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。もし彼の言う通り、あのまま彼を殺していたら?彼の生涯を、この手で、この体で終わらせていたら?
そう思うと、そんな自分にすら不快感を覚えた。
歩きながらそんなことを考えていると、自分を覆い隠すほどの影が出来た。
「たたら砂….」
ぼそりと呟いた。
彼や、旅人の話だと、彼、放浪者殿の昔住んでいた場所、自分の先祖が刀を打っていたところ。
なんとなく、ヒントになったら。と思った。
気付いたら
◇
たたら砂、故郷の稲妻とはいえ、こと近年は封鎖されており、人もあまり寄り付かなかったため、自分も自ずとたたら砂に立ち入ることは無かった。
所々無くなって崩れそうな橋を風元素の力を使い、登っている途中、小屋を見つけた。
扉も壊れて、それに、雨雲が漂ってきたため、雨宿り、という名目で小屋の中に入らせてもらった。
普段はあまり良い印象のない雨音が、今は心地よく感じられた。魔物や人の気配、動物の音すら無い孤独な空間で、雨音だけが響くのはなんとも心地よかった。
「あの御仁は、本当に拙者のことを見ているのだろうか」
ぽつりと、自分の声が反響して聞こえた。喋ったつもりは無いものの、無意識に口から出て言ってしまっていた。
たしかに、彼は「君には僕を刺し殺す権利がある」と言い刀を差し出してきたことがあった。が、恐らく、その本意は自分が何か罰を受けたいから、なのであろう。きっと、拙者がどう思っていようと、関係ない。
(彼が求めているのは被害者…である拙者の断罪。では無く、その罪を犯した自分への罰なのであろう。ということは ──)
彼はただそこに丁度いい人が居たから自分を殺させようとしているのでは。
という結論に至った。極論かもしれないが、実際そういうことなのだろう。彼と、過去について話し合ったことは何度かあった。その度に感じていた違和感の原因はきっとこのことなのであろう
どうしたら、彼は自分を認めてくれるのだろう。
友人の末裔でもなく、処刑人でもなく、
…ただの、友人として
「…何故君がここにいるのかな。」
「?!」
つい先程まで考えていた人物の声がした。それも目の前から。
パッと顔を上げるとそこには少し雨に濡れた放浪者がいた。
何故ここに?そんなの、自分が聞きたい。