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エルリット13歳です。
魔女の家に住み始めて3年が経ちました。
問題なく本を読める程度に文字は覚えました。
身体強化も回避も慣れました。
今では四つの人工精霊を相手に30分はもちます。
なので、反撃したいと思います。
しかし対策は考えないといけません。
なぜなら――――
◇ ◇ ◇ ◇
「あー……避け続けてんのを見るのも飽きたわねぇ」
クソッ、こっちは必死だってのに……。
(これって別に反撃してもいいんだよね? ダメって言われてないもんね)
人工精霊の動きは速いが、回避になれた今の僕なら、反撃するぐらいの余裕はある。
だが物理的な反撃で触れてしまっては、きっと激痛を伴う。
なら、アレを使うしかあるまい。
――――別に、倒してしまっても構わんのだろう?
指先にマナバレットを形成する。
「そこだッ!」
狙い通り人工精霊を捉え、命中し……すり抜けていった。
「ピョッ!?」
「お? しっかり当ててきたねぇ。でも無属性魔法って物理みたいなもんだから、人工とはいえ精霊には意味ないよ」
愕然としていたところに人工精霊の反撃を食らう。
「あだぁぁぁぁぁぁッ!」
◇ ◇ ◇ ◇
ということがあったわけだ。
順当に対策を考えるのであれば、無属性じゃない、雷属性で反撃すればいいわけだけど……。
「えーっと……あった、これだ」
本棚から1冊の本を取り出す。
雷属性の付与魔法について書かれた本だ。
マナバレットに雷属性を付与しようと思ったわけです。
普通に雷魔法で反撃すればいいのでは? と思った時期が僕にもありましたよ。
でもね……魔法ってすごく難しいんです。
魔力を電撃に変換、形成、大きさや圧縮率、顕現、動作、結果。
それらを思考内で魔法陣として術式を構築。
(もうね、理解が追い付かないよ……)
ぼんやりと構築できるようになった魔法はあるので、詠唱を入れれば使える雷魔法は何個かある。
でもね……回避しながら詠唱とか超無理っす。
何度も舌嚙みました。
ということで付与魔法に目を付けたわけですよ。
目指すところは、マナバレットに電磁力を使ったレールガン。
そう思ってマナバレットに、雷魔法を付与してみたいわけですよ。
付与魔法は、付与対象への定着が大事な分、通常の魔法より複雑ではない。
こうして新しいマナバレットを開発していくのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「うーん、レールガンっていうより、ただのビリビリする銃弾みたいだなぁ」
師匠のいない内に、外で実験を行う。
反撃対策を思いつき数か月、マナバレットに電撃を付与するだけなら、それほど複雑ではないので、無詠唱でできるようになった。
しかし思ってたほどの威力はなかった。
「そりゃ電撃付与しただけじゃ、レールガンみたいにはならないよね、そうだよね」
そもそもどんな仕組みか知らんし。
なんとなくいけるんじゃね? の精神だった。
(でも魔力を抑えれば、スタンガンテーザー銃みたいに使えそう)
これはこれで使い道はありそうではある。
「なんかおもしろそうなことしてるわねぇ」
「し、師匠、いや……これはまだ実践で使うようなものでは……」
「人は実戦の中で成長していくものよ」
師匠の周囲から、人工精霊が六つ現れる。
……六つ!?
「師匠……? なんか多いですよ?」
「もう四つじゃ回避しながら魔法なんて余裕でしょ? 死ぬ気で無理しろ、が私の教育方針よ」
六つの人工精霊が無慈悲にも襲い掛かってくる。
「ちょ…やばッ!」
必死に回避に専念する。
死角からも容赦なく攻撃がくる。
(見てから回避……不可能です!)
もはや勘頼みで避けていく。
しかしこんなものが長く続くわけもない。
(続かないなら……数を減らす!)
指先にマナバレットを形成する。
そして電撃付与の術式を構築――――
「……無理っす!」
回避を意識しすぎて、構築が上手くいかない。
「あーもう! どうにでもなれ!」
この術式で合っているかわからない、急いで構築した付与魔法。
というか多分間違っているが、とにかく撃つしかなかった。
その瞬間、指先から魔法陣とともに閃光が放たれた――――
閃光に触れた人工精霊は、ジュッと蒸発するような音とともに消え去った。
「や、やった――――あだだだだだだだッ」
そして残り五つの人工精霊から、猛反撃を食らった。
◇ ◇ ◇ ◇
「あんた、咄嗟のこととはいえ変わった魔法を使ったわねぇ」
「そうですね、ちょっと感動しかけたのに台無しにされました」
許すまじ人工精霊。
でも、レールガンっぽいものを目指してたはずが、咄嗟に撃ったものはどちらかといえば、レーザーのようなものだった。
(指からレーザービーム……? 魔力消費はちょっと多いけど、必殺技みたいでかっこいいじゃん)
急いで組んだ術式とはいえ、ハッキリと覚えている。
なんでこの術式でレーザーになるの? と聞かれたら、レーザーの仕組みをよく知らないので説明が難しい。
偶然の産物だしね……。
それはそうと、せっかくだから名前も付けないと。
元はマナバレットだからな……ray(熱線)からとって――――
「<閃光>レイバレットと名付けよう」
「名前つけるのはいいけど、その複合魔法、次も咄嗟に使えるの?」
「使えるとは思いますけど……あっ、溜めればもっと威力も上げられると思いますよ」
消費魔力を増やせば、威力をあげられそうな感覚はあった。
「ふーん……じゃあ次から空で特訓かしらね」
「へっ……?」
ちょっと何言ってるかわかりませんね。
空を飛べとでもいうのでしょうか。
「飛行魔法って、風属性か闇属性の高位魔法ですよね? 僕どっちも使えませんよ?」
「そうね、だからあんたの体に人工精霊を埋め込むから」
……埋め込む?