水『ん……』
ぶるっと身体を震わせ、目が覚める。
カーテンからは陽が差し込み、暖かく天気の良い日だという事が伺えた。
紫「…………」
水『寝坊助、』
どうやらいるまくんはまだ寝ている様だ。
こさめがいっつも先に起きるんだから。
水『いるまく〜ん、朝ですよ〜』
ベッドの下から声を掛けるが、反応は無い。
水『……ふんっ』
何度呼んでも起きないので、少し苛っと来てしまう。
可愛いこさめがこんなに話し掛けて上げてるんだよ?!
失礼極まりないな。
水『こうしてやるんだからな。』
ぼそっと呟き、いるまくんの腹の上に乗る。
其の儘手でぎゅうぎゅうと胸の辺りを押すと、
紫「…んぁ、何、、」
ゆっくりと目を開ける。
何じゃないよ。
起きてよ、御腹空いたよ。
無言で顔を見詰め、意志を伝えようとする。
紫「……あ〜、はいはい、飯ね。」
お、分かった様だ。
流石。
紫「じゃ、用意するから退いてな。」
そう言ってこさめの頬を撫でられたので大人しく降りてあげる。
水『先行ってるね。』
いるまくんが着替えをしている間にそう告げ、階段を下った。
紫「へい、どーぞ。」
水『やった!』
ことっとこさめの目の前に御飯が置かれる。
しかも今日は……
水『イカだぁぁぁ!!』
つい嬉しくなってぴょんぴょん跳ね回る。
紫「お〜こらこら、暴れるな。笑」
宥める様に言って、微笑ましそうに此方を眺めて来る。
水(……)
いるまくんは何を食べてるのだろうか。
口を動かしながら机の上を覗き見る。
紫「どしたん?」
後頭部を撫でながら質問された。
ちょっとくすぐったい。
……え、何あれ。
塊、、黄色、
赤い血見たいなのかかってる、
も、もしやッ!
水『共食い?!』
今迄出した事ない位の大声を張り上げる。
人間に黄色い部分あるっけ?!
分かんないや!
紫「おうおう何言ってんだか。」
困った様に笑ういるまくん。
違うのかな?
ていうかこさめ、いるまくんと同じ物食べた事ない気がするんだけど。
美味しいのかな?
紫「こさめ?__っておい!ええ、!吐き出せ!」
水『ん”ぇ”え”?!』
御皿の上に乗ってる物を食べてみると、勢い良く揺さぶられる。
え、やっぱり駄目な物食べてるの?!
紫「と、とりますちに連絡、」
しかも誰かに連絡し出した。
これ、ヤバい奴、?
緑「も〜、いるまちゃんは焦り過ぎ何だって。笑」
「別に問題はないよ。」
紫「はぁ……良かった…、」
水『…』
誰?
何なんだ、いるまくんと馴れ馴れしく会話しやがって。
緑「君がこさめちゃん?可愛いねぇ〜」
水『え?』
何、何でこさめを知ってるの?
もしかしているまくん恋人だったりする?
緑「写真より本物の方が可愛いね、毎日の様に見せ付けて来るもんねぇ。笑」
紫「黙れ。」
嗚呼、そーゆー事ね。
だから知ってるのか。
ちょっと安心。
さ、こさめはもう寝るとするかな……
そう思い、リビングのドアを潜ろうとした。
が、
紫「あ、こさめ約束忘れてね?」
水『んぇっ、』
自然と足が止まる。
だがそれも一瞬。
紫「おいこらッ!待て!」
水『やだもん!!』
逃げるが勝ち。
素早く階段を掛け上がり、寝室の前を横切る。
だが一枚上手だった。
緑「つ〜かまえた。」
突如家にやって来た謎の緑髪に抱き抱えられてしまう。
水『うぅう、』
紫「お、すちサンキュ。」
緑「いえいえ〜」
次はいるまくんの腕に拘束され、もう身動きが取れない状況となってしまった。
紫「さてさて、」
「じゃ、やりましょうか?笑」
水『ぅううう、』
廊下には唯断末魔とも言えぬ呻き声が響いた。
水『ん”に”ゃッ、』
紫「ほれ、こっち向け。」
そんな事言われたって、
緑「いるまちゃん、シャワー冷たいんじゃないの?」
紫「嫌、普通に普通の温度やし。」
緑「普通って人によって違うでしょ?笑」
水『はぁぁ、』
約束。
最低、一週間に一回は御風呂に入る事だ。
何故そんな頻度が少ないかと言うと、まぁ、こさめがシャワー嫌いだからである。
緑「今度、うちのみことちゃんにも会わせてあげたいね。」
紫「あー、そだな。」
……てか此奴何時まで居るの?!
いい加減うざいんだけど!
いるまくんとこさめの時間邪魔しないでよ〜!
紫「ほれ、これがみこと。分かる?」
身体を綺麗に乾かしながら、写真を見せられる。
ふーん、結構可愛い子じゃん。
馬鹿っぽいけど。
緑「良いでしょ、いつか遊ぼうね。」
水『うん。』
ちょっと、楽しそう。
緑「あ、ほら何か笑ってる気がする。」
紫「ガチ?…眠そうやな。」
くぁあ、と大きく口を開き、欠伸を絞り出す。
次第に身体も少し重い様な気がして来た。
水『もう寝るね、』
今日ははしゃぎ過ぎてしまった。
御昼寝でもしとこうかな。
すると、
紫「じゃあこさめ此処で寝て良いぞ。」
と言って、自分の膝を軽く叩く。
お、やったね。
久しぶりじゃん。
そう思って、いるまくんの上で丸くなった。
緑「凄い、でれっでれなんだね。」
洗濯物を畳んでいると、すちが頬杖をつきながら話しかけて来た。
紫「まぁな、長い間一緒居るし。」
こさめが家に来てから早五年程。
最早熟年夫婦みたいになってしまっている。
水「…んみゃ、」
あまりに気持ち良さそうに寝ているのでどうしても甘やかしたくなってしまうのだ。
結局撫でるんだけどな。
緑「良いねぇ。」
にこにこしてそれを見ているすちは差し詰め近所の叔母さんの様。
紫「すちも家戻ったらいっぱい構ってやれ。」
「寂し過ぎて死ぬぞ。」
緑「そんな縁起悪い事言わないでよ!」
「そもそも兎じゃないんだし、笑」
ま、そりゃそうだ。
でも誰だって寂しい事はあるんだし。
てか俺が此奴を引き取ったのもそれが一理あったりする。
緑「んんよし。じゃ帰るとしますかねぇ。」
紫「お〜、おけ。」
ソファから立ち上がったすちを玄関迄見送り、部屋に戻るとテレビが付いていた。
紫「何、お前リモコン押せるん?笑」
目が覚めたのかクッションの上にちょこんと座り、理解出来る筈のない報道番組を見ていた。
紫「ま、良いや、俺もちょい寝る。」
ごろっとホットカーペットに寝転がり、目を閉じると胸に温かい体温を感じる。
紫「……こさめもかい、寝坊助が。」
しょうがないな、と笑うと、少し不満そうに鳴く。
ぎゅっとぬいぐるみの様に抱き締め、夕方になるまで眠りにつく事にした。
コメント
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更新ありがとうございます! おぉまさかの猫なんですねっ!最初は普通におぉ夫婦と思ってたけど、、シャワーでさっしちゃいました笑 てかエピソードすっごい尊いですね…紫水ってあんま見ないからめちゃ新鮮です!