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想いが通じ合ったら、身体で愛を確かめる。それはごく自然な流れだった。
唾液が絡み合うほど濃厚なキスを交わした後、朝陽は熱情を瞳に宿した隼士に抱き締められ、そのままベッドへと沈んだ。
言葉を交わす余裕もなく、二人は性急に服を脱がしあう。その様は、まるで性行為を覚えたての若者のようだった。
互いが生まれたての姿になったところで、即座にキスの嵐が降ってくる。耳の裏、首筋、そして胸へと無数の赤がどんどん散らされ、朝陽は嬉しさに頬を緩ませた。
身体が少しずつ、隼士のものになっていくみたいだ。
「なぁ、前に俺の部屋で成り行き任せのセックスした時のこと、覚えてるか?」
「そりゃ……忘れられないよ」
自慰をしてたら見つかって、そのまま衝動的に抱かれた。あの時の羞恥と驚愕は、忘れようにも不可能だ。
「あの日、ポッカリと穴が開いてた俺の心が物凄く満たされたんだ。記憶をなくしてからずっと足らないと思っていたものが埋まったような、そんな感覚だ。なのに朝陽に全部忘れようって言われて、正直不満が残った」
ただ、それでも朝陽との関係を崩してしまうよりはいいと、無理矢理自分を納得させていたのだと当時を語る。
「恋人が見つからなくていいと考えた時も、関係が変わることが嫌だと思う裏で、朝陽に恋人が出来ることを酷く怖がってた」
偏食の友人という重荷が消えれば、完全に自由となる。そうなれば社交性の高い朝陽は、すぐに誰かの物になってしまうだろうと予想し、恐怖を感じていたのだと言う。
「そんな……んっ、俺に恋人だなんて……」
話しながら芯を持った胸の蕾を執拗に舌で転がされ、声を漏らしそうになったが一先ず耐えて話の続きに耳を傾ける。
「それだけ俺が朝陽中心で動いていたということだ。だから正直、光太さんが鎌をかけてくれて助かった」
光太のおかげで、見つからない恋人よりも朝陽を選ぶ決心を着けることができたから。先程、光太と対峙していた時に抱いていた心境を、朝陽の胸を弄びながら告白する。
「それなら俺だって、自分じゃ駄目だって言いながら……っ、隼士に恋人が出来たら嫌だって思った。だから静香さんの存在を知った時、彼女が恋人じゃないって……ぁんっ、分かっていても、内心ヒヤヒヤだっ……った」
二人して似たようなことを考えていただなんて、何だか笑えてしまう。
「あとさ、隼士の部屋でシた時、実は記憶が戻ったんじゃないかって疑ってたんだぜ? だって勢いは凄かったけど、どこか手慣れてたし、気持ちも……よかったから……」
今となっては全て隼士の中に眠る本能が成せる技だと分かったが、当時は本当に判断が付かなかった。
「あの時は俺自身も気持ちよかったことしか覚えてないぐらい、一心不乱だったな」
「記憶がなくても本能だけで動くって、何か凄いのな」
自分は記憶を失ったことがないから実感はできないが、記憶と本能は作りが違うのだろうか。考えていると、不意に真剣な面持ちの隼士に、意外な質問をぶつけられた。
「なぁ朝陽、一つ教えて欲しいんだが、昔の俺はどんなセックスをしてた?」
「え、何でそんなこと………」
「いや、単純に気になってな」
他意はないと言われ、それならと昔を思い出してみる。
「そうだなぁ、昔の隼士は……まるで野獣みたいだった」
一番に出てきた印象が、それだった。
「野獣? 何だ、昔の俺は理性の欠片もないセックスをしてたのか?」
「違う違う。何て言うかな……雰囲気がそんな感じだったんだよ。まるで獲物を捕らえようとする肉食獣みたいな……」
セックス中の隼士はまさに獣だった。
例え周りで何かが起こっても、決して気を逸らさない。獲物を真っ直ぐに見つめ、驚くほどの慎重さで間合いを測りながら、こちらの退路をジワリジワリと奪っていく。その圧倒的な重圧感は並大抵のものではなく、それこそ一瞬の隙を見せようものなら、あっという間に全てを食らい尽くされてしまう。
もうそうなったら、朝陽は生け贄の羊のごとく啼き散らすしかない。全身の性感帯を蹂躙されながら与えられる快楽に、自分がどうなってしまうのかという不安を常に抱きながら延々と嬌声を上げ続けるのだ。
けれど、不思議とその不安すらいつしか極上の悦びに変わっている。
「とにかく昔の隼士のセックスは勢いと迫力が凄くて、いつも俺は自分が狂ったんじゃないかって勘違いするぐらい乱されてる……って、何恥ずかしいこと言わせんだよっ」
いくらそういう状況下にいるとはいえ、とんでもなくはしたないことを言っていたことに気づき、朝陽は顔を真っ赤にしながら抗議する。
が、それに対して、何故か隼士はムッとしたような難しい顔を見せた。
「隼士……?」
「何か、相手は自分のはずなのに、話を聞いてると酷く苛立つ……。くそっ、これは是が非でも勝たなければな」
「へ? 勝つって誰に?」
「勿論、以前の自分にだ」
強く宣言すると、隼士は驚く朝陽をそのままに何故かベッドから離れた。
向かった先は、隼士の部屋から持ち帰った思い出の品が入った箱の下。何をするのかと思えば、中から青色の箱を取り出し、再びこちらに戻ってきた。
「あ、それ……」
「さっき写真を見ていた時に見つけた。これは多分、昔の俺が用意していたものだろう?」
手の中にある五十センチ大の箱の蓋を取り、中からローションの入ったプラスティック容器を出す。
そう、その箱はセックスの時に使う道具が入れられた道具箱だった。
行為は野性的だが普段は几帳面な隼士は、日頃からきちんと道具を揃えておきたい男で、いつも何かしらを買ってきては箱の中に入れていた。その姿を見ていた朝陽は、この箱だけは見つかってはいけないとも持ち帰ったものの、一人では使う機会が全くなかったため開けてすらなかった。どうやらそれを、気づかないうちに見つけていたらしい。
「昔の俺が用意した物を使うのは少々癪だが、今日だけは使わせて貰うことにしよう」
だが、明日には必ず全て新しい物に買い直す、と変な意気込みを見せながらローションの蓋を開けている。そんな隼士を見ながら「昔の自分と戦っても意味ないだろ」と溜息を吐いた瞬間、突然足を掴まれ大きく広げた状態でベッドに沈められた。
ギシッ、と安物のベッドが悲鳴を上げる。
「うわっ、ちょっ、ビックリすんだろ?」
「悪いな、朝陽を抱けると思うと気持ちが逸ってどうしようもなくなる」
箱を横に起き、蓋を開けたローションを惜しみなく手に絡ませると、隼士は徐に朝陽の後孔へと指を進めてきた。
しかも、唐突にきた刺激はそれだけではなく、緩く震える朝陽の性器もまた隼士の舌と口腔による愛撫が始まる。
指と口で同時に前後を攻められる快楽に、声なんて抑えられなかった。
「んっ……! あぁっ、ん、んぅ……っンッ」
やはり、記憶がなくなっても隼士は野獣だ。
朝陽の肉芯を口いっぱい含み、たっぷりの唾液と舌で愛撫する姿は、飢えたライオンが肉にしゃぶり付く姿にしか見えない。
「やっ、ぁん、強、いっ……!」
頭を上下に頭を動かしながら舌で一番弱い雁首や筋裏を揉まれ、ジュルジュルと続け様に吸われる。すると静かだった熱が一気に目覚める。
「あぁ! ゃあっ! んう、ぅンン……っ!」
それだけでも脳が蕩けそうだというのに、ローションまみれの指が後孔を巧みに解しながらどんどん奥へと侵入していく感覚がさらに朝陽の官能を擽った。
記憶をなくしてから二回目だというのに、目指す場所へ向かおうとする動きに寸分の狂いもない。
もしも隼士の指に意思があり、言葉を発することができるなら絶対に今、「朝陽が気持ちよくなれる場所で、知らないところなんて一つもない」と豪語していることだろう。
「あっあ、あぁっ」
高校卒業後に付き合い始めてからずっと隼士としかセックスをしてこなかった朝陽は、既に後ろだけでも絶頂に達することができるようになってしまっている。こんな快楽に脆弱な身体に両方同時の愛撫なんて、すぐにイッてしまえと言われているようなものだ。
我慢なんてできない。
「あっ……やっぁ……隼、イッちゃ……」
「ああ、一度出しておいた方が楽だろう」
いつでも好きな時に達してもいい。肉芯を咥えながら言われると、その口の動きすら刺激になって射精を促す。
「や、あ、あ、あっ、ぁ、ああぁーーーーっ」
腰と性器が連動した痙攣をみせながらビクンと跳ねる。
その瞬間、生理的な射精感とともに中心から熱い物が吹き上がるのが分かった。
「あぁ……ぁ……」
喉の奥から嬌声の残りが弱々しく漏れる。
ゆったりと頂から降りる感覚に浸りながら、朝陽は肺から長い息を吐き出した。
男なら誰でも好むこの感覚を、朝陽も当然のごとく好んでいる。だが、それよりも強い快楽があることを知っている身体は、自然と次を要求した。
「隼士、もっと……もっと強いの欲し……」
今、朝陽の秘奥は隼士の骨張った指によってドロドロに解されている。二本の指で内壁をぐるりと掻き回されたり、バラバラとした動きで前立腺を刺激されたりと、絶え間ない刺激を与えられている。
でも、これじゃ足りない。
「どうした? 何が欲しいんだ、朝陽」
「隼士の……」
「俺の?」
ここまで来れば何が欲しいかなんて火を見るよりも明らかなのに、隼士は分かっていて知らない振りをする。
「も……願……っ……」
「はぁ……」
やにわに耳元で、わざとらしい溜息を吐かれる。
朝陽は覚えず自分が何か悪いことでもしてしまったのかと不安になり、隼士を見遣った。
絡まった視線が、残念そうに曇ってる。
「本当に昔の俺が羨ましい。こんなにもエッチな身体の朝陽を独り占めしてただなんて」
「え、そ……っ、な……俺、エッチじゃ……」
「エッチじゃない? じゃあ、どうして朝陽のココはこんなにも物欲しそうに、涎を垂らしているんだ?」
わざと聞こえるように指を大きく動かし、固く閉じている入口を広げては卑猥な音を響かせる。
当然動きが激しくなれば刺激も強くなって、瞬く間に反論を奪われた。
「あっ、ぁ……やっ……広げな……っ……で」
「ほら、もう指だけじゃなく、掌まで余すところなく濡れてる……。分かるか? これ全部、朝陽の中から漏れ出たものだぞ。いくらローションの力を借りてるからとはいえ、ここまでグチャグチャだと、もう本当の女の子みたいだな」
低く艶のある声が耳元を撫でると同時に、吐息が官能的に皮膚を擽る。それだけでも電流が流されたかのごとく背筋が痺れるというのに、隼士はそのまま朝陽の耳朶を唾液まみれになるほど舐め回してきた。
「ひ、ゃ……あ、んっ……」
秘奥を指で混ぜる音と、舌先で耳の中までを舐められる音とが重なって、もうどちらがどちらの音なのか分からない。
「やっ、ちが……俺、女の子なんかじゃ……」
「ああ、そうだな……女性と比べたら朝陽に失礼だ。朝陽は立派な男で、なおかつ女以上に綺麗で淫らな……唯一無二の存在だ」
朝陽以上の人間なんて、この世にいない。そう隼士は言い切る。
「だから例え相手が自分だとしても、絶対に渡さない。朝陽は俺のだ……」
「お、れ……隼士の……」
絶え間なく与えられる刺激に、理性がどんどん奪われていく。
頭も翳みがかかったかのように思考が鈍くなって、何を言われているのかが分からなくなった。
ただ、それでも朝陽の身体は快楽に従順で、先程精を吐き出したばかりの肉芯は隼士の愛撫に素直な反応を見せ始めた。
「そう、朝陽は俺のものだから……朝陽が昔の俺を忘れるまで、今の俺が極上の快楽を刻み続けてやる」
決意のこもった宣言が耳を通り抜けると同時に、朝陽の中から指が引き抜かれる。
続けて両膝が大きく割られ、その中心に隼士が自身の腰を近づけた。
「いくぞ」
凶暴なまでにそそり立った隼士の雄芯が見えたのは、ほんの一瞬だった。
「ひっ、あ、ぁあああ!」
後孔の入口に宛がわれた雄の先が、あたかも本当に記憶を打ち消すかのような衝撃とともに朝陽を貫く。
ほんの一秒もかからず最奥までを蹂躙する圧迫感に、思わず意識を飛ばしそうになった。吸った息を吐き出すことができない。
だが、そんな苦しみも僅かで消え去った。
「っあ、ぁん、は、っ……ふぅん……っ、ん」
自分でも己の発する声に、喜々の色が混ざっているのが分かる。
ああ、心と身体が満たされていく。
そうだ、自分はこの全てを焼き尽くすような熱と支配感が欲しかったのだ。
勿論、真綿に包まれるような優しいセックスも好きだが、今はいつ心臓が止まるか分からないぐらい欲に塗れた衝動を求めている。
「もっと……ぁっ、ん、欲し……」
「ああ、俺でよければいくらだってやる」
願いに応じて腰の動きが一層激しくなると、朝陽は身体を大きく揺さぶられながらも入口をグッと締めつけ、猛獣の追撃を必死に銜え込んだ。
気持ちよすぎて全身に鳥肌が立つ。
腕にも足にも力が入らなくなってきた。
「朝陽、朝陽っ」
極太の杭が腹の中へと打ち込まれる度に香る隼士の汗の匂いに、なけなしの理性がどんどん砕かれていく。
もう何も考えられない。何も考えたくない。
全ての思考を放棄した朝陽はその瞬間、ただの動物と成り下がって艶やかな嬌声を上げ続けた。
「ひぅっ、あっ、あん、いいっ! すごく、いいっ!」
「朝……陽っ、う……っ……」
不意に朝陽の奥で隼士の雄がうねる。
来る、と本能で予感を感じ取った朝陽は、ゴクリと喉を鳴らした。
「くっ!」
僅かもしない間に、内側へと煮えたぎった飴のごとく灼熱が流れ込んでくる。
体感したことのないまでの熱さに自然と喉が引きつった。しかし、すぐに欲に従順な身体が快楽を拾い上げて、朝陽の下腹部を震わせる。
「ひっ、や、っぁ、あああぁぁっ!」
腰が地上にあげられた魚のように、ビクンと大きく跳ねた。続けて衝撃が爪先から脳まで一直線に電撃に等しい駆け上がり――――朝陽の肉芯から雫が腹上へと爆ぜる。
それはもう言葉にすら表せないほど強烈な快感だった。
「あ……ん、は、あ……ぁ……」
一度目よりも深く長い絶頂に、はしたない声が漏れ続ける。それでも隼士は愛おしそうに抱き締めてくれた。
「朝陽……朝陽……愛してる……」
ゆっくりと、朝陽の身体に負担がかからないよう自身の雄を引き抜きながら、キスの嵐を降らしてくる。恍惚に浸りながら朝陽がそれを受け入れていると、何故か身体を起こされ、背後から抱きかかえられた。
いつもの隼士なら脱力する朝陽の隣に横たわり、共にシーツの上の住人になって頬を撫でてくれるのに、今日は違う。
「は、やと……?」
戸惑いながら隼士の顔を覗きこむと、すぐに優しい笑みが返ってきた。
「ど、したの? 隼士、いつもと違うんだね、珍し……」
予想外の行動を取った隼士を不思議に思い、つい聞いてしまう。が、言葉が終わる直前に朝陽はアッと息を呑んだ。
「ご、ごめん、今のなしっ」
セックスの気持ちよさに浸りすぎて、記憶障害のことを完全に失念していた。
以前の自分を超えたいと言っている隼士に昔の話をしてしまうなんて、自分はなんて配慮の足りないのだ。朝陽は情事の後で気怠い身体に鞭を打ち、慌てて隼士の方を向こうとする。けれど、急に抱き締める腕の力が強くなって全く動けなかった。
ああ、まずい。これは多分、いや、確実に怒ってる。
全身に冷や汗が流れた。
「隼士……あの……」
「朝陽はまだ……昔の俺の方がいいんだな」
「や、違う、これは……」
「そうか……なら、もっと頑張るしかないな……」
「へ? 頑張るって、何を?」
「言っただろう――――」
恨めしさが宿る言葉の途中で、耳朶をベロリと舐られる。
「ひっ」
不意の刺激に驚かされ、双肩が竦んだ。
「朝陽が昔の俺を忘れられるまで、快楽を刻みつけるって」
何よりも愛おしい隼士の言葉をこれほどまで恐ろしく感じたのは、今日が初めてだった。
背後にいるのは誰よりも愛している人間のはずなのに、今すぐ腕を押し退けて逃げ出したいと思ってしまっている自分がいる。
「嘘……だよな、隼士。俺、今日は無理……」
もう、立て続けに二度も出している状況だ。少し休めば何とかなるかもしれないが、正直連続は無理だし、何よりすぐには勃たない。
「大丈夫、夜はまだ長いんだし、それに……」
しかし、耳元で囁かれた声から諦めは微塵も感じられない。
隼士はクククッと笑いながら片腕だけ抱擁を解き、今まで放置していた道具箱に手を伸ばす。そして器用に中を漁ると、中からとんでもないものを取り出した。
「勃たないって言うなら、俺がちゃんと勃たせてやるぞ」
だから安心しろと言いながら、隼士が道具箱から取り出したものを朝陽の目の前へと持ってくる。派手な色をした筒状の物体を直視した途端、背筋が一秒で凍った。
「なぁ、それって……男が一人でスル時に使うやつだよな……?」
引き攣った頬が、痙攣を始める。
隼士が取り出したのは、何と男が自慰をする時に使用するアダルトグッズだった。
朝陽自身使ったことはないが、いい歳の男なら誰でも知っている。そう、ローションが塗られた筒状の器の中に自身のブツを入れ、適度な圧迫を加えながら扱くと大層気持ちよくなれるというアレだ。
「何で箱ん中にオナホが入ってんの? ソレ、相手がいるなら必要ないだろっ」
卑俗な話にはなるが、隼士には挿入する場所があるのだから必要ないし、朝陽に至っては隼士がいればそんな物は必要としない。ずっと見ていると目が痛くなりそうな配色の包装を、朝陽は半目で見つめながら話す。
「さぁな。昔の俺が買った物だから、何に使おうとしたかと聞かれても答えられない。だが、今の俺なら有効活用できる」
「……まさかと思うけど、それ……俺に使うとか言わないよな?」
「さすが俺の朝陽。何でもお見通しだな」
コレで前を扱いて、後ろを俺ので攻めれば、きっとあっという間だ。勿論、朝陽の大好きなローションもたっぷり使ってやる。喜々とした口振りで隼士は語る。
絶望が目の前を通り過ぎていったような気がした。
この状況下で宣言通りのことをされたら、明日は確実にベッドから離れられなくなるだろう。
隼士と一つになれるのは幸せだが、セックスのしすぎで動けなくなるなんて、三十路直前の人間としては情けなさ過ぎる。故に、何とかして阻止したいと策を練るも、朝陽の目の前ではそれ知ったことかと、筒の包装がどんどん破かれていく。
背後からは、上機嫌な鼻歌まで聞こえた。
ああ――――これは、無理かもしれない。隼士の様子から説得が無意味だと悟った朝陽の頭の中で、試合終了のゴングが鳴り響いた。
「明日、何て言って仕事休もう……」
普段は吐くだけで終わる溜息が、今日は声になって漏れた。
「愛してるよ、朝陽」
「うん、俺も愛してる。だから……お手柔らかに頼むよ、ホント……」
身体を繋いでいる最中はこのまま心臓が止まってもいいと思ったが、やはり正式にパートナーとなった今は一秒でも長く二人でいたい。まだやりたいことは、たくさんあるのだから。
とりあえず今は隼士の好きなようにさせて、なるべく早く切り上げて貰えるようにしよう。包装が全て剥がされた件の筒が、朝陽の性器に装着される様を見つめながら決心する。
しかし――――その時の朝陽はまだ知る由もなかった。
このセックスの結末が、度を超えた快楽により、生まれて初めて意識を飛ばすという体験に繋がったことを。そして、言葉どおり後々までくっきりと記憶に刻まれるものとなったことを。