうりで騒がしいわけだ。
校庭で飼っていたうさぎが、柵から抜けて脱走したらしい。
俺は息を飲み込んだ。
校門から侵入したのか、グルルと喉を鳴らした野良犬が、歯をむき出しうさぎを睨んでいたのだ。
先生は、野良犬を撃退するつもりなのか、急いでさすまたを取りに行く。
野良犬は、一歩ずつゆっくりうさぎに近づいていく。
うさぎは、寂しそうに鳴いている。
そしてついに3歩進み、うさぎに跳びかかる。
「もうだめだ…間に合わない。」
俺はまぶたを閉じようとした。
その時、小さな男の子が俺の横をすり抜けた。
思わず、目が強く開く。
男の子は、うさぎをギリギリで抱え上げた。
「良かった…。」
ところが、うさぎは助かったはずなのに悲鳴が上がった。
男の子が転んでしまって、足首には、野良犬が噛み付いていた。
血がポタポタとたれはじめる。
それでも、男の子はうさぎを離さずにいた。
ようやく、さすまたを取りに行っていた先生が来た。
男の子の足首から、野良犬を引き離し、さすまたで押さえつけた。
野良犬は、さすまたから抜け出して、逃げていった。
男の子は保健室へと運ばれた。
そして数時間後_
その時間は体育の授業だった。
俺は、運動音痴で体育は苦手だった。
種目はサッカーで、他のチームのプレーを見ていた。
「佐々木!パス!!」
ついに自分にボールがパスされた。
取りあえず、近くにいた木村にパスをしようとした。
その時、相手チームの高橋がボールを取ろうと足をかけてきた。
操作を間違えた俺は、思わず転んでしまい、足をすりむいていた。
試合が中断され、俺は授業から抜けて保健室へと向かった。
「失礼します。6年4組の佐々木です。」
そう言い、保健室に入る。
すると、見覚えのある子がいた。
うさぎをかばった男の子だ。
「あら~擦り傷、転んだのね。」
保健室の先生は引き出しからばんそうこを取ると、顔をしかめた。
「ごめんなさい、消毒液足りなくて、取って来るから待っててね。」
そして、男の子と2人きりになった。
足には、包帯が巻かれている。
俺は、いつの間にか男の子に声を掛けていた。
「あのさ、怖かっただろうに、なんでうさぎをそこまで守ったの?」
そう聞くと、男の子はこう答えた。
「うさぎさんが助けてって言ってたから。」
「確かに、寂しそうに鳴いてたもんね。
助けてって言っていたのかもね。」
「違うよ。」
男の子は、首を横に振った。
「そう言ってたんだ。」
男の子は真剣な顔をして俺にそう答えた。