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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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ここに来るのは何度目かな? ざっと四、五回は来ていると思うが……。まあ、いいか。

俺は今、サナエのところに来ている。

『暗黒楽園《ダークネスパラダイス》』の主である彼女はここでずっと一人でいるため、寂しさを感じていた。

しかし、俺がちょくちょくここに来るようになったおかげで、その気持ちはだいぶ薄《うす》れてきたと思う。

もしそうじゃないなら、彼女は仰向けで横になっている俺のそばでじっと俺の顔を見つめてはいないだろう。

ちなみに俺がここに来られるのは気を失っている時のみである。ただし、睡眠時には来られない。

今回は急な激痛に襲《おそ》われてしまったせいで、ここに来てしまった。

はぁ、なんとかして元の世界に帰りたいけど、サナエが許してくれないだろうな。

サナエは全身が影のような存在であるため、その姿を見ることはできない。

だから、俺でさえ彼女がどこにいるのかは分からない。

だが、それでもここに居続けているということは何かしら目的があるのだと思う。

俺がそんなことを考えているとサナエが、こう言った。


「ねえ、ナオト。せっかく来たんだからゆっくりしていきなさいよ。私はここの時間を操作できるから『精〇と時の部屋』以上のこともできるわよ?」


俺は、とある計算をした。


「いやいや『精〇と時の部屋』に約一年居たら、現実世界では約一日経っているんだぞ? そんなに長くここにいたらまずいだろ?」


多分、サナエは頬《ほほ》を膨《ふく》らませながら、こう言った。


「へえ、ナオトは私よりもあの子たちの方が大事なんだ。じゃあ、もう帰っていいわよ。というか、早く帰って!」


俺は俺を無理やり元の世界に帰そうとするサナエを止めるために、こう言った。


「そうか、それは残念だなー。俺はここで少し休んでから向こうに帰るって決めてたんだけどなー」


サナエは多分、そっぽを向きながら、こう言った。


「あー、そう。なら、好きにすれば!」


「ああ、そうさせてもらうよ」


俺はむくりと起き上がると、辺りを見渡した。

それにしても……ここはいつ来ても、闇しかないな。

というか、光の欠片《かけら》さえ見当たらないなんて、ここはいったい何でできているんだ?

俺はこんなところにずっと居《い》るサナエの心は平気なのかな? と心配していた。

すると、サナエがふと、こんなことを言った。


「ま、まあ、最近は貴方《あなた》が来てくれるから、だいぶ楽になったのは事実よ……。その……あ、ありがとね、ナオト」


「ん? あ、ああ、それは別にいいんだが……」


その後《ご》、サナエはまるで俺の考えを先読みしているかのように、こう言った。(というか、先読みできる)


「私に何か訊《き》きたいことでもあるの?」


「あー、まあ、あるっちゃあるんだが。訊《き》いていいのかな……と思ってな」


「別に遠慮しなくていいわよ。さぁ、なんでも訊《き》いて」


おそらく胸を張って言ったであろうサナエの言葉に甘えて、俺が疑問に思っていることを訊《き》くことにした。


「単刀直入に言う。サナエ、お前は俺の何を知っているんだ?」


初めて会った時から感じていた妙な懐かしさとサナエの行動から、この質問をするに至った。

サナエは間違いなく俺の知らない俺を知っている。そんな気がしてならなかった。

サナエは、その問いに答えるのに数分を要した。

そして、その数分後に明かされた真実に俺は自分の耳を疑った。



燃え盛る炎のように紅《あか》い長髪と、エメラルドをそのまま入れたのではないかと噂《うわさ》されるほどの色をした瞳《ひとみ》は、クリクリとしていてなんとも言えない。

服装はルル(白魔女)と同じ黒いローブ。しかし、なぜか裸足《はだし》である。というか、モンスターチルドレンたちのほとんどはそうである。

ただし、今回登場した紅い髪の少女はモンスターチルドレンではなく、白魔女である。

ついでに言うと、ルルとロロの姉である。

ララ=エアロ=クリムゾン。名前の通り気体を操ることができる。

ルルと同様、白魔女と吸血鬼のハーフである彼女はモンスターチルドレン育成所に三人いる副所長の一人であり、長女。

そんな彼女は頭の後ろで腕を組んだ状態で鼻歌を歌いながら、ニコニコ笑顔で育成所内にある白い通路を歩いていた。(三人の身長は全員同じだが、性格は全く違う)

彼女が、のんびり散歩をしていると、トタトタと足音が聞こえてきた。

彼女はその足音に聞き覚えがあった。だが、どうせ面倒なことに巻き込まれるのなら、その前に抗ってやる! と考えたのか、彼女は散歩を続行した。

しかし、そんな思惑《おもわく》はすぐに見破られてしまった。


「ララ姉さん、ちょっと待ってー! 少しでいいから私の実験に付き合ってー!」


「やっぱり、ロロか。さて、それじゃあいつものように……全力で逃げようか!!」


本当に白魔女なのか? と思うくらいのスピードで逃げ始めたララ。(つまり、速い)


「もう! 逃げないでよ! 姉さーん!」


しかし、ロロはそう言いながら、彼女を追いかけ始めた。

ロロ=リキッド=グリーン。黄緑色のショートヘアと水色の瞳《ひとみ》が特徴的な少女。(黒いローブを着ている液体使い。そして、なぜか裸足《はだし》である)

彼女は末っ子だが、実は走るのが速い。


「なんで! 姉さんは! いつも! 私から! 逃げるのよー!」


彼女の身長を少し越《こ》すぐらい飛び上がったロロは獣《けもの》のごとき勢いでララに襲《おそ》いかかった。


「あははは、やっぱりロロには……敵《かな》わないな」


「だったら、もう観念しなさーい!!」


一瞬《いっしゅん》、ララは諦《あきら》めたかのように見えたが、それは違った。


「なーんてね! 『超加速《ジェット》』!!」


その直後、彼女の両手から圧縮された空気が一気に膨張《ぼうちょう》して噴出《ふんしゅつ》された。

彼女はその勢いを利用すると、ロケットのようにピューンと飛び始めた。

これには、さすがのロロもポカーンと口を開けていた。

なんとか逃げ切れたララは、そのまま自室に戻ることにした。


「ふぅー、今回はなんとか逃げ切れたみたいだね。さて、部屋に戻って一眠りし……」


その時、目の前が真っ暗になった。そして、次の瞬間、彼女は地面に叩きつけられた。(仰向けで)


「イタタタタ……。私にこんなことして、ただで済むと」


後頭部を撫《な》でながら起き上がった彼女の目の前に立っていた人物のことを彼女は嫌というほど、知っていた。


「報告もしないで休息を取ろうとしているバカはどこの誰かしら?」


白というより銀に近い髪はショートヘア。

あの『五帝龍《ごていりゅう》』が恐れを抱くほどの黒い瞳《ひとみ》。

白い手袋、白いワイシャツ、白いスカート、白いハイソックス、白い運動靴を身に纏《まと》っている。

身長百三十センチ。体重……秘密。

思わず嫉妬《しっと》してしまいそうな白い肌。

そんな彼女は『|純潔の救世主《クリアセイバー》』という異名が付けられるほどの実力の持ち主である。

そして『実像分身《チャイルド》』という魔法で自分の分身を作ってまで、ここの長や教師をしている。

そんな彼女の名は……【アイ】。

ララは苦笑《くしょう》しながら立ち上がると、彼女に背を向けた。

そして、そのままその場から立ち去ろうとした。


「待ちなさい。貴方《あなた》には、まだやらなければいけないことがあるでしょう?」


しかし、彼女に頭をガシッと掴《つか》まれてしまったせいで身動きが取れなくなってしまった。

恐る恐る振り返ると、彼女の顔は笑っていたが目が笑っていなかった。

ララは「あ、あははは」と言うと、再び逃走を試みた。

しかし、自分の頭がバラバラになりそうなくらいの握力《あくりょく》で頭を掴《つか》まれてしまった。


「さて、どうしてくれようかしら?」


「ゆ……許して、ヒヤシンス」


「副所長の権限を破棄《はき》するわよ?」


「ご、ごめんなさい。ちゃんと報告をしてから寝《ね》ます。だから、許してください」


「……そう。なら、そうしなさい。あと、ルルの姉妹だから連れてきたことを忘れないようにしなさいよ?」


「う、うん、そうするよ。というか、君は本物のアイちゃんじゃないんでしょ?」


「ええ、そうよ。私は八百十二番目のアイ。本体から貴方《あなた》を見つけたら、すぐに報告書を提出するように伝えろって言われたから来たわ」


「ひ、ひどいなー。私も結構《けっこう》、頑張ってるんだよ?」


「とーにーかーくー! さっさと報告書を提出しなさい! あと、ロロの実験にも付き合いなさい! さもないと……」


「わ、分かったよ! 分かったから! いい加減、手を離してよ! 頭が砕《くだ》け散るから!!」


「……次からは私に言われる前に提出しなさい……。いいわね?」


「は、はい」


「よろしい」


ララの頭を掴《つか》んでいたアイの手が離れると、ララはようやく解放された。

そのあと、彼女は報告書を書きに執務室に向かい始めた。

あーあ、せっかく一眠りしようと思ってたのにな。

がっくりと肩を落とす彼女の前に、腕を組んだ状態で涙目になっているロロがいたため、彼女は仕方なく、それが済んだ後に実験に付き合うと彼女に約束した。

あの、ロリ教師め! いつか絶対に訴《うった》えてやる! ん? それよりこの私がここの所長になった方がいいんじゃないかな?


『それが実現すると本当に思っているの? もしそうなら、今すぐ血祭りにあげてやるわよ?」


ララの脳内に直接聞こえたその声は間違いなくアイの声であった。

ララは咄嗟《とっさ》に脳内でこう言った。


「ブ○リーかよおおおおおおおおおおおおおおお!」


そんな感じで今日も育成所は平和そのものです。

次はお前を血祭りにあげてやる。(誰かは不明)

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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