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透海 side
《おーい、起きろー》
「……おはよう……」
横で眠っているヒスイ。
まだ寝てたのね……いい加減帰れば良かったのに……
「ん……おはようー」
「おはよう。 今日は私、用事があるの。留守番頼めるかしら?」
ベッドから起きてヒスイと挨拶を交わす
「え、用事? 」
「急ぎの用なの。」
心配そうな顔で私を見つめるヒスイ。
この子は連れて行かない。邪魔なだけよ。
絶対にヒスイは、アイラを殺すのを躊躇する。
私はアイラを、確実に殺すの。
「それじゃぁ、行ってくるわね。」
ドアを開け、街へと出る。
冷たい風が吹いている。
朝の街は静かね……朝の散歩も悪くないのかも……
そんなことを考えていると、いつもの明るい声が遠くから聞こえる。
アイラだ。
アイラのことを睨んでいると、目が合う。
こちらに気づいたアイラはニヤリと口角を上げる。
「トウカちゃん……また私をいじめに来たの? 」
わざとらしく、私のことを指さしながらそう叫ぶ。
すると、そばにいたベルソーから、蹴りが入った。
アルカもそばにいたのだが、表情1つ変えず、こちらを見つめている。
「……っ……アンタねぇ……!」
怒りに任せ隠し持っていたカッターで切りかかろうとすると、アルカが私の腕を掴む。
おかげでアイラに傷1つつけられなかった。
「……やめて。」
アルカは冷たくそう言って、私に再び蹴りを入れる。
痛みで声を上げることも出来ない。
その場にうずくまるしかなかった。
「あれぇ?トウカちゃん、私のこと殺そうとしたのー? 怖ぁい♡」
「もう大丈夫。さ、行こう」
安心させるようにアイラに笑いかけるハルカ
「2人ともありがとう♡ 」
アイラはそう言って笑いながら去っていった……
アルカを取り戻すために準備したのに…
怒りに任せた所為で失敗した。
帰りましょ……またチャンスはあるわよ……
ーーーーーーーーー
それから私は、毎日毎日、彼女を殺そうと作戦を立て、彼女の元へとむかった。
その度に返り討ちにあった。
ーーーーーーーーーーーーー
「今日こそ……あいつを殺す……」
いつものように、アイラを探しながら、街を歩いていると、アルカに出会う。
「……またアイラをいじめに来たの?」
「何度も言ってるじゃない……私は何もしてない。」
「……いい加減にしなよ。」
光のない目をこちらに見つめながら、彼が取り出したのは、彼がいつも研究に使っているメスだった。
手を掴み、私の体にメスを突き刺す。
突然のことに、私は何も出来なかった。
「っ………笑えない冗談ね……」
絶望、怒りを通り越して、乾いた笑いが口からこぼれる。
信じていた相手に殺されるなんて……
「……ねぇ……アルカ……さいごくらい……話を聞いてくれない?」
アルカにもたれかかりながら、静かにつぶやく。傷口が…熱い。痛みはなく、ただただ熱かった。
「……」
「私ね、貴方のこと、信じてたのよ?だから救いに来た。」
その言葉にアルカは答えない。
……無視なんて酷いわ……さいごくらい……答えてくれてもいいのに……
すると突然、アルカが目を見開き、私のことを見つめる。目が覚めたのね
アルカ「っ……ぇ……? トウカ……?なんで……」
涙を零しながら、私に突き刺さったメスを抜く。
「……僕が……僕がやったの?! ねぇ…!」
「うるさい……聞こえてるわ……」
アルカが何かを言おうとしたその時、ふわっと甘い香りが漂う。
吐きそうになるほど、甘い香りが……
「あれぇ?アルカー?どうして泣いてるのぉ?……早く殺してよー?」
その声を聞いた瞬間、彼の表情は、恐怖で歪む。
涙が溢れ、頬に汗が伝う。
浅い呼吸を繰り返し、手に持っているメスは震えている。
「……落ち着いて……大丈夫……大丈夫よ。」
「僕は……僕はっ……」
「あれぇ? 殺せないの? アルカは私の味方だよねぇ?」
「うん……僕は……君をっ……アイシテ……」
「だよねー!だったらさ、殺してよ。貴方はココンや、アスカとは違うでしょ?」
「……っ……! 違う!僕は……2人とは違うっ! だから……っ……だからお願い……殺さないでっ…… 」
アルカは恐怖に顔を歪め、必死に叫ぶ。
ココン……?アスカ……?
あの2人は洗脳が解けた?
まさか……殺したの?2人を?
「殺さないよぉ〜 だって、私は貴方を愛してるから。貴方もそうでしょ? 」
「……トウカッ……僕はっ……」
「大丈夫よ……貴方は死なない。大丈夫だから、安心して……」
安心させるように笑いかける。
「っ……ごめん……ごめんなさいっ……」
これでいい……これでいいのよ……
ゆらりとアルカが立ち上がる。
「アイラ……」
「っ……え?」
アイラの方を見ると、アイラの腹部から、血が流れている、
アルカがやったの?
「貴方……私を裏切ったの?言ったじゃない! 愛してるって! 誓ったでしょう?! なのに……なんで!?」
震える声で叫ぶ……
必死に叫ぶ。
「……僕は……君のことが嫌い。大嫌いだよ。」
「……嘘つき……ウソツキッ! 私はっ……愛されたかっただけなの!愛されたかっただけなのっ……」
アイラの目からは涙が零れる。
この涙は、本当の涙だと思う。
偽物だとは思えなかった。
彼女は本気だ。本気でそう思っている。
「貴方だけ、ずるい……!貴方だって私と同じよ! 私と同じように、トウカを傷つけた!なのに、なんで私だけ……私だげ殺されないといけないの?!どうしてよ!?」
「……わかってるよ……僕は酷いことをしたよね………だから…」
そう言ってアルカは自身にナイフを突き刺す。
「……これで……満足でしょ?」
アイラ「……あははっ……あはははははははははっ!…本当に面白いわ! 」
アイラは立ち上がると、倒れているアルカに蹴りを入れる。何度も……何度も……
そうして、アイラは走り去っていった。
「待って……待ちなさいよ……っ!」
彼女を追いかけようとしても、体が思うように動かない……
「……っ……トウカ……」
「アルカっ……なんで……なんでこんなこと…」
「ごめん……ごめんなさい……僕、本当に酷いことしちゃった……」
「…………」
涙が零れる。
嫌だ……まだ伝えたいことが……あったのに……
「ごめんね……トウカ……」
嫌だ……なんで……なんで貴方が……
どうして貴方が死なないといけないの……?
アルカは何も言わず、優しく微笑む。
「っ…」
今まで言いたかったこと……
その言葉を言おうとした瞬間、彼は事切れた。
「……ぇ……アルカ?……アルカッ?嫌だ……嫌だよ……私を……1人にしないで……」
まだ……言えてないことがあるの……貴方に伝えないといけないことが……まだ……あるのに……
声が…震える…
「一人にしないで」?…馬鹿みたい…
「……愛してる………生きてる貴方に伝えたかったなぁ…………」
目の前がぼやける……何も見えない……
目の前の彼からは温度が失われて冷たくなっていくのに…
空っぽの私から溢れる涙は…暖かい。
私も……ここで死ぬのかなぁ……
そんなの嫌だ……あいつに復讐しないと……気がすまない……
追いかけないと……アイツを……追いかけて殺さないと……
立ち上がろうとしても……体が言うことを聞かない……
暗転