TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
シェアするシェアする
報告する

「アリエッタ! 返事して! どこ行ったの!?」


アリエッタのいた場所に向かって、ミューゼが駆け出した。それを追いかけるネフテリア。

シーカーの総長であるピアーニャも、ただ黙ってはいない。


「テリア! わちはさきにいく! ミューゼオラといっしょにいてくれ!」

「まかせてっ! シスも動いてるハズよ!」

「おう!」


ピアーニャは広げた『雲塊シルキークレイ』に飛び乗り、城の上へと飛んで行った。

その間に、アリエッタのいた場所にたどり着いたミューゼは、アリエッタの姿を探し、辺りを見渡している。焦りのあまり、明らかに錯乱していた。

対して冷静なネフテリアは、ミューゼの様子を気にしつつ、次にどうするかを考えていた。


「……これでも無いよりはマシね」


近くにあった練習用の杖を持ち、ミューゼに近づく。


「ミューゼさん落ち着いて! アリエッタちゃんを探しに行きますよ!」

「てててりあさまさまま! どどどこどこどこどこどこ」

「うわこりゃヒドイ……とにかく落ち着いて。今から追いかけるから。心当たりもあるから」

「ここころっ…あたり?」


なんとか気持ちだけ落ち着くミューゼ。しかし足が内股で震えている。


「はいこれ持って。慣れない杖だと思うけど、無いよりはマシでしょ」


ミューゼの杖はリージョンシーカー本部のロンデルに預けてある。王城に向かうのに一般人が武器を持ち込むのは、流石に問題となる為である。

ちなみにネフテリアは杖の補助が無くても、かなり自由に魔法を行使出来る。ピアーニャをストーキングする実力は本物だった。


「それじゃあすぐに探しに──」

「行かせません」


扉へと向かおうとするミューゼに返事をするように、高い声が響き渡った。

2人が声のした扉の方を見たと同時に、上から大きな物が落ちてくる。


ドスン

「えっ!?」

「計画的というか何と言うか……」


赤く半透明な檻が、ミューゼとネフテリアを捕らえたのだった。




城の中……通路の影の中を、オスルェンシスは猛スピードで移動していた。

影と同化出来るシャダルデルク人は、密偵や潜伏などでその真価を発揮する。今回は上からの奇襲という事で対応出来ずにいたが、その持ち前の判断力で、オスルェンシスは誰よりも早く追跡を始めていたのだ。


(ピアーニャ様がいるからと、自分は気を抜いていた。早くアリエッタちゃんを取り戻さなければ!)


不甲斐ない自身を奮起させ、影の中を突き進む。

しかし、その動きが止まった。影から姿を出し、辺りの様子を見渡す。


「これは……やられましたね」


通路の中心に光が浮かび、辺りの影を消していた。これでは影の中を進む事は出来ない。さらに……


「自分への足止めですか。ご苦労様です」

「1人であんたに対抗できるの、オレしかいなかったからな。ほらよ」


男は光の玉を投げ、オスルェンシスの後ろで停滞させ、通路を照らした。これによって、前後の影の道を失ったオスルェンシス。


「困りましたね。急いでいるのですが……」

「いいや、ここでゆっくりしていってもらうぜ」


男の周囲に光の玉が十数個現れ、宙に漂う。

オスルェンシスが静かに睨み、足元の影を拡大していった。

音もなく、そして両者動くこともなく、戦いは始まった。

一瞬で、オスルェンシスの放った影の槍と、男の放った光の玉がぶつかり合う。そのまま無音での押し合いが始まった。


「光と影じゃ決着なんてつかねーよ。オレの魔力が尽きるまで、楽しんでいってくれや」

「くっ……これは本当に厄介ですよ……どうしましょう」


とはいえ、先に進むためには目の前の男を急いで倒すしかない。

逃げる為の影は消され、使えるのは自分自身のちからのみ。そんな状況下に置かれ、アリエッタを追わなければならないオスルェンシスは、内心かなり焦っていた。




ネフテリアやオスルェンシスと同じく、外から追いかけようとしていたピアーニャもまた、城の屋上で襲撃に逢っていた。乳白色の細い物が、ピアーニャが乗る『雲塊シルキークレイ』に巻き付いている。


「まったく、めんどうな」

「すみません。一応命令なので」

「ふん……」


ピアーニャは面白くなさそうに、もう1つの『雲塊シルキークレイ』を尖らせ、巻き付いている物を切断した。そのまま相手の次の行動を警戒する。


「わちらがいるというのに、あのコをさらおうとは、おもいきったコトをしたな」

「同感です」


城の上に浮いているピアーニャの前に立ちはだかったのは、白い服を着た目つきの鋭い女。大きめのフライパンを背負い、片手には乳白色の塊が握られている。


「いそいでいるが、オマエからきいたほうがよさそうだな」

「そう簡単にはいきませんよ」

(こいつ、あしどめが、ねらいか)


挑発気味に言ってみたが、相手の短いセリフに積極性の無さを感じ、ますます警戒するピアーニャ。

シーカーの総長であるピアーニャは、エインデルブルグでもトップに立つ実力者である。そんな人物を相手に怯まず、攻める気が無いという事は、小技などで翻弄してくる可能性が高い。それは今のピアーニャにとって、痛手とも言える時間稼ぎである。

一度逃げるというのも悪手。そもそもの目標が城の中を逃走しているのが分かっている以上、城に近づかなければいけない。それは相手の迎撃範囲に入る事を意味する。


「しかたない、はりたおす!」

「!」


これ以上のやりとりは無駄だと悟ったピアーニャは、『雲塊シルキークレイ』を飛ばし、遠隔での捕縛を狙う事にした。

相手からやや離れた位置で大きく広げ、包み込んで捕縛するのが狙いである。

しかし──


「『カッペリーニ』!」


女の手元から、かなり細い糸状のようなモノが無数に伸び、広がった『雲塊シルキークレイ』を貫いた。


「わちとにたようなセンジュツか」

「そう簡単にいかないと言いましたよ」


伸びたものが倒れ、『雲塊シルキークレイ』に覆われて隠れていた両者の姿が再び相まみえる。

ピアーニャは女を睨みつけ、女は口の端を吊り上げていた。




檻に入れられたミューゼは杖を構えた。

対してネフテリアは、冷静に相手に問いかける。


「あの子を攫った目的は何?」

「……言えませんよ」

「でしょうね。じゃあ今すぐ返してもらえる?」

「それは出来ません。ただ無事に返す事はお約束します」

「それじゃ遅いのよ。何がしたいのかは予想がつくもの」


ミューゼとネフテリアの前に現れたのは、小柄な男だった。その横には白い球が1つ浮かんでいる。

男は低い声で、ネフテリアの問いに答えていく。


(テリア様は相手の目的をある程度知っている? 王族が潰せないでいる何かの組織って事? もしかしてアリエッタの可愛さと力を狙ってきたの?)


先程、魔力が無いのに『魔法』を連発していた姿と、これまでに発揮していたアリエッタの力。それは力を欲する者に狙われても、不思議ではないモノばかりである。

ネフテリア達の会話からそう推測したミューゼは、焦りのあまり魔法を放った。


「アリエッタを返して!」

「ミューゼさん!?」

「おっと」


ミューゼの放った水球はまっすぐに男へと飛んでいく。しかし、男の白い球が変形し、壁となって水球を防いだ。


「あれって、総長の『雲塊シルキークレイ』!?」

「ピアーニャと同じハウドラント人なんです。ただ撃っても当たらないですよ」

「じゃあどうしたら……」


冷静さを失っているミューゼに、現状を打開する策は浮かばない。力も相手の方が上手うわてである。

それを理解しているネフテリアは、ミューゼの方に優しく手を置き、微笑みかけた。


「任せてください。すぐにアリエッタちゃんを探しに行きましょう」


そう言うと、再び男の方に顔を向け、今度は冷たい笑みを浮かべ、地面と訓練用の的を指さしながら言い放つ。


「貴方、今わたくしにフルボッコにされてこの場に裸で転がるのと、素直に協力して後で兵士達の訓練の的になるの、どっちがいいですか?」

「ひぃっ!? だから嫌だったんですよ、この仕事!!」


どっちにしても、ほぼ死刑宣告である。

さらに、


「貴女もですよ、ほらっ」

ガンッ

「ぴぃっ!?」


ネフテリアが檻を蹴ると、退

それは人の形になって男の後ろに身を隠す。


「あれって?」

「ご存知無いですか? 水晶のリージョン『クリエルテス』。彼女はそこの出身者です」

「……見たのは初めてです」


男の後ろから顔をのぞかせるクリエルテス人。見た目は赤い半透明の小さな女の子である。

怯える2人にネフテリアはゆっくりと近づき、不敵に笑いながらこれからの事を話した。


「さぁ、任務を果たします? それとも放棄します? 今すぐ決めた方がいいですよ」

『ひぃぃぃぃ!?』


襲撃者達の悲鳴で冷静さを取り戻したミューゼは、とある人物の事を考えていた。


(こんな時にパフィはどこいったの? アリエッタが大変なのに!)




その頃のパフィもまた、アリエッタとは別に、最大の危機を迎えていた。


「お、王妃様! だめなのよ! それだけは!」


王妃の個室で散々着せ替えられていたパフィは、綺麗なドレスを着て壁際に追い詰められていた。


「はぁ…はぁ…良いんですよ。王妃のわたくしが良いと言っているのですから」

「権力をこんな風に使わないでほしいのよぉ!?」


壁に追い詰められたパフィの顔の横に、王妃は手を突き出し、壁を叩く。いわゆる壁ドンである。

そしてパフィの頬に、もう片方の手を添えた。


「パフィちゃんが悪いんですよ? サンディちゃんの娘というだけでなく、こんなに立派に成長して、わたくしを誘惑するんですもの」

「誘惑してないのよ!? メイドさん助けてほしいのよ! 王妃様がおかしくなってるのよ!」


パフィは周囲に控えているメイド達に助けを求めるも、メイド達はそそくさと部屋を出る。


「いやいや、道を踏み外そうとしてる主を止めるとかしてほしいのよ!?」


そんな度胸のあるメイドは、ここにはいなかった。


「パフィちゃん、力を抜いていいのですよ。年長者としてわたくしがなんでも教えてあげますからね♡」

「いやあああああああああ~~~~~!!」


城の一角に、悲痛な叫びが響き渡った。

からふるシーカーズ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

34

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚