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最高の旦那様

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第10話 旦那様は時空制御師 1

♥

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2024年01月14日

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純白に染め上げられた視界が、ゆっくりとクリアになってゆく。

数度瞬きすれば、そこには日本人には見慣れない、高い天井の部屋。

ゴージャスな調度品の数々と、無駄に着飾った人々が映り込んできた。


目を閉じてふうと息を吐き出す。

すると。

次に目を開いたときには、ゲームでは鉄板のステータス画面が表示されていた。

御丁寧にも精緻に描かれた、百合の花の飾り罫線で囲まれている。

そこに表示されていたのは己のステータス画面ではなく、夫からのメッセージ。


最愛の妻へ


全てに突っ込みたい気持ちは大変良く理解できますが、まずはイヤリングを装備してくださいね?

自動で日本語に変換されますから。


ちなみにペンダントは絶対防御機能がついています。

どんな攻撃も無効化しますので、安心してください。

寝ているときも外してはいけません。

お風呂に入っているときも駄目です。


指輪はアイテムボックスになっています。

アイテムボックスの中には便利なアイテムを山ほど仕込んでありますので、城を出てから確認してくださいね。


貴女が首尾良く全てのクエストを果たせたら、帰還できるようになっていますので、その点も御安心を。

勿論、召喚時に召喚された場所へ帰還できるように手配済みです。

素敵にファンタジーな世界ですから、異世界トリップを存分に楽しんでから帰還してください。


最愛の夫より


『たかひとさーん!』


すかさず、心の中で突っ込みを入れる。

やっぱり夫の仕業だったらしい。

料理教室に不似合いなアクセサリーを身に着けさせたのには、こんな理由があったようだ。


生温い微笑を浮かべつつ、夫の指示通りしまっておいたイヤリングを装着しようと、ポケットに手を入れる。


と同時に、真っ黒いローブを頭からかぶって、誰がどう見ても悪人ですよ! という雰囲気を纏う男が大きく杖を揮う。

恐らく魔法を放ったのだと思うが、ペンダントの絶対防御機能が無事に働いたらしく、黒い煙のような一線は私の三十センチ手前で霧散した。


ローブの人物が愕然としているそばで、玉座にふんぞり返っている男性やその隣にいる白塗りおばけレベルに化粧をした女性は欲望に塗れた目線を向けてくる。

重すぎて機敏な動きができるとは思えないフルプレートアーマーを装備した人物たちは、何やらパニックを起こしかけて妙な動きや叫び声をあげているが、私の最優先はイヤリングの装備だ。


無事に両耳につけた途端。

あ、これ駄目な奴だ! と首を振るしかない会話が聞こえてくる。


『……ありえない……僕の拘束魔法が効かないなんて、嘘だ』


ローブの人物はどうやら男性だったらしい。

僕っ娘は可愛ければ正義だが、どうだろう?

拘束魔法は=隷属魔法なのかの方が今は気になるところだ。


『宮廷最高魔導師の魔法が効かないとは! 歴代召喚者にはいなかったぞ!』


でっぷりとした腹を重たげに揺らして悶えるのは、王冠を見るにこの国の王なのだろう。

歴代召喚と表現するからには、何度も仕出かしているわけだ。


本人の意思をまるっと無視をして、価値観が違い過ぎる可能性が高い異世界から無理やり拉致をしておいて、慰謝料は払っているのか。

テンプレ的に、世界を救えだの、魔王を倒せだの御託を吐くのなら、その報奨はきちんと支払っているのか。

最も重要なのは、元いた場所へタイムラグなく戻せるのか。

聞きたい点はまだまだある。


『なんじゃ? あの宝石は! 見たことないぞえ。妾に献上させるしかないのう!』


白塗りおばけは同じく王冠をつけているので、王妃で間違いなさそうだ。

しかも私の宝石に目を付けるとか、どれだけ私利私欲を満たすために生きているのか分かろうというもの。


『落ち着かれてください! まずは隷属の首輪をさせて、話を聞き出しましょう。何か宮廷最高魔導師殿の魔法を無効化する魔法具などを持っているのかもしれません』


フルプレートアーマーの中で一番頭飾りがゴージャスな人物が叫ぶ。

比較的冷静で頭も良さそうだ。

言っている内容は最悪なので、人間としての評価は下の下だが。


『うむ。それが良いのう。首飾りを献上させて、隷属の首輪をつけさせるのじゃ!』


王妃の目が物欲に塗れて爛々と輝いている。

紫の瞳とか大好物なのに、台無しだ!


フルプレートアーマーの男が様子を窺いながらこちらへ向かってくる隙に、自分のステータス画面を確認する。


自分のステータス宜しく! と頭の中で唱えれば、どこかで、待ってました! と声が聞こえたような気がして、目の前には先ほどの百合装飾な画面が出てきた。


「じちょうしてください……」


柊麻莉彩 ひいらぎまりさ


HP ∞ 絶対防御が働くので低くても問題はなかったんですけどね?

MP ∞ どんな魔法も使えますよ!

SP ∞ 太りませんから、好きなだけ食べてください。


スキル

鑑定 ∞ 貴女の前ではどんな秘密も暴かれますよ。

偽装 ∞ 状況に相応しい偽装を勝手にしてくれます。


固定スキル

弱点攻撃 攻撃されると勝手に弱点を攻撃してくれます。

魔改造 料理用と思いましたが、アイテムにも使えます。様々な場面で試してみてください。

簡単コピー 一度鑑定もしくは実動を見たスキルを全てコピーできます。面白いスキルがたくさんありますよ。極度に方向音 痴の貴方にはマッパーを早めに取ることをお勧めします。


特殊装備品

サファイアのネックレス

攻撃無効化の絶対防御機能付。

如何な場合でも外してはいけません。


サファイアの指輪

アイテムボックスです。

状態維持の無限収納。

更に食材や資材の解体機能付です。


サファイアのイヤリング

異世界語翻訳変換機能。

異世界で使われている言語を全て、日本語に変換してくれます。

読みだけでなく書きもばっちりですよ。


称号

時空制御師の最愛

~の最愛は、神様の加護的なものと思ってください。

王族でも逆らえません。


*例外はありますが基本的に、鑑定されて見える表示はHP、MP、SPと称号のみです。

称号を盾に無理難題を吹っかけるのもありだと思いませんか?


チートすぎて一瞬ドン引きした私を責めないでほしい。

次の瞬間には、異世界トリップ、チートきたぁー! とか思ったのも責めないでほしい。

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