「ハル、ご飯できたよ~。どうぞ。」
母さんはそう言うと重たい鉄のドアを開けてすぐに出て行った。
僕の家庭は、普通とはかけ離れている。
なぜなら、僕がいるのは、薄暗い地下室。
そして、そこから一度も出たことがない。
出ようとしても24時間監視されていて、出れたとしても見つかるとどうなるか分からない。
だから、僕は外の世界が羨ましい。
幼い頃、父さんから聞いたことがある。
外の世界は、青い空が広がって、カラフルな大きい建物が沢山並んでいる。
季節が変わるたびに町並みや風景が美しく変っていく面白い空間だって。
じゃあ、どうして、その景色をを見させてくれないんだろう。
どうして、ここまでして僕を閉じ込めるんだろう。
僕にとって謎だった。
やっぱり、外の世界が気になって、見たくてしょうがない。
一生ここにいるのは絶対に嫌だ。
僕は覚悟を持った。
そして一直線に走り、重い鉄のドアに思いっきり体当たりをした。
ギィギィと音を立てドアが開いた。
今まで浴びたことのない光に感動しながら、出口を目指し突っ走った。
物が沢山あるところに出るとようやく玄関のようなところが見えた。
それと同時に視線を感じた。
母さんが目をかっぴらいて僕を見ていたのだ。
だが、僕は視線を玄関の方にすぐ戻し、また突っ走った。
「ハル…?何をしているの?」
母さんの声は僕に届いてなかった。
「待ちなさ″いッ!!」
母さんが声を張り上げたとき、僕はドアノブを掴んでいた。
心が高鳴りながら、ドアを開いて外に飛び出した。
目の前に広がっていたのは灰色の景色だった。。
母さんが後で泣いているのが分かる。
倒れて、悲鳴の混じった声で。
僕は、何なのか分からない感情でただ突っ立っていた。
瞳から光が消えて、灰の色に変わった。
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