おサボりiemm(左右関係なし)
途中で力尽きました。
雰囲気だけで読んで。
創作奇病注意
死ネタ注意
花の海に零れ落ちないで
美しい文章目指して書いたんだ…!
美しいといいな…。
0 花の海に還る
俺たちの最期を迎えにやって来たその場所は、花の海だった。
甘くて寂しい花の蜜が俺の鼻を掠めて去っていく。見渡せば、辺り一面には様々な花が咲き誇っていて、終わりが見えない。
風が優しく通り過ぎていくだけで、花弁で出来た色彩豊かなカーテンが俺の視界を奪う。
「…めめさん、どこですか?」
言葉にできない不安に駆られ、俺は最愛の恋人の名前を呼んだ。
めめさん。めめさん。まだ生きていますよね。まだ、俺のそばにいてくれますよね。
花弁のカーテンを振り払うようにして、辺りを見回す。甘ったるすぎて不愉快な花の蜜が俺の肺を蹂躙する。
あまりに見つけることができなくて、俺の頭を最悪の想像がよぎった時、俺の背中に伝わる衝撃。それと同時に、鼓膜に伝わる愛しい声。
「だーれだ!」
無邪気で、悪戯好きで___俺にこんな事をするのはただ一人。
「…めめさんですね」
そう言ってようやく、俺の背中に衝撃を与えていたのがめめさんの義手だということに気づいた。 徐に外し、振り返る。
「正解!めめんともりですよ」
そう微笑む彼女は、ここに咲くどの花よりも可憐で、愛らしかった。
「…良かった。本当に、良かった…」
込み上げてくる安堵感と共に、めめさんの頬に手を伸ばす。柔らかでまろいその頬は、ほんの少し、湿っている気がした。
1 融花病
「iemonさん、私、融花病なんです」
その残酷すぎる事実は、何の前触れもなく俺に伝えられた。
あれは寒さが襲う冬の事。二人で買ったダブルベッドで布団に包まりながら、スマブラをしようと話していた時だった。
めめさんが唐突にそう言ってきた。
「え…は?融花病って…なんですか?」
何が何だか分からなくて混乱する俺を置いて、めめさんは平然と告げた。
「だから、余命もあと三ヶ月あるかないかなんですよね」
「え…えっ、と…ドッキリ、ですか?」
「ドッキリじゃないです。私は、あと三ヶ月以内に、確実に死にます」
僅かな希望を抱いて言った俺の言葉を、めめさんの無情な言葉が砕いた。
たった三ヶ月。三ヶ月で、めめさんは死ぬ。
嫌だ。認めたくない。子供じみた駄々が頭の中を駆け巡るが、そんな事を言ってもどうにもならないのは、痛いほど理解していた。
「…伝えるのが遅くなってごめんなさい」
めめさんが顔を歪めて、泣きそうな声で言った。
「…いつから、その病気だったんですか?」
「融花病だって分かったのは、最近で…。一週間前、健康診断に行ったときに」
「っ、ならなんで、すぐに俺に教えてくれなかったんですか!?俺達、恋人じゃないですか…」
情けないことに、言葉の最後は震えていたし、涙が頰を伝って止まる事なく流れ落ちてく。
「…ごめんなさい…。皆んなと…iemonさんといる時間が、楽しくて、幸せで…。この時間が壊れると思うと、どうしても言えなくて…」
めめさんの華奢な肩が震えていた。ベッドを見れば、ぽたぽたと小さな水溜まりができていた。俺もめめさんも、泣いていた。
「…ごめんなさい、iemonさん…」
「…めめさん、めめさんっ…」
俺はめめさんを抱きしめた。震える細い肩は、今にも消えてしまいそうな気がした。 めめさんも、ゆっくりと俺の背中に手を回した。めめさんは、ほんのりと暖かった。
それからしばらく、俺達は抱きしめあったまま泣いていた。
泣いて泣いて、涙が枯れると、めめさんは徐ろに自身の融花病について説明を始めた。
その説明によると、融花病は世界でまだ数例しか発症ケースがない、新種の奇病だという事。発症者は体の末端から徐々に溶けていき、溶け落ちた部分は花に変わっていく事。何故花に変わるのかは不明な事…。
他にも色々あるのだそうだが、ショックに打ちのめされる俺の頭では、これだけで精一杯だった。
最後に、めめさんは足を見せてきた。
「…見えますか?」
その言葉と共に曝け出された足は、半透明になっており、ゴポ…と水音も聞こえてきた。
めめさんが半透明な箇所に触れると、指が沈んでいき、引き抜くとポチャンと音がして、僅かながらに水が跳ねた。
「…痛くないんですか?」
本来肉や神経が通っていた箇所に指を突っ込んでいるので、痛みが気になって聞いてみたが
「全く痛くないです。神経器官も水に置き換わっているみたいなので。周りを覆っている皮膚も、ゴムみたいな感じがします」
「…そうですか」
痛みはないようで安心する。できるだけ苦しんでほしくない俺にとって、唯一の救いのように感じてしまった。
めめさんの余命。残される俺。
必死に考える俺を嘲笑うかのように、先程めめさんから跳ねた水滴がパセリの花になった。
2 一ヶ月後の俺達
めめさんの余命騒動から一ヶ月。
俺達は特段変わったこともせずに、毎日を過ごしていた。だけどそれは、ヒビの入った硝子の上を歩くように慎重で、儚い日々だった。
「iemonさーん!二階に行きたいんですけど…手伝ってもらえませんかー?」
「分かりましたー。今行きますね」
めめさんが車椅子に座って俺を呼ぶ。めめさんの両足は太腿の半分ほどまで溶け落ちて花に変わってしまい、今では自分で移動する事ができなくなっている。
俺は今の状況に少しだけ苦労しているが、迷惑だと思った事は一度もない。寧ろ仄暗い喜びを覚えたことさえある。
その事を___めめさんには後者の方だけ隠して___俺はしっかり伝えている。だから、遠慮せずに頼ってほしい、とも。
めめさんは最初こそ申し訳なさそうにしていたものの、最近は流されてくれて、俺に頼ってくれている。
「よし、捕まっててくださいね」
「ありがとうございます、助かります!」
めめさんを車椅子から下ろして抱きかかえ、二階へと登る。めめさんが元々軽いのに加えて、両足の分だけ軽くなっているので、抱き運ぶのは簡単だった。
二階に置いた小さなソファにめめさんを下ろし、車椅子を持ってくる。そこそこに重量があるそれは、下手すれば今のめめさんより重いかもしれなかった。
「はぁ…よっ、と」
「すみません、ありがとうございます」
眉を下げて謝るめめさんに俺は
「いいんですよ、気にしないでください。それより車椅子に乗るので、もう一回捕まっててくださいね」
「はい!」
慎重に、優しくめめさんを抱きかかえ、車椅子に乗せる。ゆっくりと体を離し、何事もなく車椅子に乗っているめめさんを見て、安堵する。
「降りるとき、スマホで連絡ください。すぐに行きますんで」
「ふふ、ありがとうございます」
微笑むめめさんを背にして、俺は一階へと戻る。少し変わってしまったけど、幸せな毎日。めめさんが居れば、どんなに辛くたって、大丈夫だ。
そんな毎日に影を落とすのは、めめさんの半透明になりかけている指だった。
3 二ヶ月後
「めめさん、来ましたよ。今日は少し遅れてすみません」
ガラ、と真っ白なドアを開けて中に入ると、消毒用のアルコールの臭いが漂う。
「iemonさん、遅刻ですか。これは許せませんねぇ…」
そう言ってジト目でこちらを睨むめめさん。病院の清潔なベッドに横たわり、怒っているようだ。
「すみません…。そのかわり、めめさんにプレゼントがあるんですよ」
「プレゼントですか!いいですね!」
俺がそう言えば、ムッとした顔から花の綻ぶ笑顔に変わってこちらを見つめる。それだけで、俺は満たされる。
「iemonさん、体起こすの手伝ってくれませんか?もう一人だと起き上がれなくて…」
「分かってますよ。大丈夫です」
めめさんはあれから、腕も花に変わってしまい、病気が内臓まで浸食してきたので、病院で処置を受けている。処置といっても、ほぼ介護のようなものなのだが。
背中と腹部に手をやり、ゆっくりと華奢な体を起こしてやる。腹部に力を込めたときに、ゴポ…と忌々しい水音が鳴って、背筋が凍る。
内臓だけだと思っていたのに、もう腹の肉まで半透明化してるのか___。
残り少ないめめさんの寿命を考えると、いつでも気分は最低になる。
「iemonさん、私、死ぬ時は花畑で死にたいです。私は死体が残らないし、花になっちゃうので」
硝子玉のような瞳で俺を見つめ、めめさんが話した。
「そう、ですか…。分かりました。病院の人達に掛け合ってみましょう」
無意識に、ズボンを握ってた事に気付く。めめさんの口から死について話された事が、そんなにショックだったのだろうか、俺は。
めめさんが死ぬ事は分かりきっていたはずなのに、俺は未だにそれを怖がっている。
「ふふ、ありがとうございます。我儘言ってすみません」
「我儘なんていくらでも言ってください。俺が全て叶えてあげますよ」
「…じゃあ…いや、やっぱりなんでもないです」
めめさんは、一瞬だけその瞳を希望に輝かせ、すぐに諦めを映した。
じゃあ、の後に続く願いは何なのだろうか。
もしかして、病気を治して欲しい。だったのだろうか。俺が…俺がその願いを叶えてあげられたら。めめさんは___。
力尽きたのでここまでです。
次回はSlup(黄緑×ローズ)の予定……
きっと恐らく投稿します。
結構甘いはず…(当社比)
コメント
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奇病系避けてたけどこういうのもありかもな…
読んでて辛くなってくるな…