門番がいない隙にボクとCATは城の中に入った。
ロシアの中心都市にある高級感のある庭が広がった。
いかにも金持ちが住んでいる城だった。
「CAT、集会はどこで開かれるんだ?」
ボクがそう言うとCATが「シッ。」と口に指を当てた。
「ホラ、すぐそこで集まってるでしょ?」
CATが指を刺して居る方向に視線を向けるとメイドや執事達が何十人か集まっていた。
「さりげなく紛れ込むぞCAT。」
「了解。」
ボク達は後ろの方にさりげなく並んだ。
「聞いたか?」
「あぁ。女王様がまた使用人の首を刎ねた事だろ?」
首を刎ねた?
マレフィレスは自分の使用人の首を刎ねているのか?
「首を刎ねた理由を聞いたか?」
「いや?聞いてないけど…何?」
「ロイヤルティーじゃなかったからだ。」は?
ロイヤルティーじゃなかった…?
「えぇ…。女王様は紅茶をロイヤルティーにしろって言ってなかったよね?」
「女王様の機嫌が悪かったんだろ?」
メイドと執事達がコソコソと話しているのをボク達は黙って聞いて居た。
どうやらマレフィレスはよく思われていないらしい。
「嫌われているのか女王は…。」
「まぁ…。女王を好きな人はいないよね…。」
ボクとCATはそう言って苦笑いをした。
「静かにしろ!!」
前方から怒鳴り声が聞こえた。
さっきまで話していたメイドと執事達が口を閉じた。
誰か前に来たのか?
姿が見えないが…。
「ほら、あの小さいおじさん見える?」
タンタンタンタンッ!!
階段を登る音が前方から聞こえて来た。
CATがボクの耳元で囁いた。
よく見ると前に階段の付いたお立ち台が設置されてあり、執事服を着た小さいおじさんが登っていた。
「あのおじさんが執事長か?」
「そうそう、今は大人しくしておこう。」
「今から集会を始める!!使用人の人数が減ってしまった故、効率よく仕事を行うように!!まずは…。」
もう、何分経ったのだろうか。
あのおじさんよく喋るなぁ…。
口が歩いていような人だな。
ボク達の存在を怪しまずに仕事を振って来た。
ボクとCATは他のメイド達と数人で城の中の掃除を担当する事になった。
「じゃあ貴方達はあっちの方からお願い。」
「分かりましたぁ。」
ボクの代わりにCATが掃除道具を受け取った。
「こんなにすんなり城の中に入れたが警戒心なさ過ぎだろ…。」
「ここのメイドや執事達の入れ替わりが激しいからオレ達の事も深く気に留めてないんだよ。」
「成る程…。」
だからすんなり入れたのか。
ボクは廊下をモップ掛けをしながら周りを調べる事にした。
さて…と、まずはこの部屋から調べてみるか…。
キィィィ。
この部屋は客間か?
特に何もなさそうだな。
それからボクは一つ一つ部屋を見て回った。
何一つ手がかりになる物がないな。
アリスに関わる事が無いのは当たり前って言ったら当たり前なんだろうけど…。
「全然ないねー。一応この部屋も確認しとく?」
CATは欠伸をしながら扉に手を掛けた。
「あぁ、そうだな。」
キィィィ。
扉を開けると書類が山積みになっていた。
「何この部屋!!ゴホッ!!凄い紙臭い。」
床に落ちている1枚の紙を拾い上げた。
そこには”Alice”と書かれていた。
「アリス?」
ボクは紙の束を見つめた。
もしかしたらアリスに関わる事が書かれて居るのか?
この書類室みたいな部屋は全てアリスの資料か?
「CAT。この部屋を調べるぞ。」
「え?この部屋を?」
「あぁ。これを見てくれ。」
ボクはさっき拾った紙をCATに見せた。
「アリスの事が書かれてる…。女王はアリスの事を調べていたのかな?」
「その可能性が高い。」
「了解。とりあえず誰も来ないように鍵を掛けておこ。」
そう言ってCATは内側から鍵を閉めた。
ランプに火を付けこの部屋にある書類に目を通した。
アリスのプロフィールか…。
両親と姉を幼い頃に事故で亡くし、孤児院に引き取られそうだった所をロイドに引き取られたそうだ。
アリスとロイドは親戚に当たるのか…。
なら尚更、アリスを殺した奴を探し出したいだろう。
それなら説明が付く。
「ゼロゼロー!!」
「何だCAT。あまり大きい声を出すなよ…。」
「これ見て。」
そう言って1枚の写真を見せて来た。
黒いドレスを着たアリスが血塗れのナイフを振り回している写真だった。
「なっ!?こ、これアリスなのか…?」
「絶対そうだよ!!この顔はアリスだよ!!」
横顔だけじゃ分からないよな…。
「これが本物のアリスならあの優しいアリスはどこに行ったんだ。」
「分からないけど…。アリスは殺し屋なんてしてないしなー。」
カツカツカツカツ。
廊下から足音が聞こえた。
「「っ!!」」
ガチャガチャッ!!ドアノブを乱暴に回していた。
「誰かこの部屋に鍵を掛けたの!?」
「い、いえ…!!そんなはずは…。」
女の声と男の声がした。
「まずいよゼロ、女王の声だ。」
CATが小声で呟いた。
ボクは隠れれる場所を探した。
大きなクローゼットが目に入った。
「CAT、あのクローゼットに入るぞ。」
「え、う、うん!!」
ランプの火を消しボク達は急いでクローゼットに入った。
「早く開けなさい!!」
「は、はい!!」
ガチャッ。
ボクは隙間からマレフィレスが部屋に入って来たのを確認した。
マレフィレスって派手な女だな…。
ランプを付け周囲を注意深く確認していた。
ボクは念の為に銃とロイドから貰った時計に手を伸ばした。
気付いているかも知れないな…。
「誰かこの部屋に入れたか。」
「と、ととんでもございません!!女王様のお部屋は誰も入っておりません!!」
執事長が慌てた様子で必死に説明をした。
床に落ちて居るアリスの写真に手を伸ばした。
「この写真が床に落ちているのが可笑しいのだ。其方が嘘をついている可能性も高いのだ。」
「じょ、女王様…。わ、私は嘘など付いておりません!!」
「私に向かって大声を出すかたわけめ。私の目を見ろ。」
そう言ってマレフィレスは執事長の首元を掴み顔を近付けた。
「あ、小さいおじさん終わったね。」
「え?」
「Order。この男の首を刎ねよ。」
マレフィレスがそう言うと執事長の首にシュッと一筋の光が首元に走った。
ブジャァァァァ!!
噴き出した血と共に執事長の頭が床に落ちた。
一瞬の出来事だった。
これがマレフィレスの能力か…。
ボクはロイドに貰った耳栓をした。
マレフィレスは転がっている執事長を通り過ぎた。
ボク達が隠れているロッカーに直進して来た。
バレたらロイドから貰った時計を使う。
間に合わなかったら銃を使い隙を使ってこの場から退却する。
ボクの頭の中にはこの2つしかなかった。
マレフィレスがゆっくりとクローゼットに手を伸ばした。
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