「…俺が家を出てから母の酒の量が増えたようにも感じるんだ。気のせいかもしれないけど。」
三橋は目を瞑ったまま呟くように言った。
翠は辛そうな三橋の姿を見て短く溜息を吐いた。
「今日はもう遅いし、話はここまでにしよう。その様子だとろくに眠れてないんでしょう?」
翠は椅子から立ち上がり、空になったカップを片付ける。
「実のところ。」
三橋は短く答えた。
「気持ちが落ち着くまで此処に居ていいよ。服は…女性モノしかないから持ってきてもらわなきゃいけないけど。ただ、女の子連れ込むのはやめてね。そういうのは外で済ませてきて。」
翠は冗談ぽく苦笑しながら言った。
その言葉に緊張で強ばっていた三橋の表情もいくらか解れる。
「…ありがとう。」
ーーーその夜。
三橋はソファーで、翠はベッドで眠った。
三橋はソファーに横になるとすぐに寝息をたて始めた。 最近あまりよく眠れていなかったのだろう。
翠は眠る三橋にブランケットを掛けると、自身もベッドに入った。
窓からの月明かりに薄らと照らされた天井をじっと見詰め、翠は今後の事を考えていた。
三橋がどのくらい滞在するのか分からないが、ある程度の生活用品を揃えなければ…。
彼のお母さんの事も我関せずで他人事にしたくない。だから考えなければならない。
どうしたら三橋やその妹さんが望むように病院に行ってくれるだろう。聞いた話ではあまり時間に猶予はないようだ…
考えているうちに段々と瞼が重くなる。
身体がベッドに沈んでゆく。
夢と現実が混ざり合う。
そして翠はゆっくりと眠りについた。
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