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嘉村堂

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第11話 本当は

♥

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2023年11月04日

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「本当は」

私は佐藤凛。ある町の進学校に通う女子高生。友達にも恵まれて楽しい学校生活を送っている。最近、特に仲が良い友達は男の子なんだけど。彼はそんな風に思っていないみたい…..。

その人とは高校の同じクラスでいつも友達に囲まれている。容姿が整っていて、女の子にも人気があって何回も告白されているみたい。いつも友達と居るときは笑っているけど、私はその人の笑顔が何処かぎこちなく感じてしまう。私だけかな…?話し方もいつも作られたみたいに見える。

私は知っている。本当に笑ってない人の顔を小さい頃に何度も、嫌なくらいに見てきた。

だから、私は彼に興味を持った。いや、違う。本当は彼をどこかで心配していたのだと思う……。それから私は 彼に話し掛けてみた。彼は私にも優しく話し掛けてくれる。でもやっぱり作りものみたいな話し方をする。何処か他人との距離を取ってるみたい。

駄菓子屋の前で彼と出逢った時も、中庭で出逢った時も彼はやっぱり作りものみたいだっみた。でも、それと同時に優しかった。とても優しく暖かった。まるで春に咲く小さなコスモスみたい。

気が付くといつも『優しいね』と口走っていた。

私はますます彼に興味を持った。もし本当に彼が自分を偽って生きているのだとしたら彼の本当の姿を見てみたい。本当の友達になってみたいと…….。



そんな私は今、彼の『本当の姿』というものを目の当たりにしているかも知れない。私が彼と遊びに出掛けた先で私がコンビニにから帰ってくると、彼が待っていたはずの場所から口論の声がした。最初はびっくりして誰の声か分からなかったけど、私はその口論の中で彼の声が飛び交っているのに気付いた。

私は考えも無しにその二人の間に割って入った。そこには私の知っている作りものみたいな彼は存在しなかった。感情を剥き出しにして大声で相手に怒りをぶつけている。

怖かった。いつも優しいはずの彼がこんなにも感情的になっていて。それと同時に苦しかった。こんな形で彼を知ってしまったこと。もっと、ゆっくりと長い時間を掛けて仲良くなって。それから見せて欲しかったんだ。彼の本当の姿を…..。

私はそれから一人で帰路に着いた。彼は今は一人になりたいらしい。仕方が無いと思うよ。私もびっくりしたもん。和哉さんが言ってた事。

「あれは、どういうことなのかはぁ?」

私は電車の窓際の席で窓に寄り掛かり、窓の外の街を見つめながら、一人そう呟いた。

『お前に何が分かるんだよ、家族が居ないお前なんかに!!』

私は何度もこの言葉を考えた。彼のほんの一部を始めて知れそうな気がした。

それと同時に触れてはならない事なのだろうと思った。

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