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「あんた、そんな女の侍女なんかやめて、俺の所へ、来ないか?いやぁ、こんなべっぴんを妻にできれば、仕官話も上手く行きそうだ」
「あらまあ!仕官!どなたの元へ?」
いやいや、と、徐庶《じょしょ》は前置きし、仕官とは言い切れないのだが、州牧《ちょうかん》の所へ出入りしているのだと言った。
「そのうち、何らか機会があるかもしれない。今は、顔を売っている、それだけの話さ。俺のような、単家《たんか》、落ちぶれた家の出身など、自分の足が頼りだからなぁ。そうそう良い話は、転がり込んでこない」
「まあ!なんだか、難しいお話ですこと、私には、さっぱりわかりませんわ。残念ながら、徐庶様のお相手は、できませんわね」
しなをつくり、徐庶を相手にする月英は、ちらりと、均を見た。
均は、義姉《あね》からの合図、に慌てて、
「立ち話もなんです。どうぞ、中へ。そうだ、お二人とも、食事はまだでしょう?ああ、侍女や、支度をしておくれ」
と、勘違いしているを徐庶を、上手く取り込んだ。
──そして、厨房は、まさに、戦場のように、殺気だっている。
お嬢様育ちの、月英が、料理などできるはずもなく、均と、童子二人で、支度をし、てんてこ舞いだった。
時折、均は、徐庶の話につきあわされ、その度、童子一人で切り盛りするはめになる。
さらに、徐庶という男、遠慮なく、飲み食いしてくれて、おーい、酒がないぞ、つまみがないぞと、次から次へ催促するのだった。
「なんて男なのでしょう。これでは、我が家の食べる物さえなくなってしまいます」
「奥様、いえ、侍女様、もう、へとへとです」
「ああ、童子、お前は、まだ小さい。よくやってくれた。少し休みなさい」
「あら、そうなると、均様、一人になりますよ?」
あのぉ、と、実に申し訳無さそうな声がした。
「あら、旦那様、どうなされました?」
「いや、皆の事が気がかりで。忙しい思いをさせて申し訳ない。そろそろ、帰すつもりでいるのですが……」
「帰れ、と言い出せないのですね?」
月英の問いに、孔明は、うなだれる。