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テラーノベル(Teller Novel)
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ラトアーニ大陸の東にある帝都門。その先はログナドとの大陸境だ。ミディヌは、帝都門で見かけた聖女エルセに声をかける。だがまるで聞く耳を持たず、聖女の護衛兵に追い返されてしまった。


納得出来ないミディヌは聖女周りの護衛兵を払いのけ、聖女に再度迫ると聖女は仕方なくミディヌの両腕を見るが……。


「聖女が君の腕を治せなかった……? 治せない……ってそんなバカな」


ミディヌは力無く頷いている。冴眼で見た時、姉エルセは帝国に戻っていた。聖女は要人護衛が主目的だ。とはいえ通りがかった者を見殺しはあまりに酷い。そう考えるとエルセもあのリュクルゴスと同じか、それ以上の冷酷さが感じられる。


「添え木と包帯を取って、よかったら俺に腕を見せてくれませんか?」

「……?」

「もしかしたら俺なら治せるかもしれないんです」


何となくナビナを見るも、ナビナは表情一つ変えずに黙って見ているだけ。ウルシュラはずっと興奮状態にあるが、ミディヌの様子に気づきとりあえず大人しくしている。


「……」


言葉なく、ミディヌは俺に両腕を差し出す。


「それじゃあ、動かさずに大人しくしててください」


何かをするわけじゃなく治癒する気持ちで彼女の両腕を見つめる。とはいえ、痛々しさが感じられる包帯だ。それに対し出来ることは、追加で治癒魔法をかける気持ちを込めるのみ。


今まで冴眼を使っても特に実感はわかなかった。しかしすぐに音と見た目変化、そしてミディヌの両腕の真の姿。それらを見ることで実感することになる。


パァッ。とした光の輝きに加え、治癒魔法をかけた時の熱を手元で感じ始めた。


「……えっ」

「……」


冴眼で見えるミディヌの両腕。そこには剣と一体化した腕が見えた。腕は人間の腕そのもの。しかしその腕には『武器』が自然にくっついている。


「ルカスさん、ミディヌさんの両腕は大丈夫ですか?」

「え、いや……」


ウルシュラから見れば包帯をぐるぐる巻かれた腕にしか見えていないはず。だがミディヌの両腕はどう見ても単純なものじゃない。


「ルカス。ルカスの冴眼で治せるのは皮膚のある腕。違う方はまだ治せない。治すなら、専門とする者も使うべき」


この場にいる誰もが見守る中、ナビナは自分だけが知っているかのような言葉を放った。ナビナには見えるだけで治す力は無いはず。つまり、ナビナには初めから見えていたということのようだ。


「とにかく、腕だけでも癒すよ」

「それがいい。ルカスならきっと出来る」


武器の方はあとで考えるとして、まずは傷ついた彼女の腕を治す。すると、それまで大人しめだったミディヌが本来の姿を見せ始める。


「悪ぃな、兄ちゃん! おかげでマシになった。その目、呪われてんの?」


ミディヌは身を乗り出して、俺の目をまじまじと眺めている。両腕は完治していないのにまるで別人のよう。


「あ、あら? 彼女ってそういうタイプだったの?」


黙って見守っていたアーテルも思わず正直な思いを口にした。


「そ、そのようです」


ナビナ以外みんなで顔を見合わせ、ミディヌの変わりように驚いている。もっとも、ウルシュラとアーテルは肝心の武器の部分にはまだ気づいてもいないようだ。


そこに、


「ミディヌさん。私は園芸師ウルシュラと言いまして~、その添え木を見せて頂けないでしょうか?」

「園芸師? もしかしてあんた、ログナドの園芸師? あたしもログナドだぜ!」

「――え、えーと……」


見捨てられたとされる冒険者パーティー。それを含め、ウルシュラのことは何も聞いて無い。しかも聞いたことも無い園芸師だ。別の大陸から来たことは容易に想像出来る。


「ウルシュラ。君はもしかしなくてもログナド大陸から来た?」

「ええと、はい。そうなんですよ~。隠すことでも無かったんですけど、何となく~……」


あまり思い出したくないってことかな?


気さくな性格の彼女のことだ。そのうち普通に話すだろうな。


「ミディヌ。君もログナドから?」

「東の帝都門を抜けると大陸境だからな! 兄ちゃんはそんなの知ってるだろ?」

「そうだけど……いや、その前に、俺のことはルカスって呼んでもらえると……」

「じゃあ、あたしのこともミディヌって呼びな!」


何だか調子が狂うな。見た目が小柄なハーフリングのせいもあるとはいえ。


「そんじゃ、ルカス! あたしのもう二本の腕も治してくれよ! 出来るだろ? その目なら!」

「その腕はもしかして『武器腕』?」

「おうよ! 治ったらルカスと一緒に帝国をぶっ潰しに行ってやるから!」

「て、帝国を!?」

「聖女はそこにいるんだろ? つべこべ言わずにあんたと一緒に行きたいんだよ!」


聖女エルセはすでに帝国を出てとっくにいないはず。それに帝国を潰すとは穏やかじゃない。色々戸惑い気味ではあるけど、腕の武器をどうにかしないとだな。


武器腕は腕そのものを武器に改造したもの。彼女の場合は義肢ではなく同化させている。そう考えると、ミディヌは盗賊ということが予想されるが。


冴眼で試すも、武器の部分は修復しなかった。


そうなると――


「そう言えばウルシュラ。ミディヌの添え木がどうとか言って無かった?」

「あぁぁ~そういえばそうでした。ルカスさんの治癒で腕が治ったのでしたら、その腕につけている添え木を頂けないかと思いまして~」

「じゃあ本人に――」

「いえいえいえ! ここはひとつ、ルカスさんからどうぞ!」


まさかミディヌのことを怖がってる?


見た目はともかく、強気な口調のタイプは苦手なのか。


「いや、ウルシュラ。一度ミディヌの腕を見てから頼んだ方がいいよ」

「え? 腕をですか?」


人間の肉体となる部分は冴眼にかかわらず治せた。しかし武器腕となれば、冴眼の他にもう一つ別の能力が必要なはず。


その可能性を持つのは、


「ミディヌ。彼女にもその腕を見せてやってくれないか?」

「あぁん? 園芸師の姉ちゃんがあたしに何の用だ?」

「ひぃぃ」

賢者の兄にありふれた魔術師と呼ばれ宮廷を追放されたけど、禁忌の冴眼を手に入れたので最強になります

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