「やっと出版出来ましたね。」
同僚が、俺のデスクに置かれた一冊の雑誌を指さす。その雑誌は、俺“ら”が作り上げたオカルト雑誌だ。
そう、俺はオカルトライター。いろんな心霊スポットを訪れ、そしてそれを元に記事を書き出版するのが仕事。俺のいる出版社は小さいから、雑誌はオカルトマニアにしか知られていないだろう。
「結構疲れますね、この仕事も。」
立て続けに言う同僚・上野は、面倒くさがってるような感じだった。
中々収入がない上、仕事は山ほどある。そりゃあ、面倒にもなるだろう。
「まぁ、良いじゃないの。しかし…もっと有名になってもいいものね。」
太由はこの出版社のベテランライターだ。いつも俺らを引っ張ってくれるから、凄い頼もしい。
こう言って今も、俺らを引っ張ろうとしている。
「で。次の調査場所についてですが〜」
それをガン無視して話を進めるのは、同じく同僚の佐原だった。こいつは身勝手な部分もあるので、俺はそんなに好きではない。
「なんと、最近出来たいわくつきの図書館に行ってみようかと。」
「え?いわくつき?」
「そうなんですよ上野さん!何でも、ここでは行方不明者がたくさん出ていて…」
本当?と疑う上野と必死に説明する佐原をよそに、太由と俺は小声で話していた。
「ねぇ斬井君。図書館にオカルト関係の本ってあると思う?」
「俺はありそうだと思いましたがね。神霊関係とかあるんじゃないですか?」
「そうねえ。行ってみる?」
「嫌な予感しかないですが…行ってみましょうか?」
佐原はニヤ…と笑う。上野は「はぁ」とため息をついた。
「じゃあ、行ってみるか!」
俺はそう言ったが…
この時の俺は知らない。これが一番の誤った判断であったことを。
「ここか…」
木葉が日光に透けて心地良い、入り口の門。全て塞ぎそうな漆黒の門を開けて、中に入った。
玄関も日の光が差し込んできて、かなり暖かくなっていた。靴箱は異様に高いのが一番気になるが。
「どうやら、図書室は2階にあるようだな。」
「二階?遠っ」
「遠くはないでしょ、上野さん!」
「ささ、いきましょいきましょ!」
しかし、人影一つも見当たらない。行方不明者はどうやって消えたんだ?
だが、人がいないにも関わらず内装が綺麗すぎる。つまり廃墟ではないのだ。職員はいるのだろうか?
「わぁ〜!!」
さっきとは打って変わって、感銘の声を上げて走り回る上野。
最初に目についたにのは様々なジャンルの本を収めた大きな本棚だ。何段だ?六段はありそうだ。
それに、窓の近くには席がある。ゆっくりと本が読めそうな快適な空間だ。
更に、貸し出し口まである。貸し出し口には、おすすめ本などが表示されるモニターがある。
こんな爽やかな図書館、人生で初めてだ。
「こんなとこから行方不明者が出るなんて、嘘でしょ!佐原!」
「いやぁ〜、でも本当に出るんですってぇ…」
「ふふふ。上野さん、ここを本当に気に入ったわね。」
「はい!こーんな素敵な図書館、他にはないですって!!」
「怪我には気をつけてね。」
「はーい!!」
子供かよと呟き、俺はトイレに行くために扉に手をかけた……………
「…は?」
「ん〜、どうしたんですか?斬井さん!」
「……かない」
「え?」
「扉が開かない。」
ここからが、地獄のはじまりはじまり。
次回⇒『Slaughter』
※次回から、グロテスク要素が増えます。苦手な方は見ないでください!!
コメント
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library…図書館、Dream…夢 スンッ( ˙꒳˙ ).。oO( 夢の図書館?)