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「じゃあ…まずは…とりあえずお昼ご飯食べますか?」と先生が聞いてきた。
「うん!丁度お腹すいたな〜って思ってたから」
私たちはグラウンドから職員用駐車場へ行き、先生の車に乗った。
先生の車のナンバーなどは把握済みだったが、実際に乗るのは初めてだったので、胸が高鳴った。
「ごめん、汚いでしょ…?」
「いえいえ…綺麗です」
どこに行こうかと会話しながら車を走らせる。
最終的に決まったのは近くのファミレスだった。
「いらっしゃいませ〜。何名ですか?」
店の人が聞いてくる。
「え…2名…です。」
先生が答えた。
「自由に座ってどうぞ」
店内は昼時だからか、まぁまぁ混んでいた。
私たちは、窓がある席の一番端っこに向かい合って座った。
「ごめん…ちゃんと2名って言えなかったな。僕は逆に知らない人と話すのが苦手だから…」
先生は少し悲しそうに言ってきた。
「…私も気持ち、分かります。」と答えた。
私達が頼むのは、オムライスとカツカレー。
ありがたい事にここの店はタブレット注文方式だったので、私が注文した。
待っている間は、 好きな動物や行ってみたい場所などについての質問をし合った。
『やっぱり、白河先生と話すの楽しい』と思った。
20分後くらいに、料理が運ばれてきた。
「お待たせしました〜」
オムライスの皿を店員さんが取ると、私は自分を指指した。
店の人にも通じたのか、きちんとオムライスを私の前に置いてくれた。
カツカレーは、先生の前に置かれた。
「ごゆっくりどうぞ。」と店の人は言い、伝票を置いて去った。
「いただきまーす!」2人で同時に言ったので、声が被さり、お互いで爆笑した。
オムライスはふわふわとろとろの卵の下にチキンケチャップライス、上にはケチャップがかかっており、お好みでかけるためのマヨネーズも付いていた。
口に入れると、とても美味しい。
「美味しい!凛も食べる?」と先生が言ってきた。
『今…先生…凛さんじゃなくて…凛って言ってくれた…!』
先生も意識していたのか、顔を赤らめている。
私は嬉しくなり、「うん!食べる!」と答えた。
「はい。どうぞ。」と先生は言い、カレーに付いてきた謎の小皿に注いでくれた。
小皿には、カレーとカツが一本のっていた。
食べてみると、少しスパイスのクセもあるが、それをカツとご飯が和らげてくれていい感じの辛さになってとても美味しい。
「どう?美味しい?」
「めっちゃ美味しい!!」と答えた。
食べ終わって、お会計を済ませ、店を出た。
「じゃあお家…行きますよ!」と先生は少し嬉しそうに言う。
本当に嬉しいのか、先生の顔と耳が真っ赤になっていた。
先生の家
家に着いて、車から降りる。
先生の家は平屋だった。
先生が玄関の鍵を開け、中に入った。
「お邪魔します。」と私が口に出すと、
「そんなに堅苦しくしなくてもいいよ。もうこの家は、僕と凛さんのお家だから。」と言ってくれた。
玄関を入って右側にリビングとキッチンのある部屋、左にトイレとお風呂などの水回り、奥に1つ部屋があるという間取り。
「私の部屋とかは…?」と聞くと、「リビングの所に和室があるから、そこ使ってもいいよ」
「良いんですか…? 」
「良いんですかって…凛さんが聞いてきたじゃん」と笑いながら先生は言う。
先生も確かに嬉しそうにしているのは先程から伺える。
顔や耳の赤さもだが、一番に笑顔。
目の横の少しのシワと小さな笑窪、ただでさえ少し垂れ気味の眉毛が更に垂れて白河先生らしい優しい雰囲気を出している。
「どうした?僕の方をじーっと見て。」
ついつい先生の顔に見惚れていて、動くことすら忘れていたようだ。
「いや…かっこいいな…って」と咄嗟に口にした。
「そんなに!?かっこいい?こんなおじさんなのに…」と自信無さげに言ってきた。
私にとっては、そんな顔さえ好き。
とにかく今日からそんな先生の全てを見れるような気がして嬉しかった。
「おやつ食べますか?」と先生が聞いてきたので、「うん、食べようかな?」と答えた。
先生は何やら冷蔵庫の中辺りをガサゴソしている。
「これでいい?」と言う先生の手には、棒アイスの箱があった。
『このまだ少し寒い3月にアイス!?』と思いつつも、先生のおすすめを断る気が無かったので「うん、ok!」と答えた。
「グレープかオレンジ、パイン、どの味が良い?」
先生の好みの味を食べたいと思い、「先生のおすすめの味は?」と聞き返す。
「僕は…グレープかな?」
「じゃあそれで。」
先生は相変わらずのにこにこ笑顔でテーブルにアイスを2本持って来た。
「これ、果汁100%とか書いてあるけど、本当は違うからね」と先生は言いながら袋を開けた。
『理科の先生とはいえ、こんな知らぬが仏の知識は私にはいらねぇ!』と少し強い気を持ちつつも、先生の悲しむ顔を見たくないので「そうなんですねー」と答えながら私も袋を開けた。
外はだんだん蒼色になってきた。
こうして私と白河先生の新しい生活が始まった。