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テラーノベル(Teller Novel)
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グシャグシャと気味の悪い音が聞こえる。

何の音? 怖くて意識を失っていたのだろうか。



これは夢? 誰かの声が聞こえる。見たことも聞いたこともない話しが流れ込んでくる。

そして映像も。

この人、見たことがある。えっと、どこで会った? 立派な車に乗ってるけど。

ん? 車? 大会社の社長みたいだ……

ちょっと待てよ。これ、俺だよな。

いつも仕事で移動してた車だ。そしていつもの俺。

でも、俺は……


そうだ、事故に遭ったはず。

高速道ですぐ前に強引に割り込んできたトラックがスリップして道路を塞いだんだ。そこに突っ込んだはずだけど。


直後、白くてふんわりと優しい光を放つ|球《たま》がふよふよとあたりを飛び始める。

『儂は神である。創造神アルムという。あの事故はイレギュラーだったのだ。本来なら、トラックドライバーは単独死するはずだったが、巻き込んで悪かった』

謝罪する|球《たま》ってどうよ。

『その代わりと言ってはなんだが、できる限りの能力を与えて、転生させたのじゃ。三歳くらいから順に開花するようにしておった。今、この声を聞いていると言うことは、開花しはじめたの。最初は鑑定スキル、体力強化や状態異常耐性、そして全能力強化、解体、生活魔法などは既に開花しておるはずじゃ。異空間収納としてアイテムボックスも持っておるから何でも入るからの。今のその姿では、どれほども荷物も持てぬであろう……』


いろいろと話してくれる白い|球《たま》だけど、俺には理解できない。

とーさんとかーさんはどうなったんだ?

起きたらいつもの笑顔が待っているはず。

もう少し眠ろう。まだ眠いから……



目を開ければベッドの上。

ここはどこだろう。

なんでこんな所に?


……そうだ! 事故に遭ったはずだけど。でも、生きてる?

身体を触ってみても痛いところはない。でも何かが違う。

ゆっくりと自分の手を見て驚いた。

手のひらが小さい。にぎにぎしてみるけど、自分の思うとおりに動くということは生きてるんだよな。シーツをめくれば、ぷっくりとした小さな足。筋肉の付いていない脚。お腹は? 少しぽっこりしている。何だか息子の子供の頃を見ているようだ。




俺は鷲生(わしゅう) 凪(なぎ) 三十八歳

妻と十八歳の息子がひとりいる。息子は頭の良い子で、計算に関しては右に出るものはいない。某公立高校を首席で卒業し、大学生でありながら、俺の会社で監査業務のトップとして働いている。中学の頃から会社に関わっているので問題ない。

俺は社長、妻は専務。

妻は大学の後輩で、明るく頭脳明晰だった。息子も取締役だったりする。まあ、身内がトップにいる会社ということだ。

そんな俺は、当然、遺言書を作っている。こんなに早く使う日が来るとは思ってなかったけど。

会社の跡継ぎは息子。妻に対しては法定相続分を渡す。弁護士、息子、妻同席の上で作成して、親友である弁護士に預けているので任せておけばいいだろう。


さて。

現状を受けとめなければならない。そう目の前の現実を。

夢だと思っていたのは事実なのだろう。目を覚まして自覚した。


こんな時は、ステータスとかいうのを見るんだっけ?

『ステータス』

なんか、頭の中に声が聞こえた。

すると目の前にはタブレット画面みたいなものが出た!

やっぱり、ゲームとかアニメなんかに出てくるやつだ!

ゲームはよくわからないけど、息子がパソコンでやっているのを見たことがある。


■ナギ・ワシュウ……って、そのまんまじゃねぇか!


≪ステータス≫

年齢:三歳

性別:男

身長九十五センチ 体重十五キロ 白銀髪ロングヘア(生まれてから切ってない)

種族:人間

レベル:1(*10)

生命力:100(*10)

魔力:300(*10)

攻撃力:?(*10)

防御力:?(*10)


≪スキル≫

生活魔法

四大属性魔法

解体

≪EXスキル≫

複合魔法

氷魔法

無属性魔法

身体強化

鑑定(真偽判定可能):隠ぺい

探索

≪ユニークスキル≫

[異空間収納アイテムボックス]:隠ぺい

[状態異常無効]:隠ぺい

[毒耐性]:隠ぺい

[自動地図オートマップ];隠ぺい

(広域の地図と現在地、索敵済み範囲の敵と味方の表示ができる。詳細な地理情報の表示も可能)

[探知レーダーサーチ]:隠ぺい

すべてのマップで索敵対象の弱点と詳細情報の表示ができる


==========

[創造神の加護]:隠ぺい

[幸運]:隠ぺい


===今後開花する予定一部表示(隠ぺい)===

回復魔法

召喚魔法

空間魔法

光魔法

錬金魔法

創造魔法

精錬精製

錬成 他多数



えっと、何これ?

レベル1は理解できる。三歳だし。

うーん、やっぱりわからん。隠ぺいとか(*10)とかなんだよ。

あと、名前と歳、身長体重、髪の毛はわかった。

ふにふにしてるけど、痩せ気味だな。


あれ? ステータス画面にメールのマークがある。どうやったら見られるんだ? 指タッチ、とかかな。

ポチッと……

おおっ! なんか出たぞ。


++++++++

ワシュウ・ナギ殿

この度はすまんかった!

間違いで死んだ上に、元貴族の家に転生させてしもうたのじゃ。他の貴族に空きがなかったのじゃ、許せ!

わしは、この世界の創造神アルムじゃ。

お主は三歳じゃから詳しいことは知らんで良いのだが、ある国で侯爵として活躍しておった父親だったが、臣下に裏切られて今の家にやって来たのじゃ。皆、元貴族だとは知らぬ故、ナギと名乗るが良いの。一方通行にはなるが、こちらから連絡することもある。平民としてしばらく生きてくれのぉ。

本当にすまんかったのじゃ!

創造神アルムより


追伸:自宅に両親が残した少しの金と旅の鞄、短剣などがある故、それらを持って旅に出るのじゃ。最初は薬草を集めてギルドに売るが良いの。できるだけ登録できるように配慮するからの。

++++++++


もしかしておっちょこちょいか、創造神アルムは。

はぁ、この度も間違いが起こったって。どれだけ俺の人生恵まれてないんだよ!



コンコン。

はい?

「おお。目が覚めたかナギ。よかったのう無事で。残念じゃがお前の両親は死んでしもうた。これからどうする?」

どうするかな。この人は村長さん。いつもよくしてくれてたんだ。

「とりあえじゅ、いえにかえりましゅ。しんしぇきがあるかもらから、いく。ありがと、しょんちょしゃん」

あれ? 普通に話してるつもりだけど、子供の話し方になってる。まあ、しかたないな。

そうか、と村長は頷いている。

どうやら教会で保護されてたみたい。よいしょっとベッドから飛び降りてみる。


教会入り口にあるピカピカの柱に写った姿は、全く違う姿だ。白銀の髪は肩甲骨の下あたりまである。粗末な上着とニッカポッカ? カボチャパンツ? のようなズボンを履いている。そして小さな肩掛けの鞄。

ありがとうとシスターや村長たちに頭を下げて祭壇を見れば、創造神アルム様の像がある。おじいちゃんだね。アルム様にひょこんと頭を下げてかけ出した。

なぜだか戻るべき家が理解できる。そして前世の記憶もある。でも、今の俺は三歳児だ。



自宅に到着して、ドアを開けようとすれば鍵が……

小さな鞄を開けてみれば、ハンカチと鍵、そしてクッキーが入っていた。

鍵を開けてしっかりと閉める。魔物がくると怖いから。

食堂は血だらけだ。

両親の遺体はない。残っていたら埋葬してくれたんだろう。

遺体が残らない可能性もある世界なんだ。

アルム神、アルムじいちゃんでいいだろ、もう。

アルムじいちゃんのメールにあった地下は、母さんに押し込められた場所だ。でも真っ暗で何も見えない。こんな時、魔法が使えればいいのに、と思えばふわりと灯りがともる。

ん? 俺、ライトがつけばいいなって思っただけなんだけど。

灯りをつけるくらいの魔法は使えるということか。

そうだ、捜し物……

ぐるりと見回せば、あっちこっちが光っている。なんで?

一番近い光にはリュックがある。食事の宅配サービスの人が持ってるような四角いリュックだ。今の俺には大きいけど、紐の長さを調整すれば使えるかも。

適当に調整して背負ってみれば、身体の半分くらいがリュックに見える。でも、いろいろ入るから便利だな。

その奥にも光があるけど、土の中?

うーん、と見回して棒っきれで掘ってみる。三歳児にはかなりの重労働だけど、頑張ったぞ!

そこには小さな袋がいろいろある。

それぞれに銅貨、小銀貨、銀貨が入っていて。別に金貨も五枚あった。

これは魔石かな? いろんな大きさのきれいな宝石みたいな石がガラガラ入って入る。これはいざと言うときには売れるぞ!

でも、盗まれる心配もあるな、と考えて思い出す。

[異空間収納アイテムボックス]って書いてあったけど、俺の認識で間違いないのかな。アルムじいちゃんも言ってたし。

[アイテムボックス]と頭に思い浮かべてみる。

うぉっ! なんか入り口みたいなの出た!

試しに魔石を入れてみれば、透明のプレートに『魔石』とかかれて個数が出る。詳細タグをタップすれば、何の魔石か、現在価格まで出てきた! これってかなりのグレートじゃないか!

ゴブリンの魔石と思い手を入れれば、一個の魔石が手のひらにのった。これ、すごくイイねー

じゃあ、銅貨と小銀貨、銀貨一枚を革袋に入れて、残りはアイテムボックスに入れた。おお! 明細が出た。これなら盗まれることはないな!


次々と光りのある場所を開いてゆけば、テントや鍋、プライパンみたいなもの、木べらなどのキャンプ用品。そして俺の服。どうやら新しいものだ。買い置きしてくれてたみたいだ。

そしてとうさんの道具箱。

ハサミやナイフ、包帯のように巻いた布、傷薬、熱冷ましなどが入って入る。これも持って行こう。

隣りには立派な短剣と大きめのナイフがある。見たことのある解体用のナイフだ。当然持って行くけど、短剣はアイテムボックスへ。解体用ナイフは腰につけるベルトに通した。とうさんのベルトだけど、穴がぐるりと全体にあるので、腰に下げてみる。ベルトはかなり長いけど、反対側に差し込んでなんとか止まった。

薬草図鑑と魔物の本もあった。当然、アイテムボックスに入れる。あっ、キャンプ用品や毛布なんかも入れたよ。

避難用なのか、干し肉や固いバンもあったし、水用の革袋も発見した。それもゲットだ。一応、とうさんが大切にしてた長剣もアイテムボックスにしまった。

普段着や靴などはリュックに入れて、棚にあったパンをかじった。




夜明け前に目を覚まして、夕べの残りのパンをかじる。水袋に水を入れて、リュックに入れた。

そして、手紙を書く。

乗合馬車で町に行くからと礼をしたためて封をする。三歳なので汚い字だけど読めるだろう。

外に出たら日の出が見える。

とうさん、かあさん。俺、頑張って強くなるよ。

だから見ていてね。



昨日の村長の態度を見て、両親の遺体はなかったのだと気づいていた。だから墓もない。

家は村長の好意で借りてたと聞いていたので、手紙の中に鍵も入れておいた。


村長宅に手紙を投げ込んで、歩きながら薬草の本を見た。森じゃないので薬草はないんだけど。

そこで、薬草をなんとか探せないかと考え、ステータスを確認した。

スキルに『探索』があるじゃない! アニメではサーチだったよな。それなら……


(サーチ・薬草)


ポポポポポっと小さな光が見える。

すごいな、これ。それぞれ何に効くのか書いてある。

毒草でもクスリになるんだ、薬草と名前を覚えながら摘んでゆく。根が必要なものもある。根がない方がいいものは、葉と茎を摘み取る。そうすればまた生えてくるから。


そんな風に薬草を採取しながら歩いていれば、ギルドの出張所がある村に到着した。

「いらっしゃいませ。えっと、今日は何のご用かな?」

「これ、かってくらしゃい」

あはは、やっぱり三歳の話し方だよね。

抱えていた薬草を差し出せば受け取ってくれる。とてもカウンターには届かないから。

「えっと、 冒険者ではない、わよね?」

うん、違うけどなれるの?

「お歳は?」

「しゃんしゃい」

「今三歳なの!? えっと少し待ってね」

パタパタと駆けていく受付の人はすぐに戻って来た。

「えっとね、登録はできるよ。薬草採取だけでも実績になるから。でも、魔物討伐はうけられないの。十二歳からになるけどいいかな。もちろん、たまたま捕まえた角うさぎなんかの魔物は買い取りするわよ」

お金がいるの?

「そう。登録するのに小銀貨三枚。大人は銀貨一枚なんだけど、どうする?」

すぐに登録して!

肩から下げたバッグから革袋を取りだし、小銀貨三枚を出す。

「字、書ける?」

うん!

出された紙に名前を書く。ナギとだけ。

おとうさん、おかあさんは? と聞かれて事実を伝えることにした。

「きのう、まものにころしゃれたの。ぼくは、いまからまちにいく。しんしぇきに、たのむから」

そう嘘をついた。親戚なんかいないのにね。


ギルドカードが出来上がった。ランクはH。

これは仕方がない。

薬草の買取も冒険者としてやってもらった。査定が少し高くなるらしい。

珍しい薬草があったらしく、銀貨一枚と小銀貨一枚、銅貨五枚になった。

ギルドの説明も聞いた。ランクによって年間最低受注数が決まっているらしい。

俺は既に二回終わったことになっている。どうやら常時依頼がでていたのがあったらしい。

こんな風に頑張ってね、と言われてカードを受け取る。

乗合馬車もギルドで手続きするらしい。何でも屋だね。


サンドイッチと果実水を買って食堂に座る。といっても、ベンチによじ登ったんだけど。

出かける人が多いからだろうか、サンドイッチは包んであったし、果実水も木の筒に入っていた。これは便利だね。



乗合馬車が出るわよ、とギルドのお姉さんが呼びに来てくれた。

木札を渡してねと聞いていたので御者に渡せば、好きなところに座っていいと言われたので一番前に座った。周りが見えるから。

転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

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