病気が見つかった、 その言葉に固まってしまった。
頭の中がぐるぐるとまわる。
病気?……何、それ。
「それって、治るの?」
動揺し、声を荒らげる。
「……」
でも父は何も言わなかった。
「ねえ、父さん!!」
「……」
黙り込んでしまった。
「父さん、答えてよ……」
何を躊躇っているのか、それ以上に何かがあるのか。もしかしたら、重い病気にでもかかったのかもしれない。
癌、とか?だったら躊躇うのも分かる。
「…半年」
「え?」
「余命が、半年だって、」
半年?余命、?は?頭の中が真っ白になった。
「…」
「ゆき…」
「本当に……?」
すると父さんは僕の両腕を掴み言葉を続けた。
「とても珍しい病気で、殆ど症例がなく打つ手がないそうだ。ゆき、辛いだろうが、父さんと母さんは…」
そう言う父さんの声は震えていて、冗談ではないことを知らしめていた。でも、信じられなかった。
父さん、冗談だって言ってよ。なんでまた俯いてるんだよ。なんで…
「ゆき、どうしてゆきが……」
母さんの泣き声が響いた。
これ以上否定することはできなかった。
どうしようもない事実を目の当たりにして、僕は何も考えられなかった。
ただただ呆然としていた。
そんな心の奥底で何かが崩れ落ちた気がした。
そっとノートを取る手を止めた。
なんだか、真面目に勉強しているのが馬鹿らしく思えてきてしまった。
頬ずえをつき窓の外を見る。そこには6月にもなるというのに綺麗な青空が広がっていた。
ふと、京介と目があった。僕を見た京介はふっと笑った。
俺も笑い返してみる。
京介は、保育園からの幼なじみだ。ずっと仲が良く喧嘩もあまりした事がない。
勉強は苦手らしいが普通に頭は良いし運動神経が良く面倒見がいい。
「及川なにぼけっとしてるんだ。」
「いたっ」
担任の木村に軽くチョップされた。
クラスで笑いが起こり、気恥しさを覚えチョップされた頭をさすった。
最後のホームルームが終わり荷物をまとめていると、
「及川、お前佐々木と仲良かったよな?」
木村がそう話しかけてきた。
「まあ、」
「佐々木の家どこか分かるか?」
「はい」
「なら家まで届けに行ってくれないか?どうせ暇だろ?」
「はぁ」
木村は大量のプリント押し付けるとその場を去って行った。
先生は、僕の病気の事を知らない。
知っているのは校長と保健室の先生だけだ。
先生が去った後、渡された大量のプリントを持って僕は固まっていた。
「ゆき、俺が代わろうか?」
すると京介がそう言った。
「いや、大丈夫。それに京介部活でしょ」
「そうか」
京介は少し残念そうにそう言った。
「じゃあ、行ってくる」
「おう。また明日な」
京介と別れ、僕は佐々木の家に向かった。
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主人公の名前は、 及川 悠己(おいかわ ゆき) です。( ˙꒳˙ )