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テラーノベル(Teller Novel)
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あなたには人生で1番心に残っている物はありますか?私にはあります。

妹が絵のコンクールで入賞することが度々あって、会場に足を運ぶ機会は絵を描かない人と比べたら多かったと思うけど、私自身は全然絵の知識はなかった。

絵を見ても「綺麗だな」「鮮やかな色だな」「細かい部分まで表現されてて凄いな」素人の感想しか思い浮かばない。

だけど、私は1度だけ絵を見て泣いたことがある。その絵は私の心を奪って離してくれない忘れられない絵です。




魔の高校受験が終わった!!楽しいスクールライフが待っている!!なんて中学の卒業式の時まではそんなこと思ってたな…


実際、高校生活が始まってからというものの小テスト小テスト小テスト小テスト小テスト小テスト小テスト小テスト小テスト…あれ?昨日も小テストなかったっけ?いや、待て、なんなら1時間前にも小テストやったぞ


進学校に進んだから当たり前と言ったら当たり前なのかもしれないけど、勉強ばかりで頭がパンクしそうだ。


皆さんはじめまして

私、五十嵐友香(いがらし ともか)っていいます。


クラスにも溶け込めてそれなりに楽しく生活を送っているけど 部活でインターハイ目指すぞー!!!!!とか高校では彼氏を作ってデートするぞー!!とかそういった青春っぽいこととは無縁な感じだ。


「ねぇ、もかっぺ聞いてる?」

「え?あ、ごめん何?」

「今グラウンドにB組男子いるじゃん。あれ、ますみんじゃない?」

「え?あ、ほんとだ」

「声かけてあげないの?」


窓際にある私の席へ遊びに来ていたのは佐久間瑞貴(さくま みずき)。中学の時からの同級生で高校でも同じクラスになれた仲良しな子だ。


「こっから聞こえるかな?」

「いけるっしょ」

「ますみーん!!」


私が大きめの声で呼ぶと彼はびっくりしつつ、視線を上げてこちらを探して見上げてくれた


「これから体育ー?」

「さっき体育だったー」

「そっかー、お疲れ様ー!」


教室の3階にいる私とグラウンドにいる彼の会話はなかなかに目立つ。隣にいる瑞貴と一緒に手を振ると少し恥ずかしそうにしながらも手を振り返してくれた。彼の周りにいる男子からチャチャを入れられてるところを見たら


「何か悪いことしたな…」

「いいんじゃない?藤崎組は皆仲良しなんだから」


‘藤崎’とは中学3年の私達の担任の名前。中3のクラスは異常に仲がよくクラスメイト全員をあだ名で呼んでいる。ちなみに五十嵐は、’もかっぺ’佐久間は、’みずきち’


声をかけた男の子は私と瑞貴と同じ中学だった真住慶太(ますみ けいた)くん中1と中3で同じクラスだった。女子の中で背の低い私と男子の中で背の低い真住くんは背の順しかり、席順しかり、係員しかり何かと近くになることが多かった。いわゆる腐れ縁というやつだ。


「ますみん、ほんと可愛いよね~」

「それ本人に言っちゃダメだよ?顔には出さないようにしてるみたいだけど不機嫌になるから」

「知ってるけど、ほんと顔整ってるよね!高校で背伸びたら化けるな…絶対モテモテになるよ!」

「ますみんは今のままでもモテそうだけどね」


机に肘をついて手のひらに顎を乗せて瑞貴と会話する。他の男子たちと一緒にグラウンドから昇降口へと歩いていく彼を見つめていると最後尾を歩く彼が再びこちらを見上げてきて目が合った。彼もまさか目が合うと思ってなかったのか少し驚いた表情を見せた後、他の男子が自分を見ていないことを確認してから笑って手を振ってくれた。


「っ!」

「あれはモテるわ」


瑞貴が少し興奮気味に私の手を掴んで振りながらそう言った。

「ますみんの恋愛だけは邪魔しないようにしよう」

「あんた仲良いもんね」

「仲良すぎたら女子に刺されそう」

「物騒すぎる」


その日の放課後

「五十嵐って、隣のクラスの真山とも仲良かったりすんの?」

「仲良しってか、話したことある感じ」

「お前顔広いな」

「友達作るのが上手って言って」


授業終わりにクラスの男子と他愛のない話をしていたら教室の扉の方から声をかけられた。


「もかっぺ」

「ん?ますみん、どしたの?」


彼の手にはノートと筆箱が握られている

「あと5分で委員会始まるけど間に合う?」

「…え?!」

「俺のクラスには佐藤先生が直接言いに来てくれたけど…」

その言葉に今朝の教室の様子を思い出す………あ、佐藤先生うちのクラスにも来てたわ

「あっぶな!!」

バタバタと委員会ノートを引っ張り出して筆記用具も握りしめる。委員会のペアである男子は今日休みだから私が行かなかったら1-E不参加になってしまう。

「教えてくれてありがと!!」

「やけにのんびりしてるなと思ったらやっぱ忘れてたか」

「ほんと恩人だよありがとう!」

「大袈裟だよ」

うちの文化委員会担当の佐藤先生はやけに委員会に力を入れており入学して1ヶ月くらいしか経ってないのに収集は4回目だ。

吹奏楽部の定期演奏会について、夏に向けて美術部がコンクールをする為…など何かと理由をつけて収集し、仕事を言い渡される。メインイベントとなる文化祭に向けても早々から準備を進めている。

色々話されて解散したけど、先生の話すスピード早すぎて正直このノートじゃ内容を振り返られない。

「もかっぺの教室行ってもいい?」

「うん、いいよ」

「カバンとか取りに行ってくる」


それはますみんも同じらしくて委員会が終わるとどちらかの教室に立ち寄りノートをまとめる、それが日課になりつつある。


「まだ4月なのに第4回委員会ってどういうこと?定期的すぎない?」

「入る前はこんなに多いとは思ってなかった」

「だよねー、みんな帰るか部活行ってるかで羨ましいー」

雑談をしながらノートをまとめていく、字は綺麗な方なのでノートにメモる際に適当に書いても何て書いてあるかはなんとなく読める。

「なぁ、コンクールについての’その②’って何て書いてある?」

「’コンクールのチラシは美術部員に5月中に描いてもらう為それまでにチラシの文字構成を考える’」

「さんきゅー」

2人でノートをまとめていれば抜けがあってもこうやってフォロー出来るから委員会終わりのこの時間はありがたい。委員会の回数の多さには面倒くさいとは感じるけど、任された仕事はおざなりにはしたくない。

「ふー、終わった」

「お疲れ様、もかっぺのおかげで助かった」

「大したことしてないよ」

「俺のメモだけだったらコンクールのところ、空欄出来てた」

ふと、’コンクール’という言葉が頭をよぎると中3の時に見た絵が脳内に蘇ってきた。

「美術部員に描いてもらうって佐藤先生言ってたけど、どういう絵が出来上がるんだろう?文字構成って言われてもどんな絵なのかによって変わるよね」

「んー、俺の幼馴染に美術部員いるから今度聞いてみようか」

「それ助かるー!てか、この高校に幼馴染いるんだ?初めて知ったなぁ、ますみんと同じクラス?」

「ううん、A組」

彼との会話は途切れることなく、お互いに会話をしながらノートを閉じてペンをしまい部活へ行く準備をする。

「もかっぺ、部活?」

「うん、夏の大会あるからね」

「頑張ってな」

「ありがとう、ますみんもね!」

彼に手を振って別々の場所へと向かった。

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