水乃ことみ、彼女は前世戦争国家我々国の暗殺部隊副隊長 〝 コトミ 〟 。
味方最大の脅威、ゾムに並ぶ戦力に回転の早い頭脳を利用し幹部まで上り詰めた恐ろしい女だ。
我々国は今から約1000年以上前に存在した国であり、その1000年の間に彼女は何度生まれ変わったか数え切れない程だ。
勿論、生まれ変わる度身体に叩きつけてきた体術や知識達も忘れ去る。
だが忘れるのはそれだけではなく。
shp「 あ ~ … コトミさん今世は何時記憶取り戻すんやろなぁ 。 」
前世我々国幹部、遠距離部隊副隊長ショッピこと今世我々高校一年生塩戸翔はため息をついてスマホを弄っていた指を止めた。
彼も転生するのは何度目だろうか、我々国の建国から今まで約2000年の間に死んでは記憶を持ち転生を繰り返した。だがそれは彼だけではなく
rbr「 そう言えば今世でゾムを見てないのはなんでや ? 」
前世我々国幹部、情報処理部隊隊長ロボロこと今世我々高校二年生天乃呂戊太。彼もまた記憶を失わずに転生した一人である。
shp「 あ ‐ 、 確かに 。 まぁそのうち転校でもしてくるでしょ 。 今まで高校のどっかで突然会う的な事あったやん 」
何故だろうか、彼等は2000年間転生を繰り返してきて一度も出会わなかったことはなく、必ず全員が仲間になる。
そして、コトミだけが記憶を失う。
rbr 「 … まぁせやな 。 どっかしらで会うし心配は不要か 。 」
彼等は信じていた。何時か絶対、何処かで仲間達と出会えることを。
記憶が無ければ新しく思い出を作っていけばいい、思い出させればいい。何十年、何百年、何千年と共に歩んできた、この地に行き続けてきた。
それは世界中の誰よりも深い絆で結ばれているだろう。
shp「 … まだ 、 ルイーサの事を恨んでますか 」
rbr「 なんでそう思うん ? 」
ロボロは顔に天と書かれた雑面を付けていて、常に表情が読み取れない。それは昔からも変わらない。だが、何千年と一緒に居たショッピには分かった。
shp「 ずっと隠しきれてないんですよ 、 その殺意 。 」
shp「 俺は我々国が滅んだあの時以降ロボロさんの心の底から笑った顔を見ていません 。 」
ロボロの肩が分かりやすくピクリと動く。図星だったのだろう、彼の雑面の裏からはほんの少しの殺意が漏れ出していた。
rbr「 … や ~~ 、 まさかショッピくんに気づかれるとはな 。 チーノにでも聞いたんか ? 」
shp「 俺達何年一緒にいると思ってんすか 、 全員気づいてますよ 。 」
rbr「 まじかぁ 。 」
彼は我々国の幹部の中でも特に相手との関係や態度を気にするタイプだった。流石情報処理部隊隊長と言ったところか、メンバー曰く計画性が有り体調を崩すことが少なく頼りがいのある男だとか。
だからこそ、誰よりも大事に思っていた仲間達を、信じていた仲間の一人 〝 ルイーサ 〟 に全て奪われ国までもが滅んだ事を1000年経った今でも恨んでいる。
rbr「 彼奴だけやねん…2000年間転生し続けてんのに居らんのはルイーサだけやねん。 」
rbr「 俺が…俺が一刻も早く見つけだして殺す。」
先程までの ほわり とした雰囲気は何処へ行ったのやら、今では雑面越しでもわかってしまう程の殺気に覆われていて、彼が仕事をしていた生徒会室の外に居た生徒達もゾクリと顔を青ざめた。
shp「 … 落ち着いてください。外にいる生徒達にも気づかれます。 」
ロボロの殺気を沈めようと、彼の方に手を寄せるショッピ。だがその手はいとも簡単に振りほどかれてしまった。
rbr「 何やねんお前。何時もさも自分はルイーサに何も思ってませんみたいな態度取っとるよな? 」
rbr「 知ってんねんぞ、お前もルイーサ探してることくらい。」
rbr「 誰が落ち着いてられるか、どんなに楽しい時でも思い出してまうんや、あのルイーサの甲高い笑い声をな。更に1000年前のあのゾムとコトミの顔を思い出したら余計や。 」
ロボロは珍しく大声を出してそう告げた。息を荒らげて言うロボロの瞳はぐるぐるとしていてハイライトは無い。そして殺気も増えて行くばかり。
shp「 … ロボロさ … 」
そんな彼に自身の気持ちを伝えようとショッピが声を掛ける。その時同時に生徒会室の一つしかない入口から コンコンッ というノック音が鳴った。
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