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テラーノベル(Teller Novel)
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必然的な出逢いだった。

運命だったと今でも思う。

私は、帰国子女だったせいか、学校には馴染めなかった。文子と親友になれたのは、奇跡に近い。

綾子

でも、紺君は違った

綾子

帰国子女としての私に話しかけてくれた…

オレ、留学したいんだ

だからその、英語を教えて欲しくて…

毎日のように、図書館でふたりで勉強していた。

この状況で、恋愛に発展しない方がおかしい。

今思えば、英語の勉強は口実だったのかもしれない。

とにかく、私たちはすぐに恋に落ちた。

そして、紺君の語学力はすぐに上達していった。

綾子

すごいね!もう原書でホームズなんて…

うん、速読の練習w

あらすじは知っているから、読みやすいし

綾子

私はアガサの方が好きなの!今度はそっちも読んでみてね

ありがとう

英語の話は楽しい。そしてかけがえの無い幸せな時間。

だけど、私は間もなく気がついてしまう。

紺君の語学力が上達することは、別れが近いということに。

綾子

そういえばさ

んー?

綾子

留学先って、どこなんだっけ?

……インド

綾子

……は?

いや、だからインド…

綾子

マジで?

綾子

ヨーロッパとかアメリカだと思ってた…

んー…

綾子の英語指導は完璧だと思うけどさ

やっぱり最初からネイティブスピーカーの所に行くのはちょっと怖いんだ

綾子

いやいや、インドの方が謎だらけで怖いでしょ…

ほぼアジアなのに?

綾子

まあそうだけどさー

治安の悪さ。インド人には申し訳ないけれど、一番に浮かんだことはそれだった。

綾子

(知ってたら、英語なんて教えなかったのに…)

綾子

紺君が居なくなるのは、怖いよ…

オレも寂しいよ

違う。そういうレベルの話じゃない。

でもその時は、それ以上言うことは出来なかった。

嫌な予感ほど、よく当たるというのに。

出発の日が近づくにつれて、紺君と書店に行くことが増えた。

今までは図書館で好きな本を読みあさっていたが、まさかインドに図書館の本を持って行くわけにはいかない。

綾子

てっきり洋書を買うのかと思ってたのに

綾子

日本文学ばかりだね

そりゃ、文学部なんだし

もともと本が好きだから、旅先にも好きな本を持って行くと安心かなって

綾子

それにしても渋いチョイスだなあ…

綾子

歴史小説ばっかり…

井上靖、オレのバイブルだから

あと、過去の文学賞作品、次に会うまでに読破しといて

綾子

はいはい

綾子

(目が輝いている…)

綾子

(こんな日常が、もうすぐ終わるんだ…)

何処か、置いていかれるような気がして、私は仏頂面で書店を後にした。

それから、3か月が過ぎた。

紺君からは、この間に手紙が3通届いている。

最初に届いた手紙には、日本の和紙のような風合いの紙が同封されていた。

「インドで見つけた栞を送ります」

「このサイズなら、封筒に入れても大丈夫かなと」

「たくさん、本読めよ」

飾らない文面、見慣れた文字に胸が熱くなる。

綾子

ふふふ…

綾子

ちゃんと毎日、読んでるもん

昨日から分厚い大河小説に挑戦している。

置き場所がないので、図書館で借りたものだ。

1日あたりのノルマを決めて、大切な栞をページに挟む。

綾子

紺君……

綾子

夏休みには、会えるよね

再会を心待ちにして、私はその日も眠りについた。

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