「はぁぁ?!」
次の日の朝、怒り狂った優奈が凛の家にあがり、凛を叩き起した。昨日あまり眠れなかった凛からしたらいい迷惑だ。そして、昨日の出来事を聞いた優奈はこの有様である。
「ちょ、ちょっと優奈!朝からあんまり大きな声出さないでよ…鼓膜が割れる!」
あまりの大音量に凛は耳を塞いだ。優奈は、はっ!と言って凛に慌てて謝る。
「いや、ごめんごめん!それにしても凛凄いねぇ、あの東京卍會と絡んじゃうなんて!!」
「だから助けてもらっただけだって……」
「で、でも!東京卍會なんて、今むっちゃいい感じの暴走族だよ?!」
瞳をキラキラさせながら距離を詰めてくる優奈に、凛は少し苦笑いをした。彼女はどうやら暴走族に少し憧れや関心があるらしく、凛の話を聞くだけでとても興奮している。
「でも、せっかく助けてもらったんだから、お礼したかったなぁ」
そんなこんなで家を出て、登校の道を歩きながら、綺麗な銀髪を思い出して凛は言った。
「三ツ谷っていう苗字だけでもしれたんだし、探してみたら?案外近くにいるかもよ?」
少し暗い表情の凛の目の前に顔を出しながら優奈は明るく言った
「確かに……私たちの学校にいるかな?」
「うーーーーーん……100分に1の確率くらいならいるかもね」
真剣に唸りながら答える優奈に、凛は大きな声で笑いながら桜がもう散っている並木を2人で並んで歩いた。
「はぁ……」
一方、三ツ谷隆は珍しく授業をボーッと聞いていた。今現在彼の頭の中を占めているのは昨夜助けた彼女である。隆は彼女が何か言いかけているのにも関わらず、バイクに乗って走り出してしまった自分への自責の念に駆られていた。
もう一度彼女に会いたい。そんな思いが頭から離れなかった。だが隆のそんな思いも、凛の思いも、数日後に叶うことを彼らはまだ知らない。
数日後、凛はまだまだ【銀髪の青年】を諦めず探していた。同い歳くらいだと思われる彼は、残念ながら凛の同学年の学校にはいなかった。大好きな部活の時間も、幾度となく銀髪の青年が頭によぎった。
「は……さん……!……花里さん!」
「は、はい!!!」
大きな声で呼ばれ、凛は思わずガタガタッ!と音を立てながら勢いよく椅子から立ち上がってしまった。横にいる優奈達がぷぷぷと笑う。西巻さんに苦笑いされているのを目にし、凛は今すぐ穴に入りたい気持ちになった。そしてすいませんと顔を下げながら言い、みんなに見えないようキャンバスに隠れながら首をふるふると振ってみる。だが、頭の中から青年が消えることは無かった。
そして放課後、散々優奈にからかわれ、バカにされた凛は少しふてぶてしい態度を取りながらも、カバンを手にし、帰ろうと、もう手芸部の部員が全員帰ってしまい誰もいない家庭科室を横切った。凛がふと教室を除くと、誰もいない家庭科室には____あの銀髪の青年がいた。思わず足を止めた凛に優奈は「どうしたぁ…?」と言いながら凛の目線を追い、同じくギョッとしたように目を丸くした。
「三、三ツ谷……くん?」
凛は恐る恐る声をかけた。すると、彼は振り返った。そして、
「……は?」
とても間抜けな声を出した。
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コメント
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好きでs((👊