電話には、全く応答がない。紗羽は何をしようとしてる?もう会えないって…?まさか…
最悪のことを考えてしまう。そうであって欲しくない。絶対に生きてて欲しい。
紗羽のこと虐める奴がいても俺が守るから。何があっても。
だから、だから…生きてくれ、紗羽。
ずっと応答が無かった電話が繋がった。
「ッ!!紗羽!?」
《……》
何も聞こえない。ノイズのような音が聞こえてくるだけで…
「紗羽?紗羽聞こえる!?」
《蓮兔…くん……?》
「紗羽!!!!」
紗羽の声だ。紗羽が、まだいる。それだけで、跳ね上がるぐらい嬉しかった。
「紗羽今どこにいる!?」
走りながら話しているから、声が途切れ途切れになっているかもしれない。そんなこと今はどうでもいい。
今はただ……!!紗羽に会えればそれで…
《MKビル…の屋上にいるよ、》
「紗羽、ちょっと待ってて欲しい!!」
そこで電話は切った。簡単なストレッチをしてから、
「50m走6秒舐めんなよ〜!!」
できるだけ速く、ただ走った。紗羽のことを考えて。
俺は紗羽の笑顔が好きだ。紗羽のその弾ける笑顔は誰よりも輝いてる。俺は紗羽といる時が最近1番楽しいよ。
だから…間に合ってくれ…!!
MKビルに着いた時には息切れしていて、呼吸もまともに出来なかった。それでも長い階段を登った。紗羽に会うために。
「紗羽!!!!」
屋上のドアを思い切り開けて、辺りを見回す。
鉄製の手すりの奥に、紗羽が立っていた。
「紗羽!!危ないから!!」
手すりに向かって走る。紗羽は今にも落ちそうな場所に立っている。
どうすればいいんだろう、このままじゃ紗羽が死…?嫌だ!!そんなの…!!
…違う。俺が悪いんだ。ずっと紗羽が溜め込んでたものに気付けなかった。もっと早く、分かっていたら。俺が頼りないから…。
「蓮兔くん、来てくれたんだあ」
「紗羽もっとこっちに!!落ちるから!!」
「長いメッセージ送っちゃってごめんね」
「謝らなくていいから!!お願いだからこっちに……」
紗羽に手を差し伸べるが紗羽はこちらを見ようともしない。紗羽が遠くに行ってしまいそうで怖い。嫌だ。行かないで欲しい。
もう二度と会えなくなるのは、嫌だから。
「鈍い蓮兔くんにも私が危ないことしようとしてるのは分かった?こんな時まで鈍感だったら困っちゃうよ」
「紗羽とにかく危ないから早く」
「蓮兔くんはさ…」
紗羽がやっとこっちを向いた。冷たい風が吹いて、紗羽の髪が靡く。
「私に生きて欲しいの?」
「…そうじゃなきゃ来てないよ」
「ふふっ、そっかぁ……私も、死にたくないなあ。」
え…?じゃあ何で自殺しようと……?
「死にたくないなら何で…」
「死にたいよ、ずっと。私お母さんに虐待されてた時から、死にたいって思って生きてきた 」
紗羽と俺は生きてる世界が違う。分かってたんだそんなことは。俺はこんなにも幸せに生きていて、紗羽はこの14年間の人生の中でずっと苦しんで生きてきた。
紗羽の気持ちなんか、分かるわけない。理解してる気になって紗羽に勝手に同情してただけ。ほんと俺最悪だな。
「でも私…蓮兔くんに出会ってから、死にたくないって思えたの。ほんとはね、まだ生きてたいよ。これからも蓮兔くんとくだらない話して大笑いしたい。今まであんなことがあって、相談できたの蓮兔くんだけだよ。 」
「紗、羽」
紗羽が泣いてた。俺、変かもしれない。泣いてる紗羽が綺麗に感じた。 涙が光って見えた。
俺、今本当に嬉しいんだ。誰かにこんなにも信用されることが、俺のおかげって言って貰えることが。
「蓮兔くん、私本当は死にたくないよぉ…」
「…紗羽」
手すりから身を出し、紗羽の細い腕を取る。自分の方に引き寄せて、紗羽を優しく包み込んだ。
「!? 蓮兔……くん…?」
紗羽は顔をぐしゃぐしゃにしながら俺を見る。 紗羽の苦労を分かったフリしてごめん。俺何にも分かってなかったんだよ。
「紗羽、もう大丈夫」
「大丈夫って何がぁ…?」
「俺がいるから!!ずっと、ずっと。紗羽のこと絶対見捨てたりしない。紗羽を危険に晒す奴がいても、虐めてくる奴がいても、俺が紗羽を守るから」
「蓮兔く、」
「紗羽泣きすぎ」
「うるさぃ……」
紗羽の顔を伝う涙を、親指で拭う。紗羽って意外と泣き虫なんだ。
紗羽の顔にある俺の手に紗羽の手が重なる。
「紗羽」
「なに…?」
「今言うの間違ってるかもだけど
俺、紗羽が好きだよ。めちゃくちゃ 」
「ぇ……?」
ずっと言いたかったけど言えなかったことが、すんなりと言えた。この気持ちは好き以外の何物でもないんだろう。
やっと言えた、
紗羽が、好きだって______
「なん、で、今……
今涙腺壊れてるんだからやめてよ、っ」
「ごめんごめん、もう今しかないって思ってさ。 それだけ。気持ち伝えたくて」
「ばか、私もだよ」
「え」
「すきだってば!!てか分かるでしょ!?『蓮兔くんだけだよ』とか言ってんだから!!」
ぇ…?えぇ……??嘘、だろ……????
「えちょっと、?蓮兔くん!?!? 」
あ、、意識飛んだ……
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次回最終話です😢
え、え、、、??もう終わり?