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テラーノベル(Teller Novel)
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目次

1章・ボクのこと

2章・彼なんて















































1章






























なぜ世界を愛することが出来ないのだろう。





最も高貴な称号である皇帝。


その次に高貴な称号である皇太子。


其の儘の生活で続いていれば、皇太子という地位に就けていた。


だがある一晩で変わってしまったのだ。


皆がこの者こそ次期皇帝に相応しいと崇める程の人物に変えられて。










「リアン様、何故この数式を?!」



「…神がそう言っていたから。」


神を主とする国での神に愛された者を次期皇帝にする法律に乗っ取り、彼のただ一言だけで人々はリアンを見た。


反抗する者もいたが、彼の聖力を見て彼に圧倒された。








「素晴らしいです!さすが神に愛された次期皇太子殿下ですわね!」


「あぁ、私の愛する息子はリアンだけよ。」


「リアン・レーベンを皇太子に命ずる!」


全てがカラクリ人形のようにうまくいき、世界は平和がもたらされると予言された。


このままボクはリアンに殺される、そう希望を捨てていた。


あの憎き反逆者を殺すという信念を無くして。









「元第一皇子殿下に仕える必要は無いわね。」


「皇太子殿下のお情けなのよ、きっと。」


監禁された王城で僕は一人ぼっち。


憎き反逆者は神に愛されていると言われ、自らを産んだ愛する聖母は反逆者を愛す。


この世を好きでいる理由なんて無かった。


理不尽極まりないこの世界を。


「お兄様、奪わせてくれてありがとう。感謝してる。」


「反逆者のくせに。お前を今すぐに殺したい。神はそう言ってる。」


「オフィーリア様は俺を殺せないよ。所詮あの方も神に仕えている存在だったのだから。」


「神はオフィーリア様だ。反逆者が嘘をつくな。」


「そうだね、俺は反逆者だったんだよ。お兄様を救うために、ね。」


造った笑顔がボクを軽蔑しているように見えた。


神と同じ瞳も、神と同じ髪色も全て偽物の神に創られたものだと言うのに。


『西暦700年、世界は変わる。偽物の神によって。』

『神であるオフィーリアの全てを受け継いだ者を皇帝にすべし。世界は瞬く間に変わるだろう。』


あのお告げが誤っていなければボクこそが皇帝となり、また皇太子となる。


オフィーリアのハニーブロンド色の髪の毛と、エメラルドグリーンの瞳。


対してリアンは神に反逆するスピアンティアの全てを受け継いでいた。


世間はスピアンティアが善良な神だと信仰してきたからか、その全てを受け継いでいるリアンを信じている。


オフィーリアを殺したのもスピアンティアで、まさにこの状況もそれに等しい。








「ほら、お兄様。これで殺せますよ。この聖騎士の物で。」


「僕が反逆者としてなるのを望んでいるんだろう?リアン。」


「どうでしょうか。まぁ、それに等しいです。おそらく。」


「自らを反逆者として認めれば僕は殺さない。」


「それは出来ません。俺が仕えるべき神はオフィーリア様、ただ貴方1人なのです。」


発することまで似てしまった。


リアンが恐ろしかった。


どこまで彼女に似てしまうのだろうかと。













「僕は死ぬまでお前を許さない。過ちを犯さなければこんな感情浸らずに済んだのに。」















































2章


























わたしは貴方がいいのです。








神に仕える従者は様々な信念を抱いていた。


世界を救い、世界を好きになりたい。


オフィーリア様がこの世の全て。


オフィーリア様が世界を救ってくれる。


色彩溢れる信念を抱いて人々にその志を語って、自らもオフィーリア様になろうとした。


その結果、神はオフィーリアではなくスピアンティアだという認識を彼等はもった。


「スピアンティア様こそが私達の神よ!」


「偽物の神はオフィーリアだ!」


「殺せ、偽物を!!」


偽物と本物の言葉に興奮を抱いてスピアンティアは本物を殺すことに執着し、それだけを信念としていた。










そんな意志を俺は其の儘引き継いでしまっていた。


だが殺したいと同時に彼を孤独にさせて俺だけが味方であることを証明したい思いが溢れた。


己の信念の為ならば、スピアンティアさえも裏切ることを厭わなかった。


「第二皇子殿下、ぼくはあなたをすぐさま皇太子殿下にしてさしあげます。」


「…皇太子ではなく、皇帝に出来ないのか?」


「はは、そんなことを言うだなんて、まさしく皇帝に相応しい器ですね。いいでしょう、皇太子殿下になった暁には皇帝になれるようぼくが伝授します。」


「期待している、公爵。」


数多の期待と、微かな羨望が俺を闇へと落とす。


彼と一つになることを現実として思いながら、俺は口元を緩ませた。









「聞いた?第二皇子殿下がスピアンティア様そっくりの聖力を出したんですって。」


「聞いたわよ!皇帝陛下も皇后陛下も第二皇子殿下を皇太子として推してるらしいわ。これはユアン第一皇子殿下よりリアン第二皇子殿下が皇帝になりそうね。」


「まぁ元々第一皇子殿下は両陛下にも寵愛されないで、偽物の神そっくりの聖力を微かにもっていたからね。」


「これからは第二皇子殿下に敬意をはらいましょう。第一皇子殿下は敬うべき皇族ではないわ。」


堂々と大きな声量で話している侍女達を横目に俺は爽快感を露にした。


結局兄は1人になり、俺は即位式の準備を颯爽と始めていた。


何事も興味がなく、関心すら示さない俺が唯一好きになったのは兄だけだった。


兄こそが本物の神の全てを受け継ぎ、俺がスピアンティアのように魔術を使って偽物の力をもった。


誰も疑問すらもたないこの世界を俺は愛していた。









「お兄様の味方は俺だけです。なのに何故好きになってくれないのですか。」


「好きになるわけない。全てを奪ったお前を。」


「憎いですか。そうやって俺だけを考えておけばいいんです。そしたらこうやって奪うことはなかったのに。」


「つくづくお前は自分勝手だな。あの時から変わってない。執着したものは必ず手に入るよう手段を選ばない所が。」


「スピアンティアにそっくりだと言いたいのですか?」


「そうだよ。」


俺を嘲笑い、見下し、どこまでも見透かす。


そんな所が好きで好きで仕方がなかった。


もっと落ちぶれて、俺に愛されてしまえば。


いつかは俺だけが味方だと言ってくれるだろうか。


「好きです。お兄様。神に背いてでも俺は貴方だけを好きでいます。」


「反逆者が僕のこと好きだなんて、何かのイタズラ?誑かしているんだろ。」


「違います。俺はあなたがいいのです。」


「はっ、せいぜいその気持ちを押し殺すことだな。双子同士が愛し合っていると知ったら両親はどう思うか。見物だよ、リアン。」
















嗚呼、神よ。私はこの者を殺さなければならないのですか。


愛する者でさえも。


























end.

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