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凄い……
銃撃男が現れてすぐ、
金坂は懐から瓶を取り出し、
中の液体を飲んだ。
「 この人が相手となると分が悪い、 今は退散しましょう 」
金坂はヒメに言った。しぶしぶヒメも、 「 わかった 」と言って、 なにもない空間 に水を生み出し、 銃撃男に向かって大量に 覆いかぶせる。 銃撃男は、 水でうまく前が見えておらず、 手間取っていた。 その隙に金坂が、 ヒメの肩に手を置き、瞬間、 2人はその場から消えてしまった。 いなくなると同時に、水も消え、 そこにはびしょ濡れの銃撃男と、 千春だけが残った。
「 逃げられたか‥ あ、銃がしけってら‥ しまった‥ また手入れしないとな‥ 」
男がやれやれというような態度で独り言を つぶやいていると、ようやく千春が目を覚 ました。
「 お、 大丈夫かい? 少年 」
「 あ‥‥‥‥‥ はい、 助けてくれてありがとうございます ‥‥‥‥‥あっ、ヒメは!? 」
「 さっきいた人たちなら、 逃げたよ 」
「 ‥‥‥‥‥‥そうですか 」
「 間一髪だったねェ‥ 全く、 悪意を持つ死呪人は厄介で困るよ 」
「 ‥‥‥ヒメは、 悪意を持つ死呪人なんかじゃありません、 ‥俺に、会いたかっただけなんです 」
「 ふうん、 そうなのか、 …君、 死呪人について知ってるのかい? 」
「 あ、 えっと、 はい、ある人から聞きました 」
「 誰から? 」
「 それは‥‥ 」
「 もしかして女の子‥ かな? 」
「 えっ、 なんで輝夜のことを!? 」
「 僕ァ女の子かどうかしか聞いてないんだけどねェ、 素直だね、 キミ 」
「 あっ‥‥‥‥‥ 」
「 そうか、 輝夜クンの知り合いか‥ でも、 彼女が死呪人について一般人に話すとは思えないけどねェ 」
「 輝夜を知ってるんですか? 」
「 知ってるも何も、 僕ァ彼女の上司だ 」
それを聞いて、え、この人が?と
驚きを隠せない千春。
「 驚いてるね、 キミ? まぁどうでもいいけど、 それより聞きたいのはキミのことだ‥ なぜ、彼女から死呪人について聞いた? 」
それは、と答えようとしたが、 ふと思った。正直に自分が死呪人だからだ と告げれば、 この人は自分をどうするかわからない 。 輝夜に初めて会ったときのことを考える と、あまり正直に話すのは得策ではないよ うに思えた。 なので千春は、
「 自分は死呪人を見た一般人で、 大切な 人を死呪人に殺され、 自分も殺されそう になったのだが、 輝夜に救われ、 自分も その仕事に興味を持ってついてきたのだ 」
というような内容を話した。 嘘は言っていない。 それを聞いて銃撃男は、ニヤリと笑って、 そうかそうか、ウチに入りたいか。と 不穏な雰囲気を醸し出し《かもしだし》ながら言った。 ともかく、さっきの死呪人と何があったの か聞きたいし、仕事がしたいなら説明す る、ということで、彼の「仕事場」に連れて行かれた。 ついていくと、かなり大きな建物が目を引 いた。
「 ようこそ、 特葬課へ 」
そう言って案内されたのは、 外観の大きな建物とは違って、 小さな事務所だった。 ドアから中に入ろうとすると 、 廊下の奥から輝夜が歩いてきた。
「 あらあなた、 どこいってたの? 集合時間過ぎても来ないから、 日和って帰ったのかと思ったわ 」
「 いや、 色々あって‥ 」
「 へぇ‥ まあいいわ、 それより、 なんであなたが副本部長と一緒なわけ? 」
「 副本部長? 」
「 僕ァ一応そういう役職なんだよ、キミもこれからは僕を慕うといい‥ なんてね 」
ははは‥と苦笑いする千春。
とにかく中に入って話そう、と 副本部長の男から言われ、 輝夜がドアを開けようとする。すると、 はっと何かに気づいたように輝夜は、 ドアノブから手を離した。
「 あなた、 開けてくれない? 」
「 え? なんで? 」
「 いいから 」
言われるがままにドアを開けると、 バァンと勢いよくドアを内側から開けら れ、壁に叩きつけられた。 それだけじゃない。衝撃とともになにか肌 色の壁のようなものが視界を塞いでいた。 なにかと思い見れば、上裸で、筋骨隆々、 という言葉が似合いそうな角刈りの大男が 自分を力強く抱きしめていた。
「 おかえり! 輝夜くん! 今回も死呪人を手際よく倒したようだね、 関心関心! その調子で頑張ってくれよ! 」
そう言いながら人違いの千春をゆさゆさと 揺する。 千春は最初の衝撃で危うく気を失いかけた ところを、男の揺さぶりで取り戻した。
「 む? 誰だキミは 」
「 彼はここに入りたいという新入りだ、僕が連れてきた 」
「 なに!? 新入りか! よろしくな! 」
「 モモタ本部長、 帰ってくるなり抱きしめるのやめてください、 普通にいい迷惑です 」
「 ならいいじゃないか、 “いい”迷惑だし し 」
違う、そうじゃない。
千春はそう言いたくなったが、 心にそっとしまった。 そのあと、改めて自己紹介が始まった。
「 僕ァ“赤津 吟作”だ、よろしく 」
「 “百田 一郎”だ!よろしく頼む! 」
「 竹取輝夜。2回目ね 」
「 浦島千春です! よろしくお願いします! 」
うん、と小さく返事をして、赤津は言う。
「 早速だが、 キミには、 いくつか言っておかないとならないことがある‥ この特葬課についての話だ、 この話を聞けばキミは後戻りできない、 いいかな? 」
今更、後戻りなどする気は 、 千春には更々 なかった。 むしろ、聞かなければならない理由が、 今日だけで一つ増えたのだから。 千春はヒメのことを思い浮かべながら、 決 意して口を開いた。
「 お願いします! 」
「 よろしい 」
赤津は、千春の意思を確認すると、 なにやら紙を取り出し、喋り始めた。 千春は、赤津の話に、耳を傾けた。