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空が灰色に染まっているある日。
空が光ったかと思うと雷が鳴り、大粒の雨が辺りを濡らした。
私自身、雨に濡れようがどうでもいいが屋敷で働くメイド達に怒られるのはとても面倒臭い。
その為早歩で帰る、が視界にソレが入ってしまった。
ボロボロな服に汚れた姿の少年。
生気がない瞳で地面を見続ける彼は生きているのかさえ分からない。
「…おい」
声を掛けるとその少年は顔を上げる。
冷たい目、真顔で見つめてくる少年を何故か気に入ってしまった。
この少年を拾ってやろう育てたら、どんな奴に育つだろうか。
「家は?親はどうした」
無いのであれば拾ってやろう。
私はソイツに期待しているから。
『無い』
私はこの汚らしい少年がこれからどうなるのか気になる。
もし私の邪魔になるようなら殺してしまえばいい。
「ならば着いてこい、衣食住の保証はしてやる」
そう言いながら半ば無理やり立たせ歩かせる。
普通に歩ける所を見ると大きな怪我は無さそうだ。
病気があるかもしれないからな、屋敷に戻ってから医師に見てもらおう。
嗚呼、ニヤけが止まらない。
『無礼で無ければ質問をしても宜しいですか』
雨の音でかき消されながらも聞き取る。
「ああ」
『あなたは服装からしても地位があるのに、衣食住に困らなさそうなのに生に興味が無い顔をするんですか』
『そして何故僕を拾ったんですか、』
「…なんのことか分からないな」
『…』
こんな出会って直ぐにバレることなんてあるんだな。
この少年が言った通り私は生きることに興味が無いし他への興味も無い。
仕方ないだろう、親から愛された事も人から褒められたことも無かったんだから。
それに加えて自由というものが無かった。
生まれた時から人生が決められた私は決められた時間に勉学を学び、武術の知識を得てこの時間に食事を摂る、この時間に睡眠を取りこの時間に起きる。
変えることの出来ない決定事項。
果たしてこの人生は楽しいのだろうか。
言われた通りに話し、言われた通りに行動をする。
私は結局はお父様とお母様の操り人形であり道具でしかないのだ。
生まれ育った屋敷に着く。
「ほら、着いたぞ」
屋敷の中に入り少年に話す
「部屋は用意しておくから自由に使え、場所はあの執事に聞け」
そう言って別方向の廊下を進もうとして、止まる。
別に、こいつはわたしの支配下に置くんだ少しぐらいいいだろう。
振り返らず私は少年に言う
「先程の質問だが」
「私は正直人生がつまらん」
「そして私にとってお前は」
人生初めての楽しみだ