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ピンポーン
平日の朝。いつものように玄関のチャイムが鳴る。
「おはよう、春樹くん。今日も暑いね。」
ドアを開けると僕の彼女、楓が迎えに来てくれていた。
「おはよう。暑すぎて溶けるかと思った。」
「溶けないよ〜。でも、気持ちはわかるかも。」
そんな他愛もない会話をしながら学校へ登校する。付き合ってから何日も経っているから、前みたいにお互い無言、なんてことはなくなった。
「そういえば、今日は古文のテスト返却だね。春樹くん、自信ある?」
「前回のテストで楓に怒られてちゃんと勉強したから、悪くはないと思う…。」
「なら、ケアレスミスがないかだけだね!」
前よりもこの関係が成長したとは思っているが、この間僕から手を繋いだきりだ。楓の反応は「春樹くん、どうしたの?寒い?」だった。少し反応が薄すぎじゃないか?男になれ春樹。登校中も手を繫ぐんだ!そう思って手を繋いでみたものの。
「春樹くん、甘えたくなっちゃったの?可愛い〜。」
「そ、そうじゃなくて、やっぱ彼女と手、繋ぎたいし…。」
「そ、そっか…。」
最後の「そっか」で照れたと思ったけれど、どちらかというとびっくりしている様子だった。楓なら僕がああ言えば照れると思った、いや、楓なら照れてた。絶対に。まさか引かれてるのか?それとも照れ隠し?そんな器用なこと、楓にできるのか…?たまに思っていたが、昔と見た目も性格もなにも違わないのに、どこか知らない人のように思うことがある。
「春樹くん?立ち止まってどうしたの?」
「ごめん、少し考え事。遅刻するし、急ごう。」
きっと、気のせいだよな。
そして、テスト返却。楓は多分満点だろう。僕は…76点。僕の中では多分、最高得点。楓に休み時間に褒めてもらおうかな。
「楓〜。テストどうだった?僕は76点。」
「前回よりも点数上がったね!私は100点だったよ。」
流石、成績優秀で有名な楓。楓は僕の好きな人だけど、純粋に憧れているし凄い人だと思う。
「中間テストも近いから、もっと勉強しないとだけどね。」
「中間、テスト…。」
「もしかして、忘れてたの?」
完全に忘れてた。中間テストで点数を取れないと意味がないじゃないか!!勉強するにも、どこから手を付ければいいのかすらわからない。
「か、楓。悪いんだけど勉強を…。」
「ふふっ。いいよ、教えてあげる。放課後、図書館寄ろっか。」
「ありがとう。ごめん、わざわざ。」
中学の頃も楓にしょっちゅう勉強見てもらったな。懐かしい。
「全然大丈夫だよ。春樹くん、勉強苦手だもんね。あ、圭くんも誘わない?先輩もいたほうがきっとわかりやすいよ!」
「うん、いいよ。僕から圭に言っておくね。」
楓は圭をものすごく信頼しているらしい。確かに圭は勉強出来るし、運動神経も抜群。だからか、圭は学年を問わずモテている。…正直妬いている。僕と付き合っているんだから少しは僕を頼ってほしいんだけど。
「それじゃあ、圭くんによろしく!」
「わかった。」
放課後、楽しみだけど嫉妬に耐えられるか怪しい。はぁ…どうしたものか。
そして放課後。珍しく圭が先に図書館に来ていた。一緒に学校から行こうと思っていたが、3年の教室に行ったらクラスメイトと思われる人が「猛ダッシュで帰った」と教えてくれた。
「おい圭。なんで先帰ったんだよ。」
「だって春樹遅れたらすげー怒るじゃん!だから早く行こうと思ったんだよ。」
「約束はしてなかったし、結果遅れてないし、この話はおしまい!わかった?圭くん、春樹くん!」
『ごめんなさい…。』
楓は中1からの仲だけど、僕たち二人をなだめるのが上手い。僕と楓が同じクラスになったのがきっかけで仲良くなった。放課後は圭も含めて一緒に遊ぶ仲になり、すぐに言い合いになる僕たち二人を慣れた手付きで止めてくれる。
「ほら!早く勉強始めないと終わらないよ!」
「うん、そうだね。勉強、よろしくお願いします。」
同い年、なんなら圭は年上だけど、楓は僕たちのお姉さん的な存在だ。
「そういえば、勉強してるときに話す内容じゃないと思うんだけど、お前らデートとか予定立ててんの?」
「は!?圭、いきなり何いってんの!?僕たちまだ付き合ったばっかなんだけど!」
「普通は付き合ってすぐに行くもんだから。」
そんなこと言われても。それに僕と二人のときならまだしも、楓がいるところで話すなよ!それ!
「でも、私も行きたいかも、デート。春樹くん、行こうよ!」
「えっ?楓が行きたいならいいけど…。」
でも、デートなんかどこに行けばいいのかわかんないし…。それにやっぱりか、彼氏としてはエスコートしたい。圭はなんで今言うんだよ!
「お、行くの?ならこのチケットあげるわ。期限も割と長いし。」
「あげるってこれ、遊園地のペアチケット!?」
「ほんとは俺の彼女と行く予定だったけど別れたから。」
チッ。モテ男が。だけどチケットは普通にありがたい。誰もが知っているであろう有名な遊園地だし、楽しめることは間違いないだろう。楓と付き合う前に圭と楓を誘うために事前調べもしていた。まぁ、結局当日行ってみたら僕のミスが色々ありすぎてほとんど失敗に終わったんだけど。流石に今回はそんな失敗することはないだろう。
「どう?楓、行きたい?」
「うん!行きたい!」
決まりだ。ありがたくチケットは貰っておこう。帰ったらさっそく遊園地のマップの復習だ。