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テラーノベル(Teller Novel)
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はぁ…何でますみんの’部活行く’で自分も部活あることに気づかなかったんだろう私。美術部へ行けることに相当舞い上がってたんだな…

部室に駆け込んで、いつもよりも短い稽古時間で精一杯脚本を読み込み、最終下校時刻まで練習して部室を後にする。

「お疲れ様でした!!」

「明日から休みだー!」

「みんなどこか行くの?」

部活のみんなと集団で会話をしながら校門を通り過ぎる

「五十嵐はGW暇な日ある?あったら俺とどっか遊びに行かない?」

「あ…ごめんね水原くん、GW中は厳しいかも」

今年のGW中はたぶん他人に会わない方がいい学校にいる時のように振る舞えるか分からないから

「そういえばさ、最近取ったアプリでめっちゃ面白いの見つけたの!」

「どんなアプリ?」

誰かが話題にしたアプリを調べようとみんなが揃ってスマホを取り出したので、私もそれにつられて取り出すつもりだったんだけど、いつも肌身離さず持っているそれはカバンの外ポケットにも制服のポケットの中にもカバンの中にもなかった。

「え、嘘っ」

最後に触った記憶が曖昧でどこに置いてきたかは分からないけど、学校にあるのは確かだ。

「どうしたの?」

「私、忘れ物したから学校戻る!」

「じゃあ、俺も」

「いや、大丈夫!ほんとごめん、またGW明けにね!」

GW前、最後の登校日にスマホを学校に忘れるなんて…ほんと馬鹿だ。他のものならまだしもGW中ずっとスマホがないのは流石にしんどい

うわぁ…最終下校時刻過ぎてるし学校に入れるかな。先生に会えたら入れてもらえるかな。学校に走って戻れば戻るほど、歩く生徒は減っていく。学校に入れますように入れますように入れますように…!!

坂を駆け登って校門に辿り着くも、そこは綺麗に閉まっていた。最悪だと思ったけど、とりあえず今は乱れた呼吸を整えたくて膝に手をついて下を向いて何度も大きく呼吸をする。

「…はぁ、はぁっ……はぁ」

「おつかれ」

誰もいないと思ってたのに声をかけられたから反射的に顔を上げると校門の隅に立っていたその人はゆっくりとこちらに歩み寄ってきた

「…はぁ……はぁっ…せ…なみっ…くん、なん……っで」

「とりあえず、呼吸整えなよ」

彼の言葉通り呼吸を整えるため、ゆっくりと息を吐いてからゆっくりと息を吸う。私の呼吸が整うと瀬南くんはある物を私に差し出してきた

「これ取りに来たんでしょ」

「っ!私のスマホ!」

彼の手の上には私の携帯端末があった。それを受け取りながら彼に問いかける。

「ありがとう、どこにあった?」

「美術部の部室。五十嵐が座ってたところ」

「あ、あの時か…」

風景画を見ていてスマホをおもむろに取り出し、机の上に置いてホーム画面を確認していたことを思い出す。

「全く、GW前にスマホ忘れるなんて…」

「良かったぁ!本当に…本当に」

胸元でギュッと強く携帯を握りしめる。スマホがないのはもちろん困るけど、毎日元気をもらえているホーム画面の風景…これがないと今の私は心が折れてしまいそうだ

「………」

「校門閉まってて、もうダメかと思った」

「明日から連休なのにそれがないと不便でしょ。忘れないように気をつけなよ」

美術部見学しかり、忘れたスマホしかり、本当に瀬南くんには頭が上がらない…

「部活見学のことも今回のことも本当にありがとう。今度何かお礼させてください」

「…どういたしまして、お礼とか気にしなくていいから」

顔を背けられてしまった。用事は済んでしまったわけだが、’ありがと、じゃあ!’と去るのもなんだか不自然だと思うし…私と一緒にいるのはあまり気乗りしないかもしれないけど

「五十嵐は帰りどの方面なの?」

え…まさか瀬南くんから聞かれると思わなくて明らかに驚いた表情をしてしまった。

「何その顔」

「私から聞こうと思ってたことを先に聞かれるなんて思ってなくて」

「まだ若干明るいとはいえ19時過ぎてるし、女の子1人で帰らせるわけにも行かないでしょ」

っ…今心臓ドキッてした。女の子…そうだよね、私だって生物学上、いや普通に女の子だし。瀬南くんってそういうの気にしてくれる人なんだ。

「で、どっち行くの?」

「私は最寄駅まで行ってそこから電車」

「駅からは近いの?」

「歩いて10分くらい」

「そう」

向かう先が駅だと分かると駅の方へと足を向け歩き出す

「瀬南くんはどうやって帰るの?」

「僕は最寄駅からバスに乗る」

「そっか、じゃあ駅まで一緒だね」

初めて瀬南くん自身についての質問に答えてもらえた気がする。些細なことだけどちょっと嬉しいかも。



微糖な貴方に惹かれる私

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