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最近になってやっと自覚を持つようになった。
僕は彼女に恋をしていると。そして、彼女も 同じように僕に恋をしているのでは無いのかと。
僕はこれまで恋をしたことなんてない。経験は無いが、何となくで解る。
夢のような場面が終わってしまってから、何か物足りない。これが恋なのか。感心し乍改めて感じる。明日は月曜日。学校へ行く意味が出来た。 だから、何となく楽しみだ。彼女の事を思い浮かべながら帰った。
次の日。彼女とは違う組だが、部活が同じだ。授業が終わり、 心臓の高鳴りを感じながら音楽室へ向かう。彼女は、まだ来てない。興奮の余り、早く来すぎてしまったのかもしれない。フルートの練習をし乍彼女を待つ。僕の演奏は、彼女と比べ物にならない程下手だ。けれども担任の先生は「よく出来ている。」と言われる。そんなこともあったな、と想い乍フルートを吹く。
ガタッ
何かの物音がした。フルートを吹くのを辞めて、後ろを振り返ると、彼女がいた。驚いた様に此方を見つめている。
「僕の演奏に惹かれたかい?」
冗談で言った言葉。それに彼女は、
「ええ…まぁね、貴方の演奏なんて聞いたことがないもの。」
と言った。僕は平静を装い乍、こう言う。
「嗚呼、君の前では演奏を余りしていないからね。」
「ずっと私に言い寄ってくる変な奴だと思っていたわ。」
「流石に酷すぎやしないかい?」
「事実だもの。否定出来ないでしょ? 」
「まぁ…その通りだね。否定出来ない。」
「こんなにも演奏が上手かっただなんて、知りもしなかったわ。ねぇ、ピアノの準備まであと少し掛かるから、まだ弾いててくれないかしら?」
「そんな事ピアノの準備をした後でも良いじゃないか。」
「ピアノを準備したら、貴方が演奏を聴きたいと言うでしょう?」
「全く、余り長く演奏する事は得意じゃないんだけどな…君の為ならしょうが無い。」
彼女は嬉しそうに言った。
「じゃあ、準備を成るべく早く済ませるから、その間演奏してて。」
ピアノの準備をする彼女と、
フルートを演奏する僕。
2人の間に、綺麗な音色が響く。暫くした後。
「準備し終わったわ。演奏をしてくれてありがとう。」
「じゃあ、君の演奏も聴かせておくれよ。」
「昨日も聴いたでしょう?」
「君の演奏は何回聴いても飽きない。
だからいいのだよ。」
「完璧じゃない演奏なんて、聴いても詰まらないの間違えじゃないのかしら?」
「完璧じゃなくたって、君の弾くピアノの音色は綺麗だよ。」
「だったら貴方の演奏だって綺麗よ。 狂いの無いフルートの演奏なんて、貴方にしか出来ないわよ。」
「じゃあ、2人で今度の音楽会の曲を弾こうよ。練習にもなるし、丁度いいだろ?」
「ええ、まぁそうね。」
「それじゃ決まりだ。」