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「おはよー」
「あ!おはよう知恵ちゃん、ねえねえ、新しい素晴らしいバンドを私は見つけてしまったのだ。是非聴いて欲しい!!!」
「おー、今度はどんなの?」
……………………………………
「ただいまー」
「おかえり知恵。今日は帰り遅かったねぇ。」
「うん。部活が長引いちゃってさ。」
「そう、大変だね、夜ご飯知恵の好きなの作ったから、いっぱい食べなさい。」
「ありがとう」
……………………………………
ガラス越しの先生に、私は話しかける。
「ねえ、先生。
私はあれからなんも変わらない日々を送っているよ。
家族とご飯を食べて、学校に行って、友達とプリクラなんかとって遊んで、くだらない話をしているよ。部活なんかも頑張っちゃってさ。
強いて言うなら前より周りの人が優しくなったよ。近所の人も、友達も、家族も、みんな同情でもしてんのか、すげー気ぃ使ってくれんだよね。
あと、勉強も学年でトップだよ。前はあんなに落ちこぼれで勉強なんかする気も起きなかったのに、あの時暇で先生が教えてくれたおかげで県内トップの高校にも余裕で行けそうだよ。
あと、あとさ、先生が暇なら書けって言った小説?遺書?みないなやつ、メディアが喜んでフューチャーしちゃって、『悲劇の中学生作家の物語』とかなんとかですげーバカ売れしてるらしいよ。
あーあ。切り開かれちゃったね。私の未来が。こんなにも輝かしいものになってしまったよ。
ねえ、なんであなたはそんなところにいるの?
あなたはなにをそんなに悪いことをしたの?
あなたが私を連れ出して、私の未来は開かれてしまったんだけども正義とはいったいなんなの?
…ねえ、教えてよ。
先生は、悪い人なの?」
先生は何も言わずただ斜め下を向いていた。そして、しばらく黙ったあと、小さく口を開いた。
「知らねえよ。お前の未来なんか。」
そう言ってゆっくり気だるそうに立った後、そのまま出口に向かって歩いて行った。そして、扉の前で、立ち止まって、俯いた。
先生は捕まって懲役何年か、刑務所にいなくちゃいけないらしい。
あーあ。非常につまらないね。つまらなすぎるよ。
ねえ、先生。