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チーン!
「あっ。」
家の部屋から音が鳴り千春がすぐにまた台所へ行った。
「このフルーツサンド、パンが物凄く柔らかいんだが、コレはこっちの世界でも作れるのか?」
エンハルトは執事長のセバスへ問いかけた。
「料理長や高級レストランのコックとも話をした事もありますが、この様なパンは聞いたことは有りません、もちろん作れるかどうか等想像もつきません。」
「そうか、チハルはこのパンは自分で作ったのだろうか?」
「いえ、パン屋さんで買ったと言っておりました、そして全く同じでは無いですが、柔らかいパンは自分でも作れると言われておりました、作り方を教えて欲しいと言いましたら『いいよ』と簡単に受けてもらえましたので、そう難しくは無いようでしたが時間はかかると。」
「そうか!教えてもらえるのなら是非とも料理長も一緒に教えてもらえないか聞いてもらえないだろうか、いや、戻って来たら俺が直接お願いしてみよう。」
エンハルトはそう言いながら、扉の先に居る千春を見つめていた、千春は家の台所に戻り、セットしておいた冷凍ピザをオーブンから出した、そして8ピースに切り分け丸皿へ乗せた。
「あ、サンドイッチは良いけど、コレ手づかみはまずいかな?一応フォークもってくか、箸は使えなさそうだし。」
そう言いながらカトラリーケースに数本フォーク、ナイフ、一応お箸も入れ一緒に持って行く。
「おまたせ~ピザだよ~、熱いから気を付けてね。」
椅子に座りいち早くピザを手づかみで食べる千春、他の者は千春とピザを交互に見ていた。
「手づかみで食べるのか?」
「フォークとナイフもココに有りますけど、どうします?」
エンハルトとローレルは食べ方を気にしている、セバスと侍女二人はまずは殿下と師団長が食べてからと様子を見ていた。
「よし。」
エンハルトはそのまま手づかみで行くようだ、そしてピザを1ピース掴みそのまま千春の真似をしながら先の方を口に入れる。
「・・・・うまい!」
一口食べて思わず声を出してしまった、それに続きローレルも手づかみでピザを取る、そして一口食べ。
「コレは確かに美味しいですね!チーズですか、あとは燻製肉と赤いソースは何でしょうか。」
「何でしょうか、初めて食べる味ですね、少し酸味が有りますがまろやかです。」
ローレルとセバスは赤いソースを味わいながら何なのかを考える。
「それはピザソースだよ、ベースはケチャップだね。」
ピザを1ピース食べ終わった千春は二人にそう答える。
「チハルそれは私たちでも作れるのかしら?」
「うん、作れると思うよ?こっちにトマトってある?」
「ありますよ、赤い実の野菜ですよね、この赤いのはトマトだったんですね。」
「そそ、ベースがトマトであとは味付けにガーリックとかタマネギ、あとは調味料を少し入れるね、分量は忘れたから作るなら調べとくよ。」
サフィーナは作れると分かりにっこりと微笑む。
「そうだ、チハルさっきのパンだが、コレもこの世界で作る事は出来るか?もし出来るならうちの料理長とかにも教えて欲しいんだが。」
「うん、パンは良く作ってるから作り方は分かるけど・・・あー、種どうしよかなー毎回持ってくるわけにはいかないからなー、サフィーこっちってリンゴとかブドウってある?」
「ありますよ、葡萄は季節的に今は無いですけどリンゴなら南のリモーア領が今取れるので出回ってるはずですよ。」
「おっけー、んじゃ取りあえずリンゴで種つくっといて、その前に教えるならイースト持ってくるかな。」
「種ってなんだ?リンゴの種がいるのか?」
エンハルトはパンに何故リンゴの種が要るのかが分からず聞いてみた。
「あははは!違うよ、リンゴを使ってパン酵母を作るの、その酵母でパンが膨らんで柔らかくなるんだよ。」
「酵母とは?」
ローレルも初めて聞く言葉で何だろうかと聞いてみた。
「簡単に言うと菌だね、食べ物置いてたら腐るでしょ?あれはカビの菌が腐らせてるのね、パンの菌は腐るんじゃなく発酵させるの、その発酵が必要なのよ。」
「ビョウゲンキンも菌ですよね?」
「あ~それはちょ~っと違う物なんだよねー、まぁ似て異なる物くらいで覚えといてw」
千春はめんどくさくなって適当にローレルの質問に答える。
「で!その酵母なんだけどリンゴを使って作れるの、私があっちから持って来ても良いんだけど、こっちで柔らかいパンを作るならコッチでそれも作れないと意味ないじゃん?だからソコから教えるって話、あと葡萄からも作れるよ、これを天然酵母って言います!で!その天然酵母なんだけど、作り始めて出来上がるのに1週間くらいかかんの、だからその前にパン作るならあっちでイースト菌でも買って来て教えよかなーと、ね?」
「すぐ手に入るのか?そのイーストキンと言うのは。」
エンハルトは今直ぐにでも作ってもらいたい勢いで言う。
「なんなら今から買いに行けるくらいすぐ買えるけど?」
「今からの用事は何が有るんだ?」
「先ほど覚えた魔法の復習ですかね、新しい魔法も覚えたので。」
「・・・そうか、明日は?」
ピリリリッピリリリッ
千春のスマホの着信が鳴る。
「なんだ!?」
エンハルトは聞きなれない音に警戒し声を上げる。
「電話だよ、ちょっと待ってね・・・『ぴっ』もしもしー?・・・・なにー?ヨリ・・・・うん・・・・え?マジで!?・・・・うん・・・・そこはヨリに任す!・・・ほい!了解!頼んだ!・・・・・。」
「今のは何だ?」
改めてエンハルトが聞き直す。
「電話だよ、このスマホで電話してたの・・・・え?ココ電波届くんだ、まぁ部屋ソコだしWi-Fi届くわな。」
「いや、デンワってなんだ?」
「遠くの人と話出来る道具、詳しくは説明出来ないよ。」
「魔法で遠話する道具と思えば合ってますか?」
「そ!そそ!ローレルさん正解!・・・で、なんだっけ?何の話してたっけ?」
「明日の予定をだな・・・聞いていたんだが。」
ちょっと疲れた感じにエンハルトは答えた。
「明日はチハルさんに向こうで色々調べてもらい陛下と宰相へ報告する予定です、チハルさんも調べ物が有りますから明日は忙しいと思いますよ。」
「そうか、では日を改めるしかないな、都合の良い日はいつだろうか?」
明日はしょうがないと言う二人、しかし千春はあっけらかんと。
「あー調べ物は今やるよ、なんか書く物ある?無いなら取ってくるけど。」
「今ですか!?すぐ部屋に行って取りに行ってきます!」
「いいよ、部屋まで行くなら私の方が速いからとってくるね。」
そう言いながら扉を抜け、数秒ですぐ戻ってくる。
「はい、メモ帳とボールペン、それあげるよ、ペンはその中のインクが無くなるまで使える文明の利器だよ!羽ペンとか要らないよ!」
千春はローレルの机にインク壺と羽ペンが有るのを見ていたので、ボールペンを見せてビックリさせたかったのである。
「この紙・・・なんですかこのツヤそしてこの枚数!こんな高価な物いいんですか!?」
「お・・・おぅ、大事に使ってくれぃ・・・。」
メモ帳は3冊入って100円、ボールペンは5本入って100円の超安物であった為本当の事が思わず言えなかった。
「さて、まずは塩田?連作障害?・・・・。」
「では連作障害からお願いします!」
そして秒でググって驚かし、他の人は何を言っているかほぼ分からず大人しく紅茶を飲みながらポテチを食べるのであった。
「「「「「パリパリッ」」」」」