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E p i s o d e .3
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「ゲームしたいな〜…..」
今日はバイトが休みなため早く帰れた。
何のゲームをしようと考えながら通学路をぶらぶらと歩いていた。
菜瑚と仍とはたまに一緒に帰ることがあるが、中々そういう日は少ない。
なぜなら私と菜瑚はバイトで、仍は巫女の仕事があるからだ。
互いに予定がない時のみそのままカフェに行ったり、家に行ったりもしていた。
そして今日は私だけがなく、菜瑚、仍は仕事があったため、一人で帰ってきていた。
あとの他3人は、まあ、どっか行った。
「月谷先輩!」
後ろから声をかけられ、誰か予想しながら振り返ると大当たり。
先程琉唯とどこかへ行ったと思っていたハルが後ろにいた。
走ってきたようで少し呼吸が乱れていた。
「珍しいね、ハルが走って来るなんて。」
「何かあったの?」
あまりハルは物事に必死にならないタイプだし。走ってくるとは少々驚いた。
「その、聞きたい事があって……」
呼吸が落ち着いたようで、質問があると言い、目を逸らした。
私に聞きたい事なんてあったのか。
勉強の事だったら仍に聞いた方がいいし、服とかだったら菜瑚だし。
ゲームとか?
いや、ハルに限ってそんな事ないよな。
ハルは話を続けた。
だがその内容は私の予想外で思ってもみない事だった。
「八神先輩って、好きな人いますか…..?」
「へぇ。笑」
思わず声が出てしまった。
確かにハルと菜瑚はよく話しているし、ハルからしても関わりやすい先輩ではあるのだろうと思っていたが、まさか恋愛対象として見ていたとは。
あ、そういう事か。
だから3人を海水浴に誘った時私の事チラチラ見てたんだ〜。
道理で目が合うなって思ったよ。
「私に聞くタイミング伺ってたんだ。笑」
「そ、そんなつもりは…..、」
「ない事は、ない……ですけど、」
図星か。
でもびっくり。こいつにも好意ってのがあったんだな。
ハルはいつも真面目っ子で素直で頑固だから恋愛とかは全く興味無いと思ってたな。
そんなハルが私に聞いてくれたってのは嬉しいけど、私も菜瑚のそういうのは聞かないんだよな。
もちろん、私がそういうのに興味ないってのもあるけど、菜瑚は自分の話しようとしないからな。
でもまあ、折角聞いてくれたし、これくらいならいいよね。
色々頭の中で言葉を選び、少しの沈黙が流れた後、私は口を開いた。
「好きな人がいるっていうのは聞かないよ。そういう素振りも見せないし。」
ハルは少し安心したような顔を見せた。
「でも、いないとは限らないからね。」
その言葉を聞いて、ハルは少し躊躇ってからはい。と、返事をした。
私には関係ない事だし、どうでもいい事だけど、もし自分の言った事で誰かが笑顔になるなら、いいかな。
「まあ、頑張って。」
私はそういってハルに背中を向けた。
ハルも「ありがとうございます」とだけ言って立ち去っていった。
私は帰っている途中にふとある事を思いたち、スマホを取り出して、[ハル]という連絡先を押しポチポチとLINEを打った。
“琉唯と朔良には言っときなよ。協力してくれると思うから。”
既読がつき、ありがとうございますというスタンプだけが返ってきた。
ハルはウザイだとか嫌いだとか言ってるけど何だかんだいって信用してるからな。
相談しやすいと思った。ただそれだけ。
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𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩